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僕セレクション音楽映画5選 / Cool music movie selection5 on me

2020-12-11

テーマ:音楽ライターのコラム「sound&person」

今日は音楽映画についての話です。
音楽ものの映画やドラマは、洋画・邦画問わず今までたくさんありました。やっぱりミュージシャンや音楽って夢があるし、アーティストの人生はドラマティックで皆憧れるのでよく扱われるテーマです。しかし、映画やドラマにするとなると役者が演奏するというハードルがあるため、思うほど簡単にいきません(スポーツ映画も同様)。「ボヘミアンラプソディー」の成功以来、二匹目のドジョウを狙って他のアーティストのものが制作されていますが、ヒューマンドラマならともかく、音楽もの映画としては見辛いかなぁと思います。ジミヘンドリクスのように演奏するのは、現代のいかなるギタリスト誰でも不可能です(ん? 映画『JIMI:栄光への軌跡』は?)。最近は撮影技術が上がっているのでうまくやっている映画は多くなっていますが、実際の演奏家からすると物足りないものが多いのが現状です。
そこで、僕が今まで観てきた中でよかった音楽映画を5つあげようと思います。Top5にしようと思ったのですが、順番をつけられないのでベスト5選です。また、選考にはマーティンスコセッシの『ザ・ローリング・ストーンズ シャイン・ア・ライト』のようなスターご本人登場系のドキュメンタリー映画や、『ウエストサイドストーリー』のようなモロミュージカル(自己評価で)な映画は除いてあります。また、デイズニーや『けいおん』のようなアニメ作品も選外です。まだ観てない音楽映画ももちろん選外です。今回選外になったものでも、あまり好きでなかったデビットボウイを聴くきっかけになった『デヴィッド・ボウイ 最後の5年間』(amazon prime video)や『雨に唄えば』のような古典ミュージカル作品は、自分の中の音楽文化をより豊かにしてくれます。
それでは年功序列で発表していきます。

1、『バード』(クリント・イーストウッド)1988年

Bird - Theatrical Trailer

巨匠クリント・イーストウッドが描いた、ジャズの巨人チャーリー・パーカーの音楽と生涯を描いた作品です。クリント・イーストウッドのジャズやカントリー音楽への愛と造詣の深さは、他作品にも色濃く出ています。彼は自分でテーマ音楽を作ったりしている作品もあります。この映画はそのようなクリント・イーストウッドの音楽、特にジャズへのこだわりが随所に現れています。演奏シーンも、主演のフォレスト・ウィテカーが実際にサックスを結構吹けるらしく、実際の生音が使われているシーンもあります。チャーリー・パーカーの音源のアテレコ演技という形で演奏シーンは撮影されていますが、十二分に緊張感と臨場感が表現されていて、プレイヤーでなければ実際演奏しているようにも見えるかもしれません。しかし、クリント・イーストウッドらしく、決してジャズマニア向けの映画という撮り方ではありません。ジャズの正史を描くものでもなければ、ファン映画でもありません。チャーリー・パーカーという人間を題材にした映画らしい映画です。クリント・イーストウッドは駄目男のミュージシャンを描くのがとても上手いですね。変にかっこよくも憧れめいた撮り方もしない、ちょうどいい距離感です。
クリント・イーストウッドの初めての音楽を題材にした作品『センチメンタル・アドベンチャー』(邦題)も大好きな作品なのですが、音楽映画としてはこのセレクションから落選しましたw この年実はセロニアスモンクのドキュメンタリー映画も撮っているのですが、ちょっとマニアックすぎて入れませんでした。この作品が演奏シーンがうまく撮れてるなぁ、と思った一番古い作品みたいです。

2、『ジャージー・ボーイズ』(クリント・イーストウッド)2014年

映画『ジャージー・ボーイズ』予告編

これまた巨匠クリント・イーストウッドの作品ですね。クリント・イーストウッド大好きなんで仕方ない、文句は受け付けません。
これはアメリカでトニー賞も獲った同名のミュージカルの映画化作品です。フランキー・ヴァリが、リードボーカルのフォー・シーズンズというポップグループ(バンドと言ってもいいと思うがポップグループと呼ばれる事が多い)の伝記映画になります。フォー・シーズンズと言ってもピンと来ない人も多いと思いますが、1960年代に多くのヒット曲を発表しています。「sherry」や「Big Girls Don't Cry(邦題「恋はヤセがまん」なんだこの邦題、、)」などのヒット曲を聞けば、どこかで聞いた事があるのではないかと思います。オールドアメリカンの雰囲気そのもので、これぞポップスという聴き心地の良さがあります。そして、フランキー・ヴァリのソロ名義の「can't take my eyes off you」はディスコブームの時代にもよくかけられ、今でも様々なアーティストがカバーするヒット曲の範疇を超えた名曲になっています。
さて映画の方ですが、これまたクリント・イーストウッドらしい映画です。ミュージカルっぽいメタな演出やラストシーンなど大胆な演出がされています。バンドを真剣にやった事がある人ならどっかで経験したり見聞きしたような話や人間が出てきます。それもクリント・イーストウッドらしく、誰かのポジションに肩入れする事なくストーリーが進んでいきます。ラストもスッキリとしたエンディングなので、とても鑑賞後感も良く、気軽に観れて自分のの文化をほんの少し豊かにしてくれる良質な音楽映画ではないでしょうか。演奏シーンも実際演奏しているような、歌っているような(多分実際歌えるはず)リアルなものです。そして、後期のクリント・イーストウッド作品らしく、キャストをうまく使いこなしています。なんかこんなやついそうな感じがとてもリアルです。「ミスティック・リバー」なんかでもそうなんですが、キャスティングだけで雰囲気が出てるのがすごいなぁ、と思います。まさに巨匠の技と言ったところ。映画館でクリント・イーストウッドがミュージカル!って驚いた思い出のある作品ですね。フォー・シーズンズの音楽と一緒におすすめしたい作品です。

3、『セッション』(デイミアン・チャゼル)2014年

映画『セッション』予告編(4/17公開)

これは言わずと知れた有名作品ですね。アカデミー賞にも5部門でノミネートされ3部門で受賞しました。当時でも音楽好きの間で結構話題になりました。監督のデイミアン・チャゼルは翌年『ララランド』でさらに評価を確固たるものにし、この手の映画と言えばデイミアン・チャゼルという風になっています。でも、僕の中ではこの作品が一番ですね。演奏シーンの迫力やリアルさはここである程度上限に達したような気がします。まぁ、ほんとよく撮れています。音響もよく出来ています。
有名作品なんで特に解説を付け加えませんが、多少過剰演出な演奏シーンは、素人にはわかりやすくセンセーショナルで面白いと思います。ジャズっていうとなんかマニアックでわかりにくいって皆思ってますから、これくらいがベストな演出だと思いました。
最近の音楽映画を語る上では外せない作品かと思います。

4、『幸せをつかむ歌』(ジョナサン・デミ)2015年

映画 『幸せをつかむ歌』 最新予告

これはあまり知られていない映画かもしれません。少し前に友人にお勧めしようと思って、Amazon primeとNetflixのサブスクリプションを探してみましたがありませんでした。現在はあるかもしれませんが、ビッグタイトルではないですね(ありました)。僕はたまたまCS放送で見たのですが、思いの外よくて印象的な作品となりました。しかし、これはロックバンドに人生かけた事がある人じゃないと少し感動は薄れるかもしれません。もしくは近くにそういう人がいた、とか。まぁ、僕セレクションですからw
ストーリーはそんな難しいものはありません。ロックに人生を捧げた女ボーカルの話です。一度は結婚して子供も作ったけど、ロックバンドの為にそれを捨て、今では場末のライブハウスのハウスバンドのシンガーに収まって生活ももうカツカツです。そんな中、娘を励まして欲しいと元旦那から頼まれ、家族の元へ帰るところからストーリーは動き始めます。結末といい登場人物達の人生の選択といい、「ロックだね」という感じですw ロックって音楽のジャンルじゃなく生き方だよね、って話がわかる人には沁みますね。僕的には『ニューシネマパラダイス』の次くらいに泣ける映画です。多分普通の人はそれほどではないと思いますがw
さて、この映画を語る上でまず語らなければいけないのは主演のメリル・ストリープの演技です。この人昔ロックバンドしてたんだっけ? と思うようなガチなロックボーカルの匂いがします。僕的にはスティービー・ニックス(Fleetwood Mac)のような潔さと美しいロックへの専心を感じました。劇中のライブシーンのしわがれたギターボーカルもガチもんにしか見えません。これが演技というのが驚愕です。ロバート・デニーロに並ぶ、演技派女優の底知れぬ凄みを見せつけられた気になりました。また、娘役が本当の娘なのでリアリティーが増しています(顔似てる)。このメリル・ストリープの好演がなければ、この映画もただの人情映画になって、僕のようなロッカーからはクセェ映画と言われていたでしょう。演技中心に映画を見る人にも是非見てもらいたいです。 なんの賞レースにもノミネートされていませんが、ロッカーのあなたに贈る珠玉の映画です。

5、『サイドマン:スターを輝かせた男たち』(スコット・ローゼンバウム)2016年

【サイドマン:スターを輝かせた男たち】予告

最後は、実はご本に登場のドキュメンタリー映画なのですが、スターじゃないし良しとしました。僕セレクションなんでw
パイントップ・パーキンス、ヒューバート・サムリン、ウィリー“ビッグ・アイズ”スミス。この名前を聞いてピンと来る人は相当のブルースマニアだと思います。僕でもなんかどっかで聞いた名前だなぁ、というくらいです。僕はこの手のブルースの映画を漁って見てた時期があって、ライトニン・ホプキンスのDVDなんかも持ってました。はっきり言って、またオタクブルース映画が出てきたか、と思ったんですが、クロスロードの悪魔に呪われた人間はそう思ってもやっぱり観てしまうんですね。
彼らはブルースのスーパースターのマディ・ウォーターズやハウリン・ウルフのバックバンドのサイドマンとして彼らの音楽を支えました。どんなに優れたプレイヤーでも所詮はバックバンドの一人でどれだけ彼らの音楽に貢献したところで誉れはフロントマンのスターのものになります。また、音楽が一つのところに留まっていた事はなく容赦無く時代は変わっていきます。そんな、サイドマンの人生の栄光と悲哀を本人を通じて描いていきます。やっぱりこの年代のブルースマンって実際過酷なプランテーションで労働していたり、公民権運動以前のアメリカに生きていた人たちだから、もう僕たちとはブルースの意味合いが違ってきます。人間の底力みたいなものを感じます。僕の悩みなど取るに足らないと思います、ほんと。
撮影当時全員死にかけのいいジジイなのですが、彼らの顔を見るだけでこの物語の結末を観たような気になります。90で亡くなったレス・ポールもそうでした。幸せそうなジジイ達の演奏はとても好きです。三人とも撮影後亡くなってしまったんですが、羨ましいブルース人生でした。R.I.P.ブルースに浸りたくなる作品であるとともに、人生のハッピーエンドについて考えさせられるいい映画だと思います。
グレッグ・オールマン、ジョニーウィンターなど亡くなってしまったレジェンドやデレク・トラックス、エリック・クラプトン、キース・リチャーズなどのインタビューなども出てきてブルースファンには嬉しい映画になっています。

今回のセレクションにはこの5作品を選びました。ちょっとこの範疇ではないかぁ、とは思って外した『ヤングハート』もとてもいい作品です。伝説のラッパー2Pacの伝記映画『All eyes on me』も次点の候補でした。グレイテスト・ショーマン等のビッグタイトルにもいいものが沢山ありますし、昨今は音楽ものが人気です。大きなスクリーンと大音量を生かした演出をしなければ映画館にお客さんを呼べなくなってきている昨今の映画事情も関係していると思います。そして少しこのジャンルは邦画が弱いかなぁ、と感じます。『スウィングガールズ』のような青春系はいいと思うのですが、それ以外ちょっと、ねw というか、アメリカの音楽文化が豊かすぎるのでしょう。 音楽の物語を観るのも自分の音楽文化を深めるのにとても役に立ちます。何かの参考になればよいなと思います。

読んでくれてありがとう。
僕はこう思う。


コラム「sound&person」は、皆様からの投稿によって成り立っています。
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Taiyo Haze

ギタリスト、サウンドエンジニア(ミキサー、MA、PA)、コンポーザー、WEBデザイン(エンジニア)、詩人、ヘルシー志向、珈琲、喫茶店、読書家、野球好き。 人生のあらゆる時点で自分の興味と好奇心、その時環境が要求する知識、スキルに真摯に取り組んできました。 そして、何より幸運だったのがどの学びの時も、その分野の生き字引のようなメンターの元で経験と研鑽を積めたことです。 特に20代の頃は狂気のように深遠な体験と専心から何物にも揺るがぬ感性を身につける事が出来ました。 何にでも興味は持つけれど、同時に飽きっぽくもあります。3年以上続いてるのは、音楽、野球(今はプレーしてないです)、読書(特にSF)、WEBくらいでしょうか? だいたい3年超えると一生やり続ける気がします。
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