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シンセサイザー鍵盤狂 漂流記 ~音楽を彩った電気鍵盤たちとシンセ名盤の数々~ その24

2021-01-04

テーマ:音楽ライターのコラム「sound&person」

新加入ギタリスト佐藤ミツルと新生四人囃子

前回はポリフォニックシンセサイザーの道を外れ、日本のロックバンド、四人囃子のセカンドアルバムとローランドモノフォニック(単音)シンセサイザー、SH-5のお話をしました。今回は森園勝敏脱退後の新加入ギタリスト、佐藤ミツルと新生四人囃子をテーマにしたコラムです。

セカンドアルバム『ゴールデン・ピクニックス』リリース直前の脱退

四人囃子の中心メンバー、ギタリストでありボーカリストの森園勝敏がセカンドアルバム制作後に脱退。森園は四人囃子の「顔」だっただけに大きなトピックとして扱われました。新しいギタリストには北海道出身の佐藤ミツルが参加をします。佐藤は森園とは全くタイプの異なるギタリトでありボーカリストでした。四人囃子は国内でプログレシブ・ロックバンドとして捉えられていました。しかし、前回のコラムで記したようにプログレシブロックの影響は受けているものの、必ずしもプログレシブロックを志向するバンドではありませんでした。セカンドアルバムまでは「泳ぐなネッシー」などプログレ的な楽曲はありましたが、サードアルバムからは長尺な楽曲は姿を消し、プログレ的制作アプローチから決別した印象があります。


■ サード・アルバム『プリンテット・ジェリー』(1977年)/ 四人囃子

賛否両論が巻き起こった四人囃子のサードアルバム。新加入のギタリストは北海道の「マーシャンロード」に在籍していた佐藤ミツル。佐藤は森園よりもロック色が強いギタリストであり、ボーカリストでした。佐藤の加入で四人囃子の世界観は大きく変容し、旧ファンの中には新しいアルバムに失望するファンも見られました。私もその1人でした。バンドメンバーと四人囃子はどうあるべきか?など、深夜まで議論をしたものです。しかし、幾度となくレコードに針を落とすことで新生四人囃子になじんでいく自分を発見しました。
アルバムの楽曲は後に名プロデューサーとして名を馳せるベーシスト、佐久間正英のペンによるものが多く、佐藤ミツルのボーカルも見事になじんでいます。
四人囃子は佐藤ミツルの加入で全く別のバントになったのだと思います。旧来のタッチを残す志向は無く、その辺りに新生四人囃子の矜持を感じます。これまでの四人囃子と異なる曲は森園勝敏の影を払拭した新生四人囃子からのメッセージとも受け取れます。

推薦曲:「ハレソラ」

イントロはマンドリンから始まる意外な展開。プロデューサー的感覚溢れる佐久間の曲だ。こういう部分にも佐久間のアイディアが反映されている。佐藤ミツルのボーカルも曲によくマッチしている。プログレシブロック的陰りなど微塵も感じられない。
「ハレソラ」は学生時代にコピーをした。中間部のシンセサイザーソロはローランドSH-5か?これまでの坂下のソロとは違い、テーマをスケール上で移動させ、面白い効果を出している。浦和の田島が原の屋外コンサートで四人囃子のライブを見た際、キーボードの坂下氏はハモンド上のSH-5でこのソロを弾いていました。私が見た数回の四人囃子ライブでは坂下氏がプロキーボーディストのマストアイテムであるミニモーグを使用しているのを見たことがなく、ローランドのSH-5がお気に入りだった様だ。CDのクレジットでもシンセサイザーと記されている為、どのような機種を使っているかは不明ですが、次作のアルバム『包』ではローランドSH-5とSH-7他ヤマハのシンセサイザーがクレジットされている。このソロもSH-5と思しき音がしています。

ローランドSH-5

■ 推薦盤『包』(1978年)/ 四人囃子

PAを万里の長城に見立てたジャケット、四人囃子4枚目のアルバムだ。音楽的には前作『プリンテット・ジェリー』の延長上に位置する。四人囃子はこのアルバムで完全なポップロックバンドになりました。ドラマーの岡井大二氏が語っていた「おもちゃ箱をひっくり返したような~」というタッチがなくなったと感じたのは僕だけではない筈。 四人囃子の持つプログレシブの匂いは英国のプログレとは異なるタッチで日本固有のものだったと思う。それが「おもちゃ箱をひっくり返した的」な遊び心やユーモアであった。そういう演出が上手かったのが四人囃子というバンドだったのだ。 カテゴライズされてしまったバンドの難しさをこのアルバムに思う。普通のポップロックバンドで勝負するのはいいが、自分たちのインセンティブを置き去りにした感が否めない。佐藤ミツルのボーカルは前作よりもこなれ、楽曲の解釈や表現力も上がっている。

推薦曲:「ファランドールみたいに」

この曲のエポックは坂下秀実のアコースティックピアノソロにある。四人囃子初の4ビートでビ・バップをベースにしたピアノソロを展開している。ギターソロを受ける形で4ビートになり、ジャジーなソロを聴いた時には目から鱗が落ちました。 ある意味、このアルバムで一番の遊び心はレコードジャケットと坂下氏のソロだったのかも知れません。


今回取り上げたミュージシャン、アルバム、推薦曲、使用鍵盤

  • アーティスト:四人囃子 / 坂下秀実、佐藤ミツル
  • アルバム:「プリンテット・ジェリー」「包」
  • 曲名:「ハレソラ」「ファランドールみたいに」
  • 使用楽器:ハモンド・オルガン、SH-5、SH-7、フェンダーローズ、アコースティックピアノ
 

コラム「sound&person」は、皆様からの投稿によって成り立っています。
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鍵盤狂

高校時代よりプログレシブロックの虜になり、大学入学と同時に軽音楽部に入部。キーボードを担当し、イエス、キャメル、四人囃子等のコピーバンドに参加。静岡の放送局に入社し、バンド活動を続ける。シンセサイザーの番組やニュース番組の音楽物、楽器リポート等を制作、また番組の音楽、選曲、SE ,ジングル制作等も担当。静岡県内のローランド、ヤマハ、鈴木楽器、河合楽器など楽器メーカーも取材多数。
富田勲、佐藤博、深町純、井上鑑、渡辺貞夫、マル・ウォルドロン、ゲイリー・バートン、小曽根真、本田俊之、渡辺香津美、村田陽一、上原ひろみ、デビッド・リンドレー、中村善郎、オルケスタ・デ・ラ・ルスなど(敬称略)、多くのミュージシャンを取材。
<好きな音楽>ジャズ、ボサノバ、フュージョン、プログレシブロック、Jポップ
<好きなミュージシャン>マイルス・デイビス、ビル・エバンス、ウェザーリポート、トム・ジョビン、ELP、ピンク・フロイド、イエス、キング・クリムゾン、佐藤博、村田陽一、中村善郎、松下誠、南佳孝等

 
 
 
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