こんにちは、ワンコフ博士です。
先日、スズキバイオリン製造がサウンドハウスのグループ企業になったというニュースが発表されました。意外な組み合わせと思われた方も多いのではないでしょうか。
私はと言えば、今とてもとてもワクワクしています。
そもそもワンコフ博士って何の博士なのかというと、音楽芸術博士(Doctor of Musical Arts)なのです。あまりなじみのない学位かもしれません。実際私も、自己紹介でこれに触れる際は「あっちのドクター(MD=医者)でも、そっちのドクター(Ph.D=学術博士)でもないドクターです」と言ってきました。
その実態は、「実技=演奏芸術分野の博士」です。研究もしますが、活動の中心には演奏がありました。 そんなキャリアを通じて、私は楽器工房の職人さんたちに大きな敬意を持つようになりました。
私の専門の楽器、サックバット(トロンボーンの先祖にあたる古楽器)は、そもそも楽器店に並ぶような楽器ではありません。工房の職人さんと相談しながら、何か月もかけて作ってもらいます。
また、たまに吹く普通のトロンボーンも、私はビンテージ(中古)界隈なので、リペア職人さんにはとてもお世話になっています。
今までで一番驚いたリペア体験をお話ししましょうか。
とある楽器に、一つだけ極端に音程が低くなってしまう音がありました。演奏上どうしても避けられない音で、しかもこれ以上スライドを入れられない場所で出す音だったので、演奏者としては調整のしようがありませんでした。
それをリペア工房で話したところ、 「それならたぶん管のこのへんの容積を広げればいいから、やってみる?」 と言われました。
どういうことかと聞き返すと、 「音響学。ちゃんと検証してやるなら工賃もらわないといけないけど、目分量で良ければ今やってあげるよ。まあだいたいこの辺で間違いないよ」 と。
信頼している職人さんだったので楽器を預けると、楽器の管のちょうど中ほどあたり、演奏中は首にあたるあたりの管を、内側から少しずつ広げ始めました。 見た目には、よく見ると小さなこぶのようなものができたことになります。
でも、受け取って実際にその音を出してみると、見事に音程が持ち上がっていました。問題だった音が自然な位置に収まり、スムーズに演奏できるようになったのです。

私はこの経験で、「楽器のリペア」とは壊れたものを元に戻す仕事ではないのだと実感しました。
精密機械などの修理と違い、管楽器や弦楽器のリペアは、それぞれの楽器の「その個体」が、その楽器のベストのパフォーマンスを発揮できるようにすることです。 新品の時の状態に戻すのではなく、時にはむしろ最初の形を変えてしまうことすらある。
同じモデルの楽器でも、最適解は個体ごとにそれぞれ違う。それを一本一本と向き合いながら調子を整えていく職人技なのです。
私はこれまで、そんな職人さんたちに恵まれてきました。 帰国した時は少し心配でしたが、何かあればいつでも相談できる職人さんを国内でも見つけることができました。
そんな私にとって、スズキバイオリン製造が仲間になるということは、弦楽器の製作まで行う職人さんたちのチームが仲間になるということです。これは本当に大きなことです。
しかも、スズキバイオリン。 実は私は以前、スズキバイオリンの現本社がある愛知県大府市の近隣にある某市の文化会館で芸術監督を務めていました。
ちょうどスズキバイオリンが大府に戻り、「バイオリンの里」として地域とのシナジーを生み出し始めた時期でしたから、とてもうらやましく見ていたのを覚えています。触発されて、こちらの市の伝統工業を題材に新作戯曲を一本プロデュースしたことまで思い出しました。 なので、勝手に少しの親近感も覚えています。
楽器を演奏する人は表に立ちます。 でも、その音を支えているのは、楽器を作る人、直す人たちです。
私はこれまで、多くの職人さんに支えられて演奏してきました。 そして今、そのものづくりの精神を受け継ぐスズキバイオリンの皆さんが仲間になったことを、とても心強く感じています。
サウンドハウスとスズキバイオリン。 一見すると意外な組み合わせかもしれません。
でも私には、「音楽を支える人たちがつながった」と思えてならないのです。
さて、ここまで職人さんの話ばかりしてきました。 最後に、そんな職人さんたちが作っている楽器を2丁だけご紹介しておきましょう。
No.230 アウトフィット バイオリンセット 4/4(ビギナーモデルの大定番)
No.540 バイオリン 4/4サイズ(伝統の製法で作られる中~上級モデル)
楽器ももちろん楽しみですが、それ以上に、それを作った職人さんたちとお会いできるのがとても楽しみです。
ではまた。








サウンドハウス管弦楽器ショールーム
鈴木バイオリン製造
チェロ 入門ガイド
バイオリン 入門ガイド
バイオリン弦 セレクター
弦楽器 初心者講座
