一般的にギターに使用されるポットは6種類あり、「25kΩ」「50kΩ」「250kΩ」「300kΩ」「500kΩ」「1MΩ」の順に抵抗値は大きくなります。ポットの抵抗値は、大きくなるとその分、低音域をカットします。逆説的に言うと、抵抗値が大きいポットを使用すると、より高音域が強調されたサウンドになります。それでは、ピックアップとポットの抵抗値の関係を探っていきましょう。
●シングルコイル・ピックアップのポット「250kΩ」
シングルコイル・ピックアップには、一般的に抵抗値「250kΩ」のポットが使用されています。理由としては諸説ありますが、エレクトリックギターの生みの親であるレオ・フェンダーが、シングルコイルとの組み合わせで選んだポットの抵抗値が「250kΩ」だからということが最終的な結論です。 エレキギターのピックアップとポットの抵抗値の組み合わせは、このシングルコイルと抵抗値「250kΩ」のポットの組み合わせがサウンドの基準となっています。
●ハムバッカー・ピックアップのポット「500kΩ」
ハムバッカー・ピックアップには、抵抗値「500kΩ」のポットが一般的に使用されています。理由については、ハムバッカー・ピックアップの構造を知る必要があります。ハムバッカーは、2つのシングルコイルを位相反転させ直列につなげたピックアップです。この構造によって高音域に多くあるノイズを低減することを実現しましたが、高音域がカットされることにより、シングルコイルに比べ籠ったサウンドになってしまします。その為、「250kΩ」よりも低音域がカットされ、高音域が強調される「500kΩ」が使用され、籠らず抜けの良いサウンドを得ることができているのです。
●P-90・ピックアップのポット「300kΩ」
P-90・ピックアップには、抵抗値「300kΩ」のポットが使用されている場合が多くあります。
P-90・ピックアップは、通常のシングルコイルよりもコイルの巻き数が多く、出力も大きいシングルコイル・ピックアップです。しかし、電気の特性上高音域から劣化していくため、コイルの巻き数増加に伴い、通常のシングルピックアップに比べ高音域が若干カットされてしまいます。シングルコイルより高域が弱いが、ハムバッカーよりは高域が出力される、それがP-90・ピックアップの特徴です。
その為、「250kΩ」と「500kΩ」の間である、抵抗値「300kΩ」のポットによって絶妙な抜けの良いサウンドを実現しています。
また、ヴィンテージのジャズベースや、一部のレスポールにも使用されています。ジャズベースは基本的にシングルコイルですが、抵抗値「300kΩ」のポットを使用することにより、より抜けの良いサウンドを得ることができます。レスポール等のハムバッカーに使用した際は、高域が若干カットされることにより、通常より甘くメローなサウンドになります。
皆様もなんとなく、ポットの抵抗値とピックアップの関係性が見えてきたのではないでしょうか。それでは、ちょっと特殊なポットについても探っていきましょう。
●抵抗値「1MΩ」のポット
「1MΩ」は、1マグオームと呼び、1MΩ=1000kΩです。このポットが低音域をカットし、高音域をかなり強調することを想像するのは、もう皆さまには容易いのではないでしょうか。この抵抗値「1MΩ」のポットは、テレキャスターに良く使用されます。あの抜けの良く、トゥワンギーなサウンドにはポットの抵抗値も関係していたのです。
●抵抗値「25kΩ」のポット
抵抗値「25kΩ」ポットは、EMG等のプリアンプを搭載したアクティブタイプ(要電源供給)のピックアップと組み合わせて使用されます。プリアンプを通すことにより、ピックアップからの信号が、ハイ・インピーダンスからロー・インピーダンスに変化します。それに伴い、抵抗値も下がり、抵抗値の低いものが使用されます。
●抵抗値「50kΩ」のポット
抵抗値「50kΩ」のポットは、Fender U.S.A. Eric Clapton Signature Modelのミッドブースト回路に使用されているポットです。こちらもプリアンプを通した製品のため、抵抗値の低いものが使用されていますが、通常のプリアンプとは異なり特定の周波数帯(中音域)のみにフォーカスされた回路の為、通常のプリアンプよりも抵抗値は若干高い製品が使われています。
抵抗値とピックアップの一般的な組み合わせや関係性については、お分かりいただけましたでしょうか。基本は以上の組み合わせですが、あくまでも一般的な場合で、一つの基準にすぎません。
実際は、求めるサウンドによって自由に変えても良いパーツなのです。抵抗値による音の変化とピックアップの特性を考慮することで、求めるサウンドにより近付けることができます。
例えば、シングルコイルのサウンドが籠りがちに聞こえる場合は、ポットの抵抗値を「250kΩ」から「300kΩ」に変えてみることで抜けが良くなります。ハムバッカーのサウンドが若干高音域が強く感じられる場合は、「500kΩ」から「300kΩ」に変えることにより、角の取れた甘いサウンドになることが予測されます。
抵抗値とピックアップの関係性を基本に、いろいろと変えてみることで、イメージした求めるサウンドへと近付く近道となるかもしれません。
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POTのホットなラボ
・第1回「Aカーブ」「Bカーブ」
・第2回 ポットの抵抗値について
・第3回 インチ、ミリ規格について
・第4回 シャフトの種類について
・番外編 コンデンサー(キャパシター)とは??