日本の伝統楽器「箏(こと)」の演奏に必要な「箏爪(ことづめ)」についてご紹介します。一般的な箏は、長さ約182cmの細長い木の箱に13本の絃が張られており、可動式の柱(じ)を調節することで調弦します。音を出すには、指で直接弾くのではなく、右手の親指、人差指、中指の3本に「箏爪」をはめて絃をはじきます。

■箏爪

■箏爪の形
流派によって爪の形が異なります。角爪が生田流、丸爪で先端が細くなっているのが山田流です。


斜線部分を絃に当てます。
■流派
~生田流(いくたりゅう)~
江戸時代前期に京都で活躍した生田検校(いくたけんぎょう)が創始した流派
・角爪
・爪の角で絃をはじく
・箏に対して斜め45度の角度で左を向いて座る
・古典曲だけでなく現代曲も多い
~山田流(やまだりゅう)~
江戸時代後期に生田流を学んだ江戸の山田検校(やまだけんぎょう)が創始した流派
・丸爪
・爪の先端で絃をはじく
・箏に対して真正面に向かって座る
・歌ものが多い
■箏爪の素材
爪の材料には様々なものがありますが、現在は象牙、プラスチックが主流です。
~象牙~
適度な硬さとしなやかさがあり、糸への負担が少なく、切れにくい。
・高価
・箏の演奏に最適
・時間がたつと変色するためメンテナンスが必要
~プラスチック~
・安価で入手しやすい
・練習用に最適
・メンテナンスが簡単
~その他~
クジラの骨、カバ歯、牛骨、べっ甲などがあります。
■爪輪(つめわ)
指にはめる輪の部分は爪輪、または爪皮(つまかわ)と呼ばれます。素材は本革が主流です。他に紙製、エナメル、猫皮などもあります。サイズは、大・中・小・幼児用などあります。爪を挿し込むことを考慮し、通常のリングサイズより少し大きめの号数を選ぶと良いでしょう。下記のように、サイズを自分で調整できるものもあります。
ZENON / 箏爪 生田流 フリーサイズ 6個入り
■箏爪のはめ方

■弾き方

親指は、絃を手前から向こう側へ押し出すようにしてはじきます。人差指と中指は、手前に向けて絃をはじきます。(弾き方は多種あり、別の機会に紹介します)
爪の大きさや厚さによって響きや音色が変わりますが、初心者には大きめで厚めのものが良いでしょう。曲の種類や目的に合わせて爪を変えるのも良いと思います。通常は爪と輪がセットになっていますが、自作される箏奏者も多いです。カッター、ボンド、ネイルケア用のヤスリなどがあれば作ることができます。
自分の弾きやすいサイズに調整することができ、手間をかけることで愛着も湧くのではないでしょうか。
■自作用
SUZUKI / 山田流つめ 白象
SUZUKI / 山田流つめ皮
■箏爪・爪輪セット