作曲家に編曲家、作詞家や演奏家、世の中にはパソコンを使用する職業が多くありますが、音楽の保存にはコンピュータが不可欠な現代、データ管理には念を入れておくべきです。
そこで、様々な記録媒体に入っている音楽データを、今一度見直し、半永久的に保存できるようにしましょう。マイナーな情報もありますので、ぜひ最後までご覧ください。

■ バックアップを知らない方向けに解説
まず初めに、バックアップについてよく知らない方向けにバックアップの基本について解説していきます。ご存じの方にとっては当たり前すぎる内容だと思いますので飛ばしても構いません。
そもそもバックアップというのは、コンピュータシステムで主にデータやシステムの状態を複製し、問題発生時の復旧(リストア)に備えることを意味します。
要するに、使用しているパソコンが故障した場合でも、レコードに傷が入った場合でも、CDが剥がれた場合でも、データを復元することができるようにあらかじめデータを複製、管理しておくことです。
これを怠っていると、パソコンなら、私用で使用している方であれば、保存している写真や動画、ゲームそのもののデータやセーブデータが永久に消えたり、仕事で使用している方であれば、創作物や個人情報のデータ、現在進行中のプロジェクトが消滅したりしてしまいます。CDやカセットテープでも同様です。
データが消える代表的な原因として、パソコンでは物理的破損、水没、火災、雷サージによるショート、寿命による突然故障、初期不良などが挙げられ、CDやレコードでは経年劣化や物理的な損傷が挙げられます。まぁ、ほとんどが経年劣化です。特にHDDと呼ばれる記録装置はとても繊細なため、稼働中に動かしたり衝撃を加えたりすると、故障することが多いです。また、HDDは故障しても一部のデータは復元できることが多いですが、その速さからメインで使われることの多いSSDと呼ばれる記録装置に関しては、復旧がとても難しく高額であるため、バックアップは必ずと言って良いほど大切なことでしょう。さらに、品質の悪いCDなどは、印刷面が剥がれおち、見るも無惨な姿になっていることも多いです。取り敢えず消えてほしくないデータを別の記録装置にコピーするだけでもバックアップにはなります。
この記事では、様々な記録媒体のバックアップのやり方などについて解説します。
■ アナログレコードのバックアップ
世の中には様々な記録媒体があります。代表的、歴史的な記録媒体といえばまず思い出されるのはアナログレコードでしょう。円盤に凹凸が刻まれていて、針でなぞることで音楽を奏でるあのレコードです。

じつはアナログレコードって大変デリケートで劣化しやすいのです。なにせほとんどが塩化ビニールでできているので、傷つきやすく、静電気で埃を寄せ集めます。お気に入りの音楽が入っているレコードも、気がつけば聞いていられないほど音質が劣化している、なんて良くあることです。
そこで、劣化する前にレコードの音楽データをパソコンに取り込んでみましょう。ちなみにこれは「アナログ音源をデジタル化」と言います。
ION AUDIO ( アイオンオーディオ ) / Vinyl Motion トランク型レコードプレーヤー
こちらのレコードプレーヤーをはじめとした外部出力が可能なプレーヤーを、パソコンに直接接続、もしくはオーディオインタフェースを介してパソコンに接続すれば、アナログ音源であるレコードの音を、パソコンに送信することができます。パソコン上で受信したデータをWAVファイルやMP3ファイルに変換すれば、あっという間にデジタル化できます。個人的に、インテリアとしても魅力を感じますのでおすすめです。
■ 寿命がわからないCDのバックアップ

続いては、デジタルデータを取り扱うCDについて解説します。みなさん、CDの寿命は何年だと思いますか?実は、はっきりとした寿命がCDにはないのです。技術評論社の出版する書物には、「気温24度、湿度50パーセントの保管ケースで適切に保存していれば100年以上はもつ(※)」と記載がありますし、日立製作所は「異物が混入したり傷があったりすれば、この限りではなく、直接、寿命何年とは言わない。数年ごとの複写が望ましい」と公言しています。そもそもCDという記録媒体の生みの親であるフィリップスが開発を始めたのは1977年です。まだ50年も経っていません。100年もつというのはあくまで理論上です。また、CDにはCD-ROMやCD-RやCD-RWなど、様々な種類があり、寿命もまちまちです。そもそもCDは工場で作られるものなので、品質が悪ければすぐに再生不能になることだってあります。
※出典:唯野司「素朴な疑問をばっちり解決 CD&DVDのしくみ・扱い・作り方・楽しみ方」技術評論社
何が言いたいのかと言えば、傷つくし寿命がわからないので早めにバックアップしよう、です。
CD自体には音質の劣化というものは存在しませんが、パソコンに取り込むときは、CDプレーヤーのセンサーの性能で音質が決まります。どのCDプレーヤーがおすすめなのか一概に言えませんが、どれも値段相応の音質で再生、読み込みしてくれる傾向にあるので、予算を決めて、できるだけ評判の良い機種を選ぶようにしましょう。
具体的な取り込み方法ですが、CDプレーヤーをパソコンに接続して、ドライバを起動、あとはCDを読み込んで音声ファイルに変換するだけです。
■ 懐かしのカセットテープのバックアップ

CDが普及する前の記録媒体といえば、やっぱりカセットテープが思いつきます。なかでも圧倒的な広まりを見せたコンパクトカセットは、音楽を記録する定番のメディアとして活躍しました。実はこのコンパクトカセット、1962年にフィリップスが開発し、特許を取らずに普及させたものなのです。フィリップス社、すごい活躍ですね。
カセットテープって、実は様々な種類があり、コンパクトカセットをはじめ、ELカセット、Cカセット、マイクロカセットなどがあります。他にも、RCAビクターが1958年に開発したテーペット、アイワが1964年に開発したマガジン50テープカートリッジなど、独自規格のカセットテープもたくさんありました。
そんなカセットテープですが、寿命は長くて10年ほどです。経年劣化で磁気不良が起きたり、保管場所によってはカビが生えたりします。そうすると、大切な音声データが劣化してしまい、最悪の場合再生できなくなることも。再生できるうちに大切なカセットテープをデジタル化、パソコンに取り込んでおきましょう。
通販サイトなどで「カセットテープ プレーヤー コンパクト」と検索すると、様々なものがヒットしますが、デジタル化したいカセットの規格に合った、評判の良いプレーヤーを選びましょう。USB出力できるものも多いですが、一般的なイヤホンジャック付きのプレーヤーで構いません。プレーヤーの音声出力端子から、パソコンの音声入力端子(マイク端子)にオーディオケーブルをつなぎ、プレーヤーでカセットを再生、パソコン側の専用ソフトで録音するという手法をとれば、簡単にデジタル化できます。使用するケーブルですが、ほぼ全てのプレーヤーがステレオミニ規格での出力が可能ですので、両端がステレオミニ規格のケーブルが一本あれば事足ります。
CLASSIC PRO ( クラシックプロ ) / CMM222 オーディオケーブル ステレオミニ 2m
■ バックアップデータの管理
最後に、取り込んだデータを安全に長期保存する方法を解説します。
まず、保存方法には大きく分けて二種類あります。それは、
- □ パソコンと、外付けSSD・HDDの二箇所で同じデータを保存する
- □ クラウドストレージサービスに契約して、データを預かってもらう
の二つの方法です。
それぞれメリット・デメリットがありますが、後者のクラウドサービスが圧倒的に使いやすく安全ですので、こちらをお勧めします。
外付けSSD・HDDを用いるのと違い、故障するリスクもなく、天災によってデータが消失するリスクも圧倒的に減ります。
人気なクラウドサービスとして、Dropbox、iCloud、OneDrive、Googleドライブなどがあります。ぜひ検討してみてください。
音楽のバックアップで一番お勧めなのがGoogleドライブです。300曲以上保存が可能な15GBまでは無料で利用することができ、2000曲以上保存できる100GBプランや、4000曲以上保存できる200GBプランもあります。どちらも手頃な価格で契約でき、非常に利便性が高いものとなっています。(2023年1月23日現在)
■ 最後に
今回は、アナログレコード、CD、カセットテープのバックアップ方法と長期保存する方法について解説しました。すこしでもお役に立てていれば幸いです。今後も、アナログレコード、CD、カセットテープ以外に様々な記録媒体のバックアップ方法について解説する予定ですので乞うご期待ください。
それでは良い音楽ライフを!
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