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シンセサイザー鍵盤狂 漂流記~音楽を彩った電気鍵盤たちとシンセ名盤の数々~その33

2021-04-21

テーマ:sound&person

追悼 チック・コリア 名曲「スペイン」特集

先日、お亡くなりになったチック・コリアさん(以下敬称略)の追悼シリーズその3は名曲、「スペイン」特集です。私はチックの大のファンであり、楽曲「スペイン」が大好きです。これまでに多くの「スペイン」を聴いてきました。「スペイン」は音楽を演奏する皆さんが好む素晴らしい曲です。多くのミュージシャンが名曲「スペイン」をカバーしました。今回は名曲「スペイン」のカバーを中心にコラムを展開します。

■ 推薦アルバム:アル・ジャロウ 『ジス タイム』(1980年)

アル・ジャロウお得意の"スキャット唱法"をフューチャーした5枚目のアルバムでアルの大傑作!ジェイ・グレイドンがプロデュースしています。キーボーディストはラリー・ウィリアムズ。ドラマーは御大、スティーブ・ガット。アルバムフォトは写真界の巨匠、リチャード・アベドンが撮影。アルの何気ない一瞬を捉えています。ジェイ・グレイドンプロデュースの割りに煌びやかな音の印象はありません。「スペイン」の出来の良さがアルバム全体のパフォーマンスを引き上げています。

推薦曲:『スペイン』

名曲であり難曲であった「スペイン」に歌詞を付けて歌ったのがアル・ジャロウ。ジャズの名曲にはボーカルバージョンは多い。しかし、「スペイン」に歌詞を付けるとは誰も考えてはいませんでした。 難曲、「スペイン」のテーマ(キメ)は演奏が難しく、細かいパッセージで成り立っています。そこに歌詞を付け、歌うことは無理だろうとミュージシャン達は考えていたのでしょう。 オリジナル「スペイン」が発表されて以来、8年は誰もこの楽曲に歌詞を付ける人はいませんでした。キメ部分に歌詞を付ければ、かなりの早口になりますし、それを歌うのは無理があると誰もが考えていた筈です。しかし、アルは違いました。桁違いの歌唱技術がそれを可能にしたのです。リズミカルなアルボーカルの真骨頂をこの「スペイン」で聴くことができます。

「スペイン」の秀逸さはアルのボーカルに限ったことではありません。スティーブ・ガットのドラムも名演中の名演と云われていますし、ラリー・ウィリアムズのシンセサイサイザーソロも素晴らしい出来だと思います。ピアノソロやギターソロの名演は多くありますが、シンセサイザーソロの名演は余り聴くことはありません。元々シンセサイザーだけでプレイをするキーボーディストは少なく、シンセは楽曲の味付け的要素が強いからかもしれません。もともと鍵盤弾きのベースはピアノにある為、ソロにおいてシンセは使わず、ピアノを弾くプレイヤーが殆どです。シンセサイザーを使いこなし、ソロで唄えるプレイヤーは多くはありません。ラリー・ウィリアムズはミニモーグを使っていると思われますが、そのフレーズ、ベンディング、構成に至るまで完璧だと思います。

■ 推薦アルバム:渡辺香津美DUO、小曽根真『ダンディズム』(1998年)

ピアニスト、小曽根真を迎えたデュオアルバム。N.Y.で録音した全8曲を収録。

推薦曲:『スペイン』

イントロのロドリゴによるアランフェス協奏曲は割愛されている。日本を代表するプレイヤー2人による「スペイン」デュオ。キメのフレーズを少し複雑にした「スペイン」になっている。ジャズのデュオはお互いの技術が丸裸になるが、抑制の効いた両者のプレイは見事としか云い様がない。時には煽り、時には寄り添うデュオのお手本的プレイに圧倒される。日本人的な泣きが入る小曽根真のピアノソロ最終部は最高です。

■ 推薦アルバム:ミッシェル・カミロ&トマティート『スペイン』(2000年)

ミッシェル・カミロはジャズとクラシックの両分野で活躍するドミニカ共和国出身の人気ピアニスト。一方、トマティートは現代スパニッシュ・フラメンコ・ギターの最高峰のプレイヤー。2人による強力デュオ・アルバム。ラテンインスト部門でグラミー賞も受賞。超絶技巧のテクニックを持つ名手達の火花散る演奏が繰り広げられます。

推薦曲:『スペイン』

この「スペイン」はホワキン・ロドリゴの「アランフェス協奏曲」からのイントロから始まる。キメフレーズはチック・コリアオリジナルの「スペイン」とは譜割りニュアンスが異なる。カミロお得意のラテンフレイバー全開で、荒々しくゴリゴリとしたタッチのアドリブが展開される。一方、トマティートもカミロに負けない強力で驚速なアドリブを披露。息もつかせぬ2人のバトルが印象的だ。ちなみにトマティートは譜面を全く読まないそうで耳コピーのみ!一体、この人の脳内音楽環境はどうなっているのか、脳みその中を見てみたい気がします。

ありがとう!チック・コリア

名曲「スペイン」は様々な編成でミュージシャンにプレイされ、愛された楽曲です。チックの作り出したあの名リフは多くのミュージシャンを虜にし、難曲「スペイン」に向かわせました。楽器をプレイする人間にとって「スペイン」を演奏し、ピタリと合った時の快感は何ものにも代えがたいものがあります。ジャズといえば難しいリフや捻りの効いたフレーズが多い中、「スペイン」のリフは誰にも親しみやすく、覚えやすく、分かりやすく、且つ難しく、ジャズだったという奇跡的な音符が並んでいます。 「スペイン」には難しいジャズから誰にも愛されるジャズを創造したチックの想いが結晶になってキラキラと輝いています。


今回取り上げたミュージシャン、アルバム、推薦曲、使用鍵盤

  • アーティスト:チック・コリア、アル・ジャロウ、渡辺香津美、ミッシェル・カミロ、トマティートなど
  • アルバム:「ディス・タイム」「ダンディズム」「スペイン」
  • 曲名:「ランブル」「サイド・ウォーク」「キング・コックローチ」
  • 使用機材:フェンダー・ローズピアノ、ミニモーグ、アコースティックピアノなど

コラム「sound&person」は、皆様からの投稿によって成り立っています。
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音楽ライター / シンセ鍵盤卿

高校時代よりプログレシブロックの虜になり、大学入学と同時に軽音楽部に入部。キーボードを担当し、イエス、キャメル、四人囃子等のコピーバンドに参加。静岡の放送局に入社し、バンド活動を続ける。シンセサイザーの番組やニュース番組の音楽物、楽器リポート等を制作、また番組の音楽、選曲、SE ,ジングル制作等も担当。静岡県内のローランド、ヤマハ、鈴木楽器、河合楽器など楽器メーカーも取材多数。
富田勲、佐藤博、深町純、井上鑑、渡辺貞夫、マル・ウォルドロン、ゲイリー・バートン、小曽根真、本田俊之、渡辺香津美、村田陽一、上原ひろみ、デビッド・リンドレー、中村善郎、オルケスタ・デ・ラ・ルスなど(敬称略)、多くのミュージシャンを取材。
<好きな音楽>ジャズ、ボサノバ、フュージョン、プログレシブロック、Jポップ
<好きなミュージシャン>マイルス・デイビス、ビル・エバンス、ウェザーリポート、トム・ジョビン、ELP、ピンク・フロイド、イエス、キング・クリムゾン、佐藤博、村田陽一、中村善郎、松下誠、南佳孝等

 
 
 
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