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シンセサイザー鍵盤狂 漂流記 ~音楽を彩った電気鍵盤たちとシンセ名盤の数々~ その19

2020-11-10

テーマ:音楽ライターのコラム「sound&person」

オーバーハイムシンセサイザーの機能と特徴

オーバーハイムシンセサイザーはトム・オーバーハイムにより開発されました。このシンセサイザーはプロフェット5同様、多くのミュージシャンから愛され、多くのレコーディングで活躍しました。先日他界したヴァン・ヘイレン、「ジャンプ」のイントロの音。あの音がオーバーハイムを象徴する音色といえます。粘りのある野太く存在感のある音はウエザー・リポートのキーボーディスト、ジョーザ・ザビヌルをはじめ、パット・メセニー・グループのライル・メイズなど多くのミュージシャンのファースト・チョイスでした。
オーバーハイムは4ボイス、8ボイス、OB-X、OB-Xa、OB-8、オーバーハイムXPANDER、MATRIX-12など、アナログシンセの名機を輩出しました。現在もシーケンシャルサーキットより、OB-6が発売されています。 私もXpander(648,000円)を所有していました。Xpanderは6ボイスで鍵盤が付いていない音源モジュールタイプのシンセでした。ジャンプの音もライル・メイズの音も出せました。Xpanderの音は野太く、音圧があり、バンド内でも他の楽器に埋もれることのない圧倒的な存在感を持っていました。今でもシンセを選択する際はXpanderの音が1つの基準になっています。モジュレーション機能が豊富で私は使いこなすことができませんでした。オシレーターがDCO(デジタル・コントロールド・オシレーター)のMATRIX-6も所有していました。オーバーハイムの廉価版シンセ(価格298,000円)でしたが、このシンセもXpanderよりは若干音は細めでしたが、いい音がしていました。アナログシンセサイザーで私が一番好きなブランドは「オーバーハイム」です。 

オーバーハイム 8ボイス

Oberheim Xpander, CC BY-SA 3.0 (Wikipediaより引用)


ウェザー・リポート(Weather Report)/キーボードプレイヤー:ジョー・ザビヌル

ジョー・ザビヌルはオーストリア出身のキーボーディストでキャノンボール・アダレイ(SAX)のグループからそのキャリアをスタートします。在籍時に自作曲「マーシー・マーシー・マーシー」がビルボード11位、ソウルチャート2位という大ヒットを記録します。その後、マイルス・デイビスの「イン・ア・サイレント・ウェイ(In a Silent Way)」「ビッチェズ・ブリュー(Bitches Brew)」に参加。1970年、最高の電気ジャズバンド、ウェザー・リポートをウェイン・ショーターと共に結成します。
ザビヌルはオーバーハイムとアープの愛好家で素晴らしい曲を作り続けました。私は彼の書いた書籍を読みました。 「音楽大学はピアノの弾き方は教えてくれるが、どう弾けばいいのかを教えてはくれない」という言葉が印象に残っています。
ピアノをどう弾くのか、シンセサイザーで何をするのかなど、楽器がどうあるべきかを分かっていたザビヌルらしいコメントです。電気楽器を嫌い、アコースティックなジャズに行き着くミュージシャンが多い中、ザビヌルはシンセサイザーにこだわり続けました。ザビヌルにとってアコースティックか電気かというカテゴリーは問題ではなく、「シンセサイザーの音」が必要だったのです。それがたまたま、電気楽器だった…ザビヌルはシンセサイザーをアコースティック楽器と同一線上に捉えていと私は考えています。

■ 推薦アルバム:『ヘビー・ウェザー(Heavy Weather)』(1977年)

ウェザー・リポート8枚目のアルバム。ウェザーの最高傑作にして、グループ最大のヒット作。『ダウン・ビート』誌で1977年、ジャズ部門の「アルバム・オブ・ザ・イヤー」を獲得。ベーシスト、ジャコ・パストリアスが全面的に参加し、ピーター・アースキンとのウェザー史上最強のリズム体が出来上がった。「バードランド(Birdland)」「お前のしるし(A Remark You Made)」「ティーン・タウン(Teen Town)」「ハヴォナ(Havona)」など名曲が揃っている。

推薦曲:「バードランド」

ニューヨーク、マンハッタンのジャズクラブ、「バードランド」をタイトルにした電気ジャズ史上に残る名曲。冒頭のシンセサイザーによる印象的ベースラインをオーバーハイム8ボイスが奏でる。まさにこの音こそが「オーバーハイムの音」といっていいだろう。
その他にもブラス系の音など、いたるところでオーバーハイムが大活躍している。
私も1980年、ウェザー・リポート来日の際、渋谷公会堂でその音を耳にしました。ジャコの圧倒的存在感に加え、ザビヌルの音はUKのエディ・ジョブソンが作る深くエフェクトがかかった音とは違い、ドライ(エフェクトはあまりかかっていない状態)で個々のシンセサイザーの特性がよく分かりました。その圧倒的な音圧は今でも忘れることができません。
もう1つのハイライトはバードランドの後半、オーバーハイムシンセを左手でテーマを弾きながら右手で高速アドリブを展開する部分でした。このアドリブはスタジオ盤でもライブ盤でも聴くことができます。


今回取り上げたミュージシャン、アルバム、推薦曲、使用鍵盤

  • アーティスト:ジョー・ザビヌル(ウェザー・リポート)
  • アルバム:「ヘビー・ウェザー」
  • 曲名:「バードランド」
  • 使用楽器:オーバーハイム8ボイスシンセサイザー
 

コラム「sound&person」は、皆様からの投稿によって成り立っています。
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鍵盤狂

高校時代よりプログレシブロックの虜になり、大学入学と同時に軽音楽部に入部。キーボードを担当し、イエス、キャメル、四人囃子等のコピーバンドに参加。静岡の放送局に入社し、バンド活動を続ける。シンセサイザーの番組やニュース番組の音楽物、楽器リポート等を制作、また番組の音楽、選曲、SE ,ジングル制作等も担当。静岡県内のローランド、ヤマハ、鈴木楽器、河合楽器など楽器メーカーも取材多数。
富田勲、佐藤博、深町純、井上鑑、渡辺貞夫、マル・ウォルドロン、ゲイリー・バートン、小曽根真、本田俊之、渡辺香津美、村田陽一、上原ひろみ、デビッド・リンドレー、中村善郎、オルケスタ・デ・ラ・ルスなど(敬称略)、多くのミュージシャンを取材。
<好きな音楽>ジャズ、ボサノバ、フュージョン、プログレシブロック、Jポップ
<好きなミュージシャン>マイルス・デイビス、ビル・エバンス、ウェザーリポート、トム・ジョビン、ELP、ピンク・フロイド、イエス、キング・クリムゾン、佐藤博、村田陽一、中村善郎、松下誠、南佳孝等

 
 
 
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