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シンセサイザー鍵盤狂 漂流記  ~音楽を彩った電気鍵盤たちとシンセ名盤の数々~その20

2020-11-19

テーマ:sound&person

オーバーハイムシンセサイザーの機能と特徴

オーバーハイムシンゼサイザーはトム・オーバーハイムにより開発され、プロフェット5同様、多くのミュージシャンのファースト・チョイスでした。オーバーハイムの特徴といえばその音色にあります。一聴して分かる粘りがあり野太く存在感のある音はウエザー・リポートのキーボーディスト、ジョー・ザビヌルやパット・メセニーグループのライル・メイズなど、多くのキーボーディストから支持を得ました。当時、金額的には100万円を優に超えていた為、プロ仕様の機材であり、アマチュアにとっては高嶺の花でした。

パット・メセニーグループ / キーボードプレイヤー:ライル・メイズ

パット・メセニーグループ(Pat Metheny Group)は1978年にファースト・アルバム『想い出のサン・ロレンツォ(Pat Metheny Group)』を発表以来、多くのアルバムをリリースしています。そのパット・メセニーグループを支えたのがキーボーディストのライル・メイズでした。メイズはビル・エバンスを志向するジャズ・ピアニストでシンセサイザーは楽曲のアンサンブルやテーマなど曲の骨格となる部分で使用しています。メイズは大学時代にビッグバンドの楽曲がグラミー賞にノミネートされています。彼の頭の中にはシンセサイザーを使ったオーケストレーションが構築されていたのではないかと想像します。しかし、メイズのソロ、アドリブはピアノのみでエバンスばりの透明感あるソロをプレイします。私もパット・メセニーグループのライブを数回見ていますが、アコースティック・ピアノを中心にカーツェルシンセサイザー、オーバーハイム4ボイス、ローランドJX-10など多くのシンセを操る姿は圧巻の一言でした。

オーバーハイム 8ボイス

オーバーハイム4ボイスを弾くライル・メイズ


■ 推薦アルバム:『想い出のサン・ロレンツォ』(1978年)

パット・メセニーグループ初期のヒット作『想い出のサン・ロレンツォ(San Lorenzo)』です。ライル・メイズとの初共演のアルバムでベースはマーク・イーガン、ドラムはダン・ゴット・リーブのカルテットです。このアルバムを聴くと4人で出しているサウンドとは思えません。しかし、このバンドはライブでもスタジオ録音以上のクオリティでこれらの曲を演奏します。私はパット・メセニーグループのライブを3回見ていますが、どのライブも完璧で高い技術を持ったスーパーバンドです。私が見たライブではライル・メイズはアコースティックピアノ、オーバーハイムシンセサイザー、ローランドスーパーJXシンセサイーザー、カーツェルK2500、オートハープなどを演奏していました。また、アルバムには彼らのライブで定番となっている「フェイズ・ダンス(Phase Dance)」「想い出のサン・ロレンツォ」が含まれています。メセニーグループのこのアルバムを聴くとすでにバンドが高いレベルで完成されていたことが分かります。前述の2曲がその象徴であると考えています。
メセニーグループはストレート・アヘッドな4ビートジャズを演奏するバンドではありません。しかし、彼らの演奏を聞けば明らかにビ・バップなどストレートアヘッドなジャズを消化した演奏であることが分かります。実際にメセニーはロイ・ヘインズ(dr)、デイブ・ホランド(B)と共演し、マイルス・デイビスの「ソラー(Solar)」やスタンダードの名曲「オール・ザ・シングス・ユー・アー(All the Things You Are)」などバリバリな4ビートを演奏していますし、ライル・メイズも彼のソロ・アルバムで4ビートジャズがベースになっている曲を演奏しています。
パット・メセニーグループはあくまでメセニーグループの音楽を演奏する場であり、ここで展開する音楽もジャズは1つの素材に過ぎません。グループとしての曲作りの能力もこの時点で完成されています。そういう意味ではパット・メセニーグループは作曲能力と複雑な楽曲を再現する演奏能力に長けたスーパーバンドであることをこのファースト・アルバムは証明しています。

推薦曲:「フェイズ・ダンス」

パット・メセニーグループの代表曲である「フェイズ・ダンス」を最初に聞いた時、この音楽は一体どこに属するものだろうと思いました。その理由はジャズにしてはとても耳当たりが良かったからです。カテゴリーはジャズに属しながら、4ビートを全面に出すわけでもなく、とてもポップで聞きやすく、分かりやすい曲だったからです。しかし、ジャズ的イディオムはところどころに顔を出します。メセニーグループ初期のライブでは「ハウ・インセンシティブ(How Insensitive)」などジャズマンが好むボサノバの名曲を取り上げ、ジャジィに仕上げたりもしています。
キーボーディストのライル・メイズは「フェイズ・ダンス」のラストを導くためのテーマをオーバーハイム4ボイスで弾いています。少しのポルタメントを施し、特にシンセサイズしないオーバーハイム波形むき出しの音が印象的です。オーバーハイムの良さが分かるオーバーハイムオシレーター典型的な音を聞くことができます。

■ 推薦アルバム:『心象風景 ミラー・オブ・ザ・ハーツ(Lyle Mays)』(1986年)

ライル・メイズ(Lyle Mays)のファースト・ソロアルバム。3枚目のアルバムはアコースティックピアノトリオへの傾倒が見られるが、このアルバムではパット・メセニーグループを意識した構成や音作りになっています。

推薦曲:「ハイランド・エア(Highland Aire)」

パット・メセニーグループを思わせる曲でライルの特許ともいえるオーバーハイム4ボイスの音を聴くことができる。ライルのインタビューによると「学校で生徒が縦笛を合奏した際、調子外れの子供がいて全員のピッチが揃わない状況をシミュレートした音」がまさにライル真骨頂といえるオーバーハイムの音。なんとも牧歌的な温かな音で、この音のファンは多くいる筈です。勿論、私もその1人です。


今回取り上げたミュージシャン、アルバム、推薦曲、使用鍵盤

  • アーティスト:ライル・メイズ(パット・メセニーグループ)
  • アルバム:「想い出のサン・ロレンツォ」「心象風景」
  • 曲名:「フェイズ・ダンス」「ハイランド・エア」
  • 使用楽器:オーバーハイム4ボイス
 

コラム「sound&person」は、皆様からの投稿によって成り立っています。
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音楽ライター / シンセ鍵盤卿

高校時代よりプログレシブロックの虜になり、大学入学と同時に軽音楽部に入部。キーボードを担当し、イエス、キャメル、四人囃子等のコピーバンドに参加。静岡の放送局に入社し、バンド活動を続ける。シンセサイザーの番組やニュース番組の音楽物、楽器リポート等を制作、また番組の音楽、選曲、SE ,ジングル制作等も担当。静岡県内のローランド、ヤマハ、鈴木楽器、河合楽器など楽器メーカーも取材多数。
富田勲、佐藤博、深町純、井上鑑、渡辺貞夫、マル・ウォルドロン、ゲイリー・バートン、小曽根真、本田俊之、渡辺香津美、村田陽一、上原ひろみ、デビッド・リンドレー、中村善郎、オルケスタ・デ・ラ・ルスなど(敬称略)、多くのミュージシャンを取材。
<好きな音楽>ジャズ、ボサノバ、フュージョン、プログレシブロック、Jポップ
<好きなミュージシャン>マイルス・デイビス、ビル・エバンス、ウェザーリポート、トム・ジョビン、ELP、ピンク・フロイド、イエス、キング・クリムゾン、佐藤博、村田陽一、中村善郎、松下誠、南佳孝等

 
 
 
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