初めて買った SX のベース(著者アイコンのものです)を長いこと改造しつつ使っていたのですが、自作したピックガードが取れてしまう事故が。
さらにはネック周辺にも謎の汚れが浮いたりしてきていたので、今回はいっそオーバーホールしてしまおう、と修理と改造に乗り出しました。
その前にこのベースの仕様について簡単に説明しておきます。
SX SWB1 は Warwick Streamer Jazzman のコピータイプで、斜めにマウントされたフロントシングルや角度のついたペグの配列などは継承しているものの、ブリッジが安価なものに変更されていたり、ノブの配置が異なる、などの細かな差異があります。
4 弦、5 弦の 2 種とナチュラルマホガニー、トランスペアレントワインレッドとグロスブラックの 3 色がラインナップされています。
初期状態で 9V 駆動のアクティブサーキットが搭載されており、Vol、Mix、Treble、Bassの 4 ノブでコントロールすることができます。
現状の不満を洗い出してみると、
- 初期から積んであるブランド不明のピックアップが弱い。フロントの出力不足。
- 交換済みのプリアンプの効きが強すぎる。
- サテンのネックに艶が出ていて滑らない。
- 全体的に汚れや垢が目立つ。
など、いくつかの問題点が上がってきます。
配線系統はバックプレートからのアクセスが可能なので比較的簡単に交換できますが、ネックはリフィニッシュなどしなければどうにもならないでしょう。
サテンフィニッシュは長く使うと艶が出てしまうのはよく知られたことですし、今回はここにオイルフィニッシュを施すことにします。
というわけで今回はクリーニングとリフィニッシュ、配線のオールカスタムを行います。 とりあえず電装を剥ぎます。弦を緩めてピックアップも外しましょう。 このサーキット(1500 円)はもう使うつもりはないのでケーブルからぶちぶち切っていきま す。 ポットだけ回収して役立ってもらいましょう。

ネック裏の塗装を剥がします。
再整形中にシェイプの形状を確認したりすることがありますが、個人的な好みとして弦があった方が演奏時と同じようなネックの状態にできるため弦を張ったまま再整形していきます。

先ずは 60 番。一気に落としていきます。
剥がしている最中に木地に塗装の斑点が出ることがありますが、これは製造時にネックにできたへこみや打痕に塗装が溜まっている場所です。
これを全て消そうとするとネックが薄くなってしまいますので、適当に剥がせたら終わりにして180番に移行します。
下地の色は普通の薄い褐色ですね。
セカンドオーナー品で、少なくとも 4 年以上は使っているので真正マホならそこそこ濃い褐色に変化しているはずですが、そうではないということは代用材でしょう。
木目からすると、センダン科ですらないレッドラワンの可能性が高そうです。
塗装削りでけば立った木を滑らかに削っていきます。
写真では分かりづらいですが、180 番に移った時点では滑りが悪かったのがすぐに改善されます。
導管に入った粉は刷毛で落とします。水拭きはしないように。絶対に乾拭きにします。
木部の時点では本来やる必要はありませんが、400 番でも磨いておきます。
また刷毛で粉を払い、塗装に移ります。
XOTIC ( エキゾティック ) / XP-OG1
ウエスに Xotic Oil Gel を付け、手早く塗りこみます。
瓶には 4 時間放置することとありますが、もとからかなりの速乾性ので、多めに塗って下地固め→薄めで数回連続塗り、という手法で比較的厚めの塗膜を形成させます。
ちなみに液自体は結構ニス臭いです。可燃性ですし、ちゃんと換気はしましょうね。

3 度塗りののち、800 番で磨いたネックがこちら。
多少番手が低い方がさらっとしたさわり心地になりますが、塗装も剥ぎやすくなってしまうので注意しながら磨きましょう。
元のサテンが残った部分にも塗装してみましたが、落ち着いた艶が出ているので結構良さそうです。
とはいえセットネックのベースを完全に剥いだり塗装したりは大変なので、打痕のタッチアップと気になる艶のムラにだけ対応することにしましょう。
ちなみにサテン塗装は塗装後の磨きを省いて凹凸を残すことで艶消しにしており、それゆえ磨いたりワックスを掛けると艶が出て艶消しには戻らなくなります。
再塗装以外の手法で凹凸を戻すには弱いサンドブラストなどが有効でしょうが、実証は今のところ出来ていません。
タッチアップには面相筆か綿棒を用います。
使い捨てられる綿棒は便利ですが、毛羽立った埃が残ることがあります。
面相筆は綿棒より綺麗に載せられますが、塗装後の洗浄が面倒です。
打痕の窪みにのみ塗料を乗せ、厚塗りしつつ垂れないよう慎重に塗り重ねていきます。
Xotic のジェルオイルにはほぼ着色効果はないので、ここのみワトコオイルを調色して使用しています。
24時間乾燥させます。清掃に入りましょう。

以前(と言ってもかなり初期ですが)紹介したように、精製水とアルコール、灯油が私の清掃の主武器になります。
もちろん楽器ごとに合う合わないありますので、ただ鵜呑みにはしないよう。
今回は指板以外に特段目立つ汚れもなさそうです。
木目に入った粉末や垢はマスキングテープに粘着させて取り除き、歯ブラシで掻き出します。
フレット際の錆びだかなんだかよく分からない汚れは細目の紙やすりで落としてしまいました。ガチガチの塗装指板だからこそできる荒技です。
一回アルコールで拭き、皮脂や切削粉などを落として乾燥させ、再度オイルを塗っていきます。
塗りっぱなしだとほぼ滑らない塗膜になるので、布に取って擦りこみ、さらに磨いておきます。
こうすることでレモンオイルやオレンジオイルを完全に不要なものとし、後々のクリーニングやネック調整を簡単にすることができます。
ボディ周りのカスタムはここら辺で終わりにしましょう。電装を弄りまわします。
現状、このベースだけが突出して出力が高く、エフェクターやアンプとの兼ね合いも考えるとパッシブに変更した方が良さそうでした。
500k-B ポットを4つ、Sprague Orange Drop の 0.033μF と 0.047μF を用意してプレベの配線を2セット組んでいきます。

シンプルでいいですね。 パーツを全て付け直しまして、弦を張り、各調整を済ませて完成です。
ネックのリフィニッシュと各部クリーニング、配線のカスタマイズを行いました。 またどこかですぐに改造すると思いますが、今はこれで問題ないでしょう。
今回はここまで。
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