みなさんこんにちは、サウンドハウス商品部の西田です。オーディオインターフェイスはこのDTM乱世、数多発売され、スタジオグレードモデルも様々販売されています。
そんな中、この春にSteinbergが満を持してフラッグシップモデル「AXR4T」をリリースしました。
今回は、Thunderbolt 2仕様の極めて高いスペックと拡張性を誇るこの機種について、特徴を見ていきましょう。
STEINBERG (スタインバーグ) / AXR4T オーディオインターフェイス
最大32bit/384kHz録音再生が可能
これまでのオーディオインターフェイスにも、32bit対応の製品は多くありましたが、AXR4Tは、32bitは32bitでも、従来の「浮動小数点」ではなく「整数」で処理しています。この違いはなんでしょうか。
まず32bit浮動小数点は、下図のとおりオーディオデータの処理としては、実は24bit整数と同じなのです。オーディオを表現するために24bitを使い、残りの8bitはそれ以外の演算に割いています。その演算分によって0dbを超えてもオーバーフローしないということが可能でした。しかしながら結局のところ、音声の表現力・再現性は、24bitと変わりません。これまで「24bitも32bitもあまり音が変わらない」と思っていた方がいるとしたら、それはある意味正解、ということになります。

24bit整数と32bit浮動小数点の実データと演算用データ イメージ図
ところが「32bit整数」にすると、オーディオのデータ処理を32bitのフル処理ができるわけです。これはどういうことかと言うと、これまで再現されていなかった8bit分、よりリアルに微細な表現が可能、というわけです。実際に音をくらべてみると、低域の締まり、高域の伸びを体感できます。

32bit整数の実データイメージ図
アナログ信号をデジタル信号へ変換(サンプリング)時に発生するノイズをエイリアス(折り返し)ノイズと呼びます。このノイズを防ぐフィルタを「アンチエイリアスフィルタ」と言います。これはローパスフィルタで、設定した周波数よりも高い周波数帯をカットしてくれる優れもの。サンプリング周波数を高く設定すると、周波数特性も向上するのと同時に、アンチエイリアスフィルタの周波数を可聴周波数帯以上に設定できるので、高音質かつノイズが少ない環境で制作が行えます。
つまり、サンプリングレートが384kHzに設定できるAXR4Tは、アンチエイリアスフィルタの周波数を、可聴周波数帯域よりも遥かに高く設定できるため、クリーンでピュアな録音環境を構築できるのです。
SILKエミュレーションを搭載したハイブリッド・マイクプリアンプ搭載
音の入り口であるプリアンプは、第一線の外部エンジニアの意見を交えながら開発したという、ヤマハの最新型デジタルミキサーと共通方式のハイブリッド・マイクプリアンプがなんと4基搭載。さらに、このプリアンプには「SILK(シルク)」というプロセッサーがエミュレーションされています。このSILKは、プロオーディオ界でその名を知らぬものはいない、Rupert Neve Designsが開発したプロセッサーで、倍音構成を変化させることによって、サウンドにきらめきや力強さを付加します。
このSILKの注目すべき点は、RedとBlueという2つのキャラクター。Blueは低域がふくよかになり、Redは中高域に元気が出てくる、という具合にかかります。しかもオン/オフだけではなく、Texture コントロールによりそのかかり具合も調整できるのが嬉しいところです。
クセのないピュアなサウンドが特徴のプリアンプに加え、SILKで自由に倍音を追加できるわけですから、マイクプリアンプを複数持っているのと同じ環境と言えます。個人の環境ではなかなか複数台のプリアンプを所有するのはスペースや予算からも難しいので、そういう意味ではAXR4Tはかなりコストパフォーマンスが高いと言えます。

SILK TEXTUREノブ
※アンチエイリアスフィルタ
アナログ信号をデジタル信号へ変換(サンプリング)時に発生するノイズをエイリアス(折り返し)ノイズ、このノイズを防ぐフィルタを「アンチエイリアスフィルタ」と言います。これはローパスフィルタで、設定した周波数よりも高い周波数帯をカットします。サンプリング周波数を高く設定すると、周波数特性も向上するのと同時に、アンチエイリアスフィルタの周波数を可聴周波数帯以上に設定できるので、高音質かつノイズが少ない環境で制作が行えます。

内蔵DSPによる高音質/レイテンシーフリーのレコーディング環境が実現
AXR4Tには内蔵DSP(エフェクト)が実装されています。そのメリットは、レイテンシーフリーでエフェクトのかけ録りやモニターがけができることです。しかもAXR4に同梱されているdspMixFx AXR アプリケーションによって、内蔵DSPミキサー/エフェクトを統合した形でコントロールできるので、作業に集中できます。さらにCubase PRO 10(2019/6/26 バージョンアップデート以降) では、新機能「エクステンション」を使うことにより、前述のSILKを含めたプリアンプの状態を、トラックのインスペクターから直接コントロールすることができ、リコールも可能です。
前述のSILKは「VCM テクノロジー」という、アナログ機器の抵抗やコンデンサーなどの素子レベル、回路の構成、そして振舞いまでを正確にモデリングした技術で再現されています。他にも「EQ601」「Compressor276」「REV-X」「SWEET SPOT MORPHING」という4つのDSPエフェクトが内蔵され、さらにはこの4つのVSTプラグインも同梱されています。


VCMエフェクト
充実の入出力と拡張性
AXR4Tの入力はハイブリッド・マイクプリアンプを装備したXLR/TRS コンボ入力が4チャンネル(うち2チャンネルはHI-Z対応)、TRSフォン入力が8チャンネルですが、Thunderbolt 2のデイジーチェーン接続により3台まで拡張可能なので、入力数をプロジェクトに合わせて拡張できます。さらにADAT、S/PDIF、AES/EBU と Word Clockとプロフェッショナルな環境に対応できる入出力も完備。そして2系統の独立ヘッドフォン出力、MIDI IN/OUTも装備し、パーソナルユースから大規模なプロジェクトスタジオまで、あらゆる目的にフィットします。

接続図例
AXR4TにはCubaseシリーズのエントリーバージョン「Cubase AI」が付属しているため、32bit整数/384kHzのクリアな音環境を、届いたその日から体験することができます。 (MySteinbergアカウントの作成が必要)
Cubase AIについて詳細は下記URLをチェック
●STEINBERG Cubase AI詳細ページ
https://new.steinberg.net/ja/cubase/ai/

「もっと表現力が高いサウンドを目指している」「とにかく高音質で録りたい」「いろいろなサウンドバリエーションが欲しい」と考えているクリエーター/エンジニアで、オーディオインターフェイス購入を検討しているという方は、この次世代オーディオインターフェイス「AXR4T」を候補に入れてみてはいかがでしょうか。