オーバーハイムシンセサイザーの機能と特徴
オーバーハイムシンセサイザーはトム・オーバーハイムにより開発されました。このシンセサイザーはプロフェット5同様、多くのミュージシャンから愛され、多くのレコーディングで活躍しました。先日他界したヴァン・ヘイレン、「ジャンプ」のイントロの音。あの音がオーバーハイムを象徴する音色といえます。粘りのある野太く存在感のある音はウエザー・リポートのキーボーディスト、ジョーザ・ザビヌルをはじめ、パット・メセニー・グループのライル・メイズなど多くのミュージシャンのファースト・チョイスでした。
オーバーハイムは4ボイス、8ボイス、OB-X、OB-Xa、OB-8、オーバーハイムXPANDER、MATRIX-12など、アナログシンセの名機を輩出しました。現在もシーケンシャルサーキットより、OB-6が発売されています。 私もXpander(648,000円)を所有していました。Xpanderは6ボイスで鍵盤が付いていない音源モジュールタイプのシンセでした。ジャンプの音もライル・メイズの音も出せました。Xpanderの音は野太く、音圧があり、バンド内でも他の楽器に埋もれることのない圧倒的な存在感を持っていました。今でもシンセを選択する際はXpanderの音が1つの基準になっています。モジュレーション機能が豊富で私は使いこなすことができませんでした。オシレーターがDCO(デジタル・コントロールド・オシレーター)のMATRIX-6も所有していました。オーバーハイムの廉価版シンセ(価格298,000円)でしたが、このシンセもXpanderよりは若干音は細めでしたが、いい音がしていました。アナログシンセサイザーで私が一番好きなブランドは「オーバーハイム」です。

オーバーハイム 8ボイス

Oberheim Xpander, CC BY-SA 3.0 (Wikipediaより引用)
ウェザー・リポート(Weather Report)/キーボードプレイヤー:ジョー・ザビヌル
ジョー・ザビヌルはオーストリア出身のキーボーディストでキャノンボール・アダレイ(SAX)のグループからそのキャリアをスタートします。在籍時に自作曲「マーシー・マーシー・マーシー」がビルボード11位、ソウルチャート2位という大ヒットを記録します。その後、マイルス・デイビスの「イン・ア・サイレント・ウェイ(In a Silent Way)」「ビッチェズ・ブリュー(Bitches Brew)」に参加。1970年、最高の電気ジャズバンド、ウェザー・リポートをウェイン・ショーターと共に結成します。
ザビヌルはオーバーハイムとアープの愛好家で素晴らしい曲を作り続けました。私は彼の書いた書籍を読みました。 「音楽大学はピアノの弾き方は教えてくれるが、どう弾けばいいのかを教えてはくれない」という言葉が印象に残っています。
ピアノをどう弾くのか、シンセサイザーで何をするのかなど、楽器がどうあるべきかを分かっていたザビヌルらしいコメントです。電気楽器を嫌い、アコースティックなジャズに行き着くミュージシャンが多い中、ザビヌルはシンセサイザーにこだわり続けました。ザビヌルにとってアコースティックか電気かというカテゴリーは問題ではなく、「シンセサイザーの音」が必要だったのです。それがたまたま、電気楽器だった…ザビヌルはシンセサイザーをアコースティック楽器と同一線上に捉えていと私は考えています。
■ 推薦アルバム:『ヘビー・ウェザー(Heavy Weather)』(1977年)

ウェザー・リポート8枚目のアルバム。ウェザーの最高傑作にして、グループ最大のヒット作。『ダウン・ビート』誌で1977年、ジャズ部門の「アルバム・オブ・ザ・イヤー」を獲得。ベーシスト、ジャコ・パストリアスが全面的に参加し、ピーター・アースキンとのウェザー史上最強のリズム体が出来上がった。「バードランド(Birdland)」「お前のしるし(A Remark You Made)」「ティーン・タウン(Teen Town)」「ハヴォナ(Havona)」など名曲が揃っている。
推薦曲:「バードランド」
ニューヨーク、マンハッタンのジャズクラブ、「バードランド」をタイトルにした電気ジャズ史上に残る名曲。冒頭のシンセサイザーによる印象的ベースラインをオーバーハイム8ボイスが奏でる。まさにこの音こそが「オーバーハイムの音」といっていいだろう。
その他にもブラス系の音など、いたるところでオーバーハイムが大活躍している。私も1980年、ウェザー・リポート来日の際、渋谷公会堂でその音を耳にしました。ジャコの圧倒的存在感に加え、ザビヌルの音はUKのエディ・ジョブソンが作る深くエフェクトがかかった音とは違い、ドライ(エフェクトはあまりかかっていない状態)で個々のシンセサイザーの特性がよく分かりました。その圧倒的な音圧は今でも忘れることができません。
もう1つのハイライトはバードランドの後半、オーバーハイムシンセを左手でテーマを弾きながら右手で高速アドリブを展開する部分でした。このアドリブはスタジオ盤でもライブ盤でも聴くことができます。
今回取り上げたミュージシャン、アルバム、推薦曲、使用鍵盤
- アーティスト:ジョー・ザビヌル(ウェザー・リポート)
- アルバム:「ヘビー・ウェザー」
- 曲名:「バードランド」
- 使用楽器:オーバーハイム8ボイスシンセサイザー
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