ここから本文です

シンセサイザー鍵盤狂 漂流記 ~音楽を彩った電気鍵盤たちとシンセ名盤の数々~ その42

2021-07-08

Theme:sound&person

ニューヨークのファーストコールミュージシャンバンド、24丁目バンド!

今回の鍵盤狂漂流記はニューヨークのスタジオミュージシャンで結成されたバンド、24丁目バンドです。メンバーはハイラム・ブロック (ギター&ヴォーカル)、クリフォード・カーター(キーボード&ヴォーカル)、ウィル・リー (ベース&ヴォーカル)、スティーヴ・ジョーダン(ドラム&ヴォーカル)。

セッションミュージシャンとしてはファースト・コール(一番最初に電話がかかってくる売れっ子ミュージシャンの総称)達が結成したバンドです。

ハイラム・ブロックやウィル・リーは自身のソロ・アルバムを制作していますし、多くのアーティイストの名盤にも参加しています。クリフォード・カーターは24丁目バンドの他、エレメンツというフュージョンバンドにも参加。ジェームス・テイラーのアルバムやマイケル・フランクスのアルバム等にも参加する売れ子ミュージシャンです。1993年には自身のソロ・アルバム『Walkin' into the Sun』もリリースしています。私も持っていますが素敵なアルバムです。ドラマーのスティーブ・ジョーダンはローリング・ストーンズの『ダーティ・ワーク』に参加。ブルース・スプリングスティーン、ジョン・スコフィールド、ボブ・デュランなど著名ミュージシャンのレコーディングやツアーに参加するなど、その活躍は枚挙に暇がありません。

そんな売れっ子達が集まったのが24丁目バンドでした。

■ 推薦アルバム:『24thストリートバンド』(1979年)

たった3日間で仕上げられたアルバム。彼らは2枚目がファーストアルバムだとコメントしていますが、私のお薦めは、このファーストアルバムです。なんといってもそのスピード感、グルーブ感が素晴らしく、売れっ子ミュージシャン達の勢いを感じます。>

このアルバムジャケットはニューヨークの地下鉄の「トークン」がアートワークされています。「トークン」は地下鉄に乗る際、購入するコインで切符のようなものです。「トークン」の中央部にはNYCのYの文字がくり抜かれています。私が1980年にニューヨークのペン・ステイションで購入した「トークン」にもYの空洞がありました。しかし、その後訪れた際、トークンのY文字は塞がっていました…。それがコストダウンだったのかどうかは分りません。単なるコインに開けられた穴の話です。私はNYCの象徴であったトークンの変貌に少し寂しい想いがしたのを記憶しています。

推薦曲:『ショッピン・ラウンド・アゲイン』

ギタリスト、ハイラム・ブロックの曲であり、24丁目バンドを象徴する名曲。そのスピード感は他の楽曲を凌駕している。彼らは腕利きミュージシャンであることから、ほぼ1発録りだったことが想像される。ジャズというよりもロックがベースになっている。アルバムを通しても似たような楽曲があることは否めないが、演奏のグルーブ感には目を見張るものがあり、4人のコーラスワークがスピード感を増長させている。
キーボードのクリフォード・カーターはヤマハCP-80 エレクトリック・グランドピアノとオーバーハイム4ボイスシンセサイザー、ホーナーのクラビネットを使用している。

推薦曲:『ダウン・トゥ・ザ・ウォーターホール』

クリフォード・カーターの曲で本人が歌っている。カリプソ感漂う名曲でクリフのヴォーカルもそのムードを引き立てている。ハモンドB3がいい効果を出している。ブレイク後の4人によるコーラスワークも素晴らしい。

推薦曲:『Quack!!!』

当時はクロスオーバーと云われていたフュージョン感満載の曲。シンプルなリフに分かりやすくポップなサビ。NHKで放送されたライブではブレイク時に4人によるコーラスワークの凄さを実感できた。また、クリフ・カーターのシンセサイザーソロでは自分の弾いた音を同時に歌うという、シンセサイザーによるジョージ・ベンソン風ソロを披露していた。インスト曲の方が彼らの技術力の高さが分かる為、「Quack!!!」を3rdアルバムに入れて欲しかった!

■ 推薦アルバム:24丁目バンド『マンハッタンの夢』(1980年)

1ヶ月の時間をかけてレコーディングされたアルバム。これがファーストアルバムと彼らはコメントしている。曲は9曲中7曲がクリフォード・カーターの作で「NOT TOO MUCH TO GIVE」と「LOVERS AGAIN」の2曲がハイラム・ブロックのオリジナル作品。また1曲を除いては全てヴォーカル曲。1作目のフュージョンタッチが薄まり、アルバム全体が高度なポップソングアルバムになっている。

レコードジャケット(当時)は4人によるユーモア溢れるアートワーク!

推薦曲:『NOT TOO MUCH TO GIVE』

ギタリスト、ハイラム・ブロックの曲。ヴォーカルはハイラム・ブロックがとっている。サビのメロディが美しい。

■ 推薦アルバム:24丁目バンド『BO KU TA CHI』(1981年)

24丁目バンドの来日記念ライヴアルバム。私は当日券で郵便貯金ホールに出かけましたが、急用ができて彼らのライブを観ることはできませんでした。 売れっ子ミュージシャン達は好き放題やってもこれだけのハイクオリティーなライブになるという好例。悪ガキ達が楽しく演奏している姿が目に浮かびます。来日した彼らのインタビューで心に残っているフレーズでシメにします。

「我々は全員が歌える完全なボーカルバンドだ!」

このライブを聴けば、その言葉が嘘でないことが分かります。

推薦曲:『ニューヨーク・シティ・ストラット』

4人による冒頭のコーラスワークやAメロ部分などを聴けば彼らが「完全に歌えるボーカルバンド」であることを理解できる曲です。 バンドメンバーが全員歌え、高度な演奏技術を持ち、そのスキルがロックフィールドだけでなく、ジャズフィールドにも及ぶ…バンドの1つの理想形であると私は考えています。

今回取り上げたミュージシャン、アルバム、推薦曲、使用鍵盤

  • アーティスト:24丁目バンド
  • アルバム:「24thストリートバンド」「マンハッタンの夢」 「BO KU TA CHI」
  • 曲名:「ショッピン・ラウンド・アゲイン」 「ダウン・トゥ・ザ・ウォーターホール」「Quack!!!」 「NOT TOO MUCH TO GIVE」「ニューヨークシティ・ストラット」
  • 使用機材:アコースティック・ピアノ、ヤマハCP80エレクトリックグランド、 オーバーハイム4ボイスシンセサイザー、ミニモーグ、ホーナー・ クラビネット 等

コラム「sound&person」は、皆様からの投稿によって成り立っています。
投稿についての詳細はこちら

shinsekenban

高校時代よりプログレシブロックの虜になり、大学入学と同時に軽音楽部に入部。キーボードを担当し、イエス、キャメル、四人囃子等のコピーバンドに参加。静岡の放送局に入社し、バンド活動を続ける。シンセサイザーの番組やニュース番組の音楽物、楽器リポート等を制作、また番組の音楽、選曲、SE ,ジングル制作等も担当。静岡県内のローランド、ヤマハ、鈴木楽器、河合楽器など楽器メーカーも取材多数。
富田勲、佐藤博、深町純、井上鑑、渡辺貞夫、マル・ウォルドロン、ゲイリー・バートン、小曽根真、本田俊之、渡辺香津美、村田陽一、上原ひろみ、デビッド・リンドレー、中村善郎、オルケスタ・デ・ラ・ルスなど(敬称略)、多くのミュージシャンを取材。
<好きな音楽>ジャズ、ボサノバ、フュージョン、プログレシブロック、Jポップ
<好きなミュージシャン>マイルス・デイビス、ビル・エバンス、ウェザーリポート、トム・ジョビン、ELP、ピンク・フロイド、イエス、キング・クリムゾン、佐藤博、村田陽一、中村善郎、松下誠、南佳孝等

 
 
 

Categories

Translated articles

Calendar

2025/4

  • S
  • M
  • T
  • W
  • T
  • F
  • S
  • 1
  • 2
  • 3
  • 4
  • 5
  • 6
  • 7
  • 8
  • 9
  • 10
  • 11
  • 12
  • 13
  • 14
  • 15
  • 16
  • 17
  • 18
  • 19
  • 20
  • 21
  • 22
  • 23
  • 24
  • 25
  • 26
  • 27
  • 28
  • 29
  • 30

Search by Brand

Brand List
FACEBOOK LINE YouTube X Instagram TikTok