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シンセサイザー鍵盤狂漂流記 その181 ~追悼 デビッド・サンボーン~

2024-05-25

テーマ:音楽ライターのコラム「sound&person」, 音楽全般

バンドメンバーからのLINEでデビッド・サンボーンの訃報を知りました。頭の芯がキーンとなり、なんとも言えない気持ちになりました。
享年78。ライブ映像などを観るとまだまだお元気であったという認識でした。心よりご冥福をお祈り申し上げます。最高のサックスプレイヤーによる新たな演奏はもう聴くことができなくなってしました。本当に残念でなりません。
デビッド・サンボーンのエピソードとして知られているのは幼少の頃に小児麻痺にかかりドクターの勧めでリハビリテーションを兼ねてサックスを始めたという。10代半ばには著名ギタリストと共演するなど、その才覚は抜きん出ていたといいます。

私が初めてデビッド・サンボーンを意識したのは多分、マイケル・フランクスのセカンドアルバム『スリーピング・ジプシー』を聴いた時だったと思います。40年以上も前の事です。今やポップスソングとしてスタンダードとなった「アントニオの歌」。ブラジルの大作曲家であるアントニオ・カルロス・ジョビンに捧げられた歌です。
洗練されたポップソングの演奏に乗るアルト・サックスの音色とフレージングは素晴らしく、私はレコーディング・メンバーのクレジットを探しました。そこにデビッド・サンボーンというプレイヤーの名が記されていました。アルバム『スリーピング・ジプシー』ではサンボーンの他にもテナー・サックス奏者のマイケル・ブレッカーも演奏していました。
この2人のサックスプレイヤーの演奏から、私は楽曲中の「サックスソロ」というのを意識するようになりました。2人ともジャズのフィールドにおいてはトップクラスの演奏家でしたが他のアーティストのアルバムでもソロを披露し、楽曲に寄与するそのパフォーマンス高さは楽曲自体の価値を更に押し上げていました。そしてサンボーンの切なく歌うアルト・サックスは多くの音楽ファンを魅了しました。

私は現在、電気ジャズ系のバンドをやっていますが、アルト・サックス奏者Tさんがサンボーン好きでサンボーンの曲も演奏していました。そのアルト・サックス奏者も残念ながら昨年の6月に亡くなりました。サンボーンの訃報に接し、バンドで一緒に演奏していたTさんを思い出しました。この追悼、サンボーン編はTさんと一緒に演奏したサンボーンの楽曲を中心に書いていければと思っています。
私の音楽の視点を広げてくれたデビッド・サンボーン、私達バンドメンバーとTさんとの演奏機会を与えてくれたサンボーンという音楽家に感謝しつつ…。

■ 推薦アルバム:デビッド・サンボーン『Straight to the Heart』(1984年)

1984年リリース、デビッド・サンボーンの大傑作アルバム。第28回のグラミー賞を最優秀ジャズ・フュージョン・パフォーマンス部門で獲得している。
このアルバムはスタジオ・ライブという珍しいスタイルで録音されている。メンバーはマーカス・ミラー(Bass)、ドン・グロウニック(Key)、ハイラム・ブロック(G)、バディ・ウイリアムス(Dr)、ラルフ・マクドナルド(Per)というサンボーン・バンド最強の面子といえる。音的には各プレイヤーとも出しゃばることなく、ツボを押さえた演奏をしている。
マーカス・ミラーとバディ・ウイリアムスのリズムセクションはサンボーン・バンドではナンバーワンだと私は思っている。
そんな理想的なバンド演奏の上を自由に泳ぐがごとくサンボーンのアルト・サックスが乗る。バンドユニットとしての完璧な世界が提示されている。

推薦曲:「ラン・フォー・カバー」

数多いマーカス・ミラーの曲の中でトップクラスに優れた名曲である。冒頭の抑えの効いたベースソロからイントロ、テーマへなだれ込むリフや展開のカッコよさはマーカスの曲の中でも群を抜いている。この楽曲は1980年のサンボーンのアルバムでも『夢魔』にクレジットされている。サンボーンのライブだけでなく東京ジャズなどでもマーカス・ミラーのバンドは好んでこの曲を取り上げていた。数年前にマーカス・ミラーが静岡に来た時にも「ラン・フォー・カバー」は演奏されていた。多分、お気に入りなのだろう。デビッド・サンボーンやマーカス・ミラーのさまざまなバンドでもアレンジや冒頭のキメを変えて演奏したりしているが、このアルバムバージョンがベスト。
プロフェット5とフェンダーローズピアノのコードワークの上をシーケンスフレーズが飛び交い、マーカスのスラップベースが唸り、サビのコード進行の上にサンボーンの吹く美しいメロディが乗る…。演奏するときに本当に良くできた曲だと感心していた。

■ 推薦アルバム:デビッド・サンボーン&ボブ・ジェームス『ダブル・ビジョン』(1986年)

このアルバムはデビッド・サンボーン、ボブ・ジェームス2人によるクレジットのアルバム。このアルバムも第29回グラミー賞を最優秀ジャズ・フュージョン・パフォーマンス部門で獲得している。
ボブ・ジェームスの抑制されたアレンジの下でデビッド・サンボーンのアルトが響きわたる名盤。

推薦曲:「マプート」

この曲もバンドでいつも演奏していた。マットに展開する楽曲とは裏腹にサンボーンのサックスが切なく歌う様はある意味サンボーンのためだけにあるのではないのかと感じたほどだ。サンボーンの音色、フレージングの素晴らしさはこんなシンプルな曲にも生かされている。
実際、演奏していても知らぬ間に盛り上がっているというなにかマジックを感じる楽曲だといつも感じていた。

■ 推薦アルバム:デビッド・サンボーン『チェンジ・オブ・ハート』(1987年)

4人のプロデューサーを起用して制作された87年リリースの大ヒット作。サンボーン独特のブーミーで切なく響くアルト・サックスはいつも通り。アルバムカラーは当時の音楽性を意識したジャズというよりもアーバンな香り高いフュージョンに傾いた内容。多くのリスナーから支持を受け、サンボーン・ミュージックというブランドのすそ野は拡大していった。このアルバムでも「シカゴ・ソング」はグラミー賞を受賞している。
面子はデビッド・サンボーン(as)、ハイラム・ブロック、ヒュー・マクラッケン、カルロス・リオス(g)、マーカス・ミラー(b,key)、アンソニー・ジャクソン(b)、ドン・グロウニック(p)、フィリップ・セス(key)、ロブ・マウンジー、バーナード・ライト(syn)、スティーヴ・ガッド、スティーヴ・フェローン、ジョン・ロビンソン(ds)、ポウリーニョ・ダ・コスタ(perc) といった文句のつけようのないメンバーが花を添えている。

推薦曲:「シカゴ・ソング」

この楽曲もバンドのアルト奏者が亡くなる寸前まで演奏していた。実際にコードが分かればそこまで難解な曲ではなく、ノリを意識して演奏した。
サンボーンのアルトはこの短いフレーズにこそ存在感があり、アドリブプレイにもワン&オンリーな佇まいを見せている。


今回取り上げたミュージシャン、アルバム、推薦曲

  • アーティスト:デビッド・サンボーン、マーカス・ミラー、ドン・グロウニック、バディ・ウイリアムス、ハイラム・ブロックなど
  • アルバム:『Straight to the Heart』『ダブル・ビジョン』『チェンジ・オブ・ハート』
  • 推薦曲:「ラン・フォー・カバー」「マプート」「シカゴ・ソング」

コラム「sound&person」は、皆様からの投稿によって成り立っています。
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鍵盤狂

高校時代よりプログレシブロックの虜になり、大学入学と同時に軽音楽部に入部。キーボードを担当し、イエス、キャメル、四人囃子等のコピーバンドに参加。静岡の放送局に入社し、バンド活動を続ける。シンセサイザーの番組やニュース番組の音楽物、楽器リポート等を制作、また番組の音楽、選曲、SE ,ジングル制作等も担当。静岡県内のローランド、ヤマハ、鈴木楽器、河合楽器など楽器メーカーも取材多数。
富田勲、佐藤博、深町純、井上鑑、渡辺貞夫、マル・ウォルドロン、ゲイリー・バートン、小曽根真、本田俊之、渡辺香津美、村田陽一、上原ひろみ、デビッド・リンドレー、中村善郎、オルケスタ・デ・ラ・ルスなど(敬称略)、多くのミュージシャンを取材。
<好きな音楽>ジャズ、ボサノバ、フュージョン、プログレシブロック、Jポップ
<好きなミュージシャン>マイルス・デイビス、ビル・エバンス、ウェザーリポート、トム・ジョビン、ELP、ピンク・フロイド、イエス、キング・クリムゾン、佐藤博、村田陽一、中村善郎、松下誠、南佳孝等

 
 
 

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