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ガッツある天才ギタリストの運命は

2018-03-30

テーマ:サウンドハウス創業者のコラム「Rickの本寝言」

1977年、ハリウッドにあるディスコStarwoods内にあるライブハウスは、立ち見オンリーの満席状態だった。そこで初めて目にした4人組のバンドに度肝を抜かれた。ハードロックの神髄を極めた強烈なビートと爆音。心に響くオリジナル曲の数々、そして何と言ってもギタリストの演奏スタイルは、それまでに見たことのない斬新なものだった。すべてのリフを完璧に弾きこなしていただけでなく、当時、見たこともないハンマリングとプリングのオン・オフを繰り返す奏法は驚異的であり、青天の霹靂のような衝撃を受けた。それからというもの、そのバンドを追っかけて、どこへでも見に行った。

ある日、ハリウッドのGUITAR CENTERに行った。そのドでかいショップをたむろっていると、突然、聴き慣れないギターのフレーズが唸るような轟音で店内に鳴り響いた。明らかにギターアンプをフルテンにして、自然なディストーションをかけつつも、爆撃のような速引きを、いとも簡単にこなしていた。店のど真ん中で、一般客がいることなど気にもせず、何ら躊躇することなく堂々とギターを弾きまくる天才ギタリストがそこにいた。それが、Eddie Van Halenだ。そのガッツたるや、言葉では言い表せない。そして1978年、Van Halenはメジャーデビューし、ロック界を席巻していく。

それから25年経った2003年、Eddie Van Halenに再び出会う機会に恵まれた。サウンドハウスがPEAVEY社の正規代理店になり、偶然か、運命のいたずらか、Peavey社はWolfgangと呼ばれるEddieのシグネーチャー・ギターを販売していたのだ。そしてロスアンジェルスで開催されたNAMMショーのPEAVEY社ブースの2階で、久々にEddieの顔を見ることができた。当時、Eddieはアル中に苦しみ、世間からは雲隠れしていた。とうにバンドは解散し、朝から夜まで酒におぼれ、体はぼろぼろになっていた。そのEddieがNAMMショーに来るというニュースがながれ、Peavey社のブース前には長蛇の列ができた。そして彼はブース内に設置された小ホールでギターを握ることになる。

そこで彼が語った最初の言葉。。。「最近ギター弾いてないんだ」「ピアノばかり弾いている」そうつぶやきながら、たどたどしくギターを弾き始めた。これが天才ギタリストの慣れの果てかと思うほど、ひどいプレーだ。愕然とした。やつれた体、麻薬患者のような顔つき、吐き続ける汚い下品な言葉の数々、これが、自分が愛してやまなかったEddieの結末か!そう思うと、なぜかとても空しい気持ちになったことを覚えている。

それから更に12年という年月が過ぎ去ったある日、Eddieは米国のスミソニアン博物館にて、どのようにしてギター演奏を革新的に進化させたか、ギターのデザインがどう変わってきたか、大勢の人に講義をし、大きな喝采を浴びた。そしていつしか健康は回復し、以前とは打って変わり、ぽっちゃりとした体つきになり、幸せな結婚生活を送っていた。2018年、今やEddieも既に60代前半。頭は真っ白になるも、バンド演奏を再開しただけでなく、とにかく笑顔がいっぱい見られるようになった。多くのギタリストから愛され、歴代No.1のギタリストという人も少なくないEddie Van Halen。幾人もの天才ギタリストが酒と薬物に溺れ、命を落としてきた過去を振り返るならば、奈落の底から這い上がることができたEddieには心から拍手を送りたい。Eddie、天才ギタリストが幸せな人生を送ることができるということを、世に知らしめたまえ!

Rick - 中島尚彦 -

1957年東京生まれ。10代で米国にテニス留学。南カリフォルニア大学、ウォートン・ビジネススクールを経て、フラー神学大学院卒。GIT(Guitar Institute of Technology)第2期生のギタリスト。80年代にキリスト教会の牧師を務め、音楽ミニストリーに従事しながら、アメリカで不動産会社を起業。1989年、早稲田でライブハウス「ペトラクラブ」をオープン。1993年千葉県成田市でサウンドハウスを創業。2001年、月間地域新聞日本シティージャーナルを発刊。主幹ライターして「日本とユダヤのハーモニー」の連載をスタートし、2010年よりwww.historyjp.com を通じて新しい切り口から古代史の流れをわかりやすく解説。2023年、一般財団法人サウンドハウスこどものみらい財団を創設し、こどもたちの支援にも従事。趣味はアイスホッケー、ピアノ演奏、トレイルラン、登山など。四国八十八ヶ所遍路を22日で巡る。グループ企業の経営指導に携わるかたわら、古代史の研究に取り組み、日本のルーツ解明と精神的復興をライフワークとする。

 
 
 
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