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シンセサイザー鍵盤狂漂流記 その165 異色サザンフュージョンの隠れ名盤!~ローリング・ストーンズ御用達キーボーディストのバンド「シー・レベル」~

2023-12-31

テーマ:音楽ライターのコラム「sound&person」, 音楽全般

先日、ローリング・ストーンズの新譜『ハックニー・ダイヤモンズ』が華々しくリリースされました。ストーンズはロックバンドの超老舗として現在でもトップを走り続け、しかも高いクオリティの音楽を発信し続けるスーパーバンドです。
そのサウンドはドラマー、チャーリー・ワッツ亡き今も輝き続けています。
ローリング・ストーンズは3人の強力なサポート・メンバーに支えられています。ベーシストにはマイルス・デイビスバンドやステップス・アヘッドという高度なジャズを演奏したバンド出身のダリル・ジョーンズ。ドラマーは24丁目バンド出身のスティーブ・ジョーダンといった超一流どころです。

ローリング・ストーンズの影の音楽監督 チャック・リーベル!

そして忘れてはならいないのがピアニスト。ロックンロールに欠かせないはアコースティック・ピアノを弾くのはオールマン・ブラザース・バンド出身のチャック・リーベルです。ローリング・ストーンズのピアニストには、メンバーが愛してやまなかったイアン・スチュアートやニッキー・ホプキンスなど素晴らしい演奏家が在籍していました。そしてチャック・リーベルもそれに負けない優秀なピアニストです。
チャック・リーベルはローリング・ストーンズの音楽監督と言われる程、音楽を俯瞰できる能力の長けたピアニストです。
1982年、ローリング・ストーンズのツアーに初参加し、ストーンズのアルバム『アンダーカヴァー』以降のアルバムでアコースティック・ピアノを中心とした鍵盤を弾いています。以後、2000年代に至るまでサポート・メンバーとして活動し、ミック・ジャガー、キース・リチャーズ、ロン・ウッドのソロ活動もサポートしています。

音楽監督と言われる所以は彼の音楽経歴からも垣間見ることができます。その原点は異色のサザン・フュージョンバンド「シー・レベル」にありました。

異色のフュージョンバンド?「シー・レベル」のリーダー、チャック・リーベル

「シー・レベル」はオールマン・ブラザース・バンドから派生して1976年に結成されました。
チャック・リーベルはデュアン・オールマンが率いたサザンロックバンド「オールマン・ブラザース・バンド」にピアニストとして在籍。
デュアン・オールマン亡き後にオールマン・ブラザース・バンドのメンバー、“ジェイモー”ジェイ・ジョハンソン(ドラム)、ラマー・ウィリアムズ(ベース)らと「シー・レベル」を結成。その中心となったのがチャック・リーベルでした。

時代の荒波を受けたバンド

時は1970年代後半。音楽のトレンドが大きく変わろうとしていた時代です。ロックとジャズが交差した音楽、クロス・オーバーが時代を席巻しつつありました。
「シー・レベル」はこのクロス・オーバーの味わいに南部のサザンロックテイストを混ぜた珍しい音楽を指向。インスト曲も多く、チャックのキーボードを大きくフィーチャーし、「オールマン・ブラザース・バンド」と違った洗練された音楽を創造しました。そういう意味ではとてもセンセーショナルなバンドだったと言えます。

■ 推薦アルバム:『荒海』(1977年)

ファースト・アルバムはサザンロックとジャズが融合した新しいフュージョン・サウンドを展開。チャック・リーベルがリーダーを務めたため、チャックのキーボードプレイをふんだんに聴くことができる。

オールマン・ブラザースの影響を受けつつも全く異なる音楽を標榜したメンバーの矜持を感じる。プロデューサーはクルセイダーズを手掛けたスチュワート・レヴィンが担当している。2つのバンドに共通項を見出すファンが多いのも頷ける。レコードジャケットも洒落たアートワークで話題になった。

推薦曲:「レイン・イン・スペイン」

最初にこの曲を聴いたのは大学1年生の頃。音楽学科ピアノ専攻の友人の薄暗い下宿には小ぶりなグランドピアノが置いてあり、そのグランドピアノで友人がこの「レイン・イン・スペイン」イントロを弾いた。その衝撃は今も忘れることができない。その後にレコードを聴き、こんな音楽があるかと「シー・レベル」に興味を持った。
イントロからいきなりアコースティック・ピアノのキャッチーなフレーズが炸裂する。チャック・リーベルは当時のトレンドであったクロス・オーバーへ舵を切ったことが一聴で理解できる。その後に押し寄せるアコピのグルーヴィーなソロはチャックのピアニストとしての力を知ることができる。一方、それを受けてのギターのソロにある種の違和感を覚えるのは私だけではないはず。

■ 推薦アルバム:『海猫』(1977年)

セッションプレイヤーであるランドール・ブラムレット(サックス)、デヴィッド・カーシー(ギター)、ジョージ・ウェーバー(パーカッション)を加えたことから色彩豊かなセカンドアルバムに仕上がった。ファースト・アルバムではチャックのピアノとジミーのギターがソロが多かったが、新メンバーにホーン奏者を加えたことでサックスのソロも聴け、音楽の間口が広がった印象を受ける。
クロスオーバーサウンドをファースト・アルバムより鮮明に打ち出したことでセカンド・アルバムの出来が一番いいのではと私は考えている。

推薦曲:「ストーム・ウォーニング」

ファースト・アルバムの「レイン・イン・スペイン」と同じベクトル上にある楽曲。チャック・リーベルの作り出すアコースティック・ピアノによるイントロが素晴らしく、チャックの標榜する「クロス・オーバー」への想いを垣間見ることができる。
チャックはこの楽曲でメロディアスなアコースティック・ピアノのソロを弾いているが楽曲後半にミニモーグのソロも合わせて聴くことができる。薄くポルタメントをかけ、VCOの波形は矩形波を使っている。ランドール・ブラムレットのサックスソロもあり、聴きごたえ満点な楽曲になっている。


今回取り上げたミュージシャン、アルバム、推薦曲

  • アーティスト:チャック・リーベル、ローリング・ストーンズなど
  • アルバム:『荒海』『海猫』
  • 推薦曲:「レイン・イン・スペイン」「ストーム・ウォーニング」

コラム「sound&person」は、皆様からの投稿によって成り立っています。
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鍵盤狂

高校時代よりプログレシブロックの虜になり、大学入学と同時に軽音楽部に入部。キーボードを担当し、イエス、キャメル、四人囃子等のコピーバンドに参加。静岡の放送局に入社し、バンド活動を続ける。シンセサイザーの番組やニュース番組の音楽物、楽器リポート等を制作、また番組の音楽、選曲、SE ,ジングル制作等も担当。静岡県内のローランド、ヤマハ、鈴木楽器、河合楽器など楽器メーカーも取材多数。
富田勲、佐藤博、深町純、井上鑑、渡辺貞夫、マル・ウォルドロン、ゲイリー・バートン、小曽根真、本田俊之、渡辺香津美、村田陽一、上原ひろみ、デビッド・リンドレー、中村善郎、オルケスタ・デ・ラ・ルスなど(敬称略)、多くのミュージシャンを取材。
<好きな音楽>ジャズ、ボサノバ、フュージョン、プログレシブロック、Jポップ
<好きなミュージシャン>マイルス・デイビス、ビル・エバンス、ウェザーリポート、トム・ジョビン、ELP、ピンク・フロイド、イエス、キング・クリムゾン、佐藤博、村田陽一、中村善郎、松下誠、南佳孝等

 
 
 

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