今回はQSCが満を持して投入した期待の新製品、3ウェイコラムスピーカー「KC12」を実際に使用してみました。細かな設定や実際に音を出してみての感想など、使用感を交えて本機の魅力をご紹介していきます。
まず、組み立ててみて思ったことは「大きい」です。
コラムスピーカーは今やスタンダードなPAスピーカーのいちカテゴリーとして、セッティングの簡単さ、幅広いエリアにクリアなサウンドを届けることができる点、幅広い用途に対応できる点などから、その地位を確立しています。ショールームに展示しているCLASSIC PRO、JBLの各コラムスピーカーと並べてみると、その大きさがわかります。
一番右がQSCの「KC12」です。

PAスピーカーの一般的な考え方として「サイズが大きいほうが、音量や音圧、低域再生面で有利」というものがありますが、まさにそれです。実際に普段聴きなれている音源で比較してみたところ、「KC12」は頭一つ抜き出た大音量、深いローエンドを感じました。
他のモデルであれば、LIMITランプが点灯するような大音量でも「KC12」は点灯せず。聴いているこっちがこれ以上は……と怖くなって上げるのをやめました(笑)


アレイスピーカーのこの角度がかなり効いていました。
試聴した部屋は天井がそこまで高くないこともあり、反射が気になるかなと思っていましたが、20m弱くらい離れて聞いてみたところ、そういった気になるところはもちろんなく、シンプルにすごいなと思いました。また、音質についてもさすがはQSCという感じです。大音量にするとバランスが崩れたり、高音がきつくなってきたりというような心配は皆無。QSCスピーカーのクリアさはそのままにただただ音が大きい。

この音質、音量、低音の迫力が出力できるコラムスピーカーは中々無いのではないのでしょうか。ロック系のバンドライブなどでも十分に使えるレベルだと思います。
続いて背面パネルを見てみましょう。
3ch入力はこれまでのK.2シリーズと同様ですが、「KC12」はQSC初のBluetooth音楽再生も可能になっています。入力できる種類も豊富でさまざまなシチュエーションに対応することができます。
chA: ライン、マイク、Hi-Z
chB: ライン、マイク、マイク(+48V)
chC: ステレオミニ、Bluetooth

そしてchAとBのところにある「DEFAULT」の文字が見えますでしょうか。
「KC12」には、楽器別に最適なチューニングを施された14種類ものプリセットが内蔵されているんです。
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- DEFAULT: EQやプロセッシングを適用しない設定
- VOX LO DYN: 低音域のボーカルに対応したダイナミックマイク用
- VOX HI DYN: 高音域のボーカルに対応したダイナミックマイク用
- VOX LO CON: 低音域のボーカルに対応したコンデンサーマイク用
- VOX HI CON: 高音域のボーカルに対応したコンデンサーマイク用
- HAND MIC: 明瞭なスピーチ、フィードバックを抑えたハンドヘルドマイク用
- LAV MIC: 明瞭なスピーチ、フィードバックを抑えたラベリアマイク用
- HEAD MIC: 明瞭なスピーチ、フィードバックを抑えたヘッドセットマイク用
- AC GUIT: アクティブ、 またはパッシブピックアップシステムを持つアコースティックギター用
- E BASS: アクティブ、またはパッシブピックアップシステムを持つベース用
- KEYS: キーボード用
- E DRUM: 電子ドラムキット用
- BAND MIC: 1本のコンデンサーマイクを使用するアコースティックバンド用
- 100Hz HPF: フラットな応答性を維持しつつ低周波数を減少させた設定
私はベース弾きなので、さっそくエレキベースを繋いで、Hi-Z、E BASSで遊んでみました。
ここでも初めて味わう感動がありました。
なにかというと、普段使用するベースアンプは、自分より背が低いので、例えるなら低いところから音が飛んでくる感じですが、KC12の場合、高域と中域の部分が上から降り注いでくる感じになります。これってこれまでには味わったことのない体験です。
ベースアンプにコラムスピーカー、これはマジでアリ。全ベーシストにオススメします。
次の推しポイントは、これもQSCパワードスピーカー初の「リバーブ」です。

設定できるパラメーターはシンプルで、エフェクトの量と、リバーブの種類のみという潔さ。この設定で、教則本ソロベースのしらべで会得したスイートメモリーを弾いてみたら、とにかく気持ちイイ広がり方を楽しむことができました。かなり上質な響き方なので、ミキサー内蔵のマルチエフェクトでは満足できない人にもオススメできます。
この「KC12」ならではの機能としては、「SUB ONLY MODE」でしょう。

なんと、単体のサブウーファーとして使用できるんです。
これは他のコラムスピーカーでは見たことがない機能です。これをONにすると、高域、中域のトップスピーカーからは出力されなくなり、サブウーファーから低音だけを出力することができるようになります。
他にも、そこまで調整できるの?という機能が「KC12」にはたくさんあります。
「SUB LEVEL」
これはサブウーファーの低音の大きさだけを個別に調整可能なメニューです。
ちょっとブーミーすぎると思えば抑えることもできるし、クラブDJ系のようなガンガンの低域増しにすることもできます。低域が回ってしまってクリアに聞けない現場を見たことがありますが、使用環境の鳴りに合わせたセッティングができるというのは安心度が増しますね。
SUB LEVEL
サブウーファーのレベルを設定します。これはトップボックスのレベルとは独立しています。サブウーファーレベルを上げる設定を使用すると感度が低下するため、「BALANCED 設定」で使用する場合、より低い音量レベルでもリミッターが作動する場合があります。![]()
- BALANCED:
- リミッターが作動する前に、トップボックスとサブウーファーを最適な出力でバランスさせる設定です。
- BOOST:
- サブウーファーのレベルを上げ、 プログラム素材やエレクトロニック・ダンス・ ミュージックに最適な低音域を強化します。
- DEEP (Digital Extension and Excursion Processing):
- 歪みや過剰振幅を引き起こさず、最大のサプウーファーレベルを実現する、音楽性の高い歪みのない低周波数EQアルゴリズムです。
- -1 から OFF:
- ユーザーがサブウーファーのレベルを下げたり、完全にオフにして、低音域を減らす必要がある場合に使用します。
- SUB ONLY:
- サブウーファー専用のアプリケーション向け。 KC12アンプのトップボックスチャンネルをミュートし、トップボックスが接続されていても音を出さない設定です。
「CONTOUR」
全体のサウンドキャラクターを決めることができるメニューです。
まずはここで好みの音質に合わせて、さらにプリセットを組み合わせれば怖いものなしです。
CONTOUR:
スピーカー全体に適用される、 プログラムされた EQ お よびダイナミックプロセッシング設定を選択します。![]()
- DEFAULT: 標準的な設定
- LIVE: ライブサウンド、明瞭なボーカル向け
- DANCE: 低音域と高音域を強調するダンス向け
- CINEMA: 低音域を強調するシネマ向け
PRESET、SUB LEVEL、CONTOURの組み合わせをいろいろ試してみましたが、もちろんどの組み合わせでも破綻することはなく、どれもしっかり使える音でした。
QSCは、先代のKシリーズから音の良さを知っていますが、今回の「KC12」はその期待感をさらに上回ってくるものでした。
感想としては、PAスピーカーとしても楽器用のアンプとしても、最上級の逸品です。
システムの質をワンランクもツーランクもレベルアップさせてくれる凄いコラムスピーカーが出てきました!!
成田ショールームで試聴することができますので、近くに来た際はぜひ寄っていただき、この感動を味わってほしいです。