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楽器の作り方 前編

2021-11-19

Theme:sound&person

Cheena:Parazio氏との会話から楽器製作の話になりました。3人コラボ体制でお送りします。

ギターのパーツ

Parazio:30歳を期にベーシストとして復活!今回こそは続けようと日々頑張っております! が、実際は機材収集とリペアを楽しんでいるのが現実です。 いつかはオリジナル機材を作りたいと日々勉強しております。 要はアマチュアです。よろしくお願いします。
Twitter https://twitter.com/k_parazio
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える:就職後に新しい趣味が欲しくなり、2018年にベースを始めました。独学でコツコツ勉強しながら続けています。スリーピースバンド『1号線』ベーシスト。といっても現状はただの練習のためのコピバンですので、オリジナル楽曲制作が当分の目標です。最近ギターとドラムも始めました。
Twitter https://twitter.com/L_bass0213
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Cheena:中学校で吹奏楽部に入部、中3でエレキベースを買ったところ改造と自作の世界に魅入られてしまった。3Dプリンターやレーザーカッターなどを駆使した楽器改造・製作とエフェクター製作をしています。
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ネモト:親指弾きにこだわる多弦好き。かつてベースとPAを担当。一度音楽を辞めて10年程経ってから再開しました。真面目に活動をしていないため音楽歴は長いけど下手。よしなに。 最近はレリックが楽しいです。
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Parazio:今回も私のリクエストで楽器の作り方についてご指導いただきます。
木工は素人です。

ネモト:リペア/クラフトを真剣にやっていたのは10代の頃。約10年の音楽ブランクの間に情熱はほとんどなくなりました。ちゃんと参加しますが、昔取った杵柄というやつです。

Cheena:いつもの楽器製作の話になり暴走の予感。勉強がいくら忙しくても製作・改造と執筆はします。


Parazio:今回も前回に引き続き私のリクエストでこの題材になりました。
Cheenaさん是非ご指導願います!
ちなみに私、自作でエレキベース作りたいです。

Cheena:自作ですね。どこから始めるか…
とりあえず、どう製作したいですか?レベル順に(難から易)

〜ボディ〜

  • 製材から(プレーニング作業などから)
  • 材から(aimokuなどの寸法取ってある板から)
  • 加工済み材から
    →ネックポケットのみ加工済み
    →ボディ概形のみ加工済み
    →無塗装ボディ
  • 塗装済みボディから

〜ネック〜

  • 製材から
  • 材から
  • 加工済み材から
    →フレット無し指板&ネック
    →ヘッドストック無加工
    →フレット済み無塗装ネック
  • 塗装済みネックから

〜パーツ〜

  • 手巻きピックアップ
  • 金属ハード製作
  • ピックガード製作
  • 特殊配線
  • 配線キット

もちろん必須となる工具も変わってきます。

Parazio:そこを是非相談したいのですが、本音を言うと製材からやりたいです。
今回、ネモトさんからお譲り頂いたThunderbirdのリペアでかなり楽しさがわかってきたのでどんどん行きたいです。
ちなみに、Cheenaさんが初心者に勧めるレベルってどこらへんですか?
僕はガッツリ初心者なので…。

Cheena:私は初製作ならまず1セット2万円「以上」の無塗装キットをお勧めします。塗装以外の楽器を構成する要素が全て詰まっていて、それを適切な指示に従って作るということで加工技術や手を抜いてはいけない場所を知れるという部分に良さがありますね。作るだけならドライバーと半田ごてだけ、形状を修正するにしてもトリマーやジグソーなど電動工具が不要で、紙やすりとのこやすりがあればどうにかなるというのも良いです。
ついでに言うとパーツの買い忘れが発生しないのも重要です。作業が進まないとなるとやる気は一気になくなるので……

Parazio:そうなんですよね、ものを作る上でどこが大事なのかをまず押さえたいのです。
しかし、探してみるとギターなら組み立てセットや、ネックとボディの売出しがありますが、ベースと言ったらほとんどないですよね。
さっき調べてたらFenderがネックのみの売出しをしてました。
できたらHOSCOの組み立てキットみたいなのがあれば…

Cheena:最後にもリンクを置きますが、おすすめだとこの辺りですね。

初心者向けじゃなくてもいいというならGuitarFetishやWarmoth、Koloss Guitarsもあるんですが……
あとAliexpressとかAmazonのキットはパーツレベルから改造が必要なのでお勧めしません。

Parazio:先ずは組み付けから学んでいくほうがいいんですね。
そういえば過去の記事にCheenaさんがギター組み立ててたものがありますよね?あれって難易度的にどうですか?初心者でも可能ですか?

Cheena:これですね。

海外からキットを輸入して作ってみた

あれぐらいがいいです。セットネックとかアコは追加工具が必要だったりするのでちょっと大変ですけどね。
ちなみにこれ系の話だとネモトさんも詳しいですよ。

Parazio:そうなんですか!ネモトさんもいろいろやってんなぁ。
バラ売りを掻き集めてやるのもありですか?
きっと付属の電装系やピックガードとかは使わないと思うので…
ちなみに、一応こうした加工自体は嫌いではないです。

ネモト:かき集めるのは全然アリですよ。
ブライアン・メイのレッドスペシャルもミシンのパーツを流用していたし、プレベのボディにジャズベのネックを合わせたものは「フランケン(PJフランケン)」という名前があるくらい(70〜80年代に一部の界隈で流行ったらしい)です。
ただ、設定された年代が違うとネックが合わないこともあるので注意。というのも、フェンダーのネックジョイントにはスクエアヒールとラウンドヒールの2種類があり、'51OPBボディと'64JBネックを合わせるなら加工必須。削れば済む話なのであくまでポン付けはできないってだけ。なので気にせずかき集めると良いかと。Baguleyのアルミネックとかモーゼスのカーボンネックとか合わせると楽しそう。
バイオリン等の塗装に使うニスを自作したことがありますが、あれはおすすめしないです。ハニーゴールドにしたかったけども黄色が強すぎてなんか下品な感じになってしまった。
Cheenaくんはやりたがるかもしれませんが、覚悟がいるというか沢山作る人で無ければ買った方が絶対いい。

Parazio:自作ニス!?有機物から生成するやつですか?すごいな、作れる技術がまた。
それにやっぱりパーツの相性もあるんですね。
最初から加工無しでできるとは思ってないので加工ありきで考えておきます。
Cheenaさんの自作して失敗した話とかあれば是非お聞きしたいです!

Cheena:失敗は色々ありますけど…

  • フレットレス指板削りすぎてサイドインレイ露出
  • 実機で着色試したらラッカーが載らなくなった
  • タイトボンドの代わりに木工用ボンド使ったら後々トリマーの刃に粘り付いて刃を廃棄

まあこれ程度ならリカバリもどうにかなりそうですが、パーツを3Dプリンターで作ったら強度が足りなくて吹っ飛んだり割れたりしたのは言い逃れできませんね……

Parazio:いろいろ楽しい事やってますねー!
多分3Dプリンターの話だと樹脂の選定が必要なんでしょうね。
ではでは、本題の作り方なんですが、改めてお聞きしたいのですが、製材からやるとどんな感じの工程になりますか?また必要な道具ってどんだけありますか?

Cheena:きっちり乾燥して十分なサイズのある板材があったとして、ボディ製作にはテンプレート作成→材の厚み調整→概形切り出し→テンプレートに合わせて加工。テンプレートを作らずに見切りでやるのは危ないですね。
ネックにはロッド仕込み→指板接着→カットしてヘッド削ってグリップシェイプ形成。インレイ入れてからRを付けてフレットを打ちます。(順序には宗派があります。完全加工済みの指板単品を使うことも。)
必要な工具は必須の電動系が電動鉋、トリマー、ジグソー、ハンドドリルかボール盤。サンダー系は無くてもなんとかなるものの、あると削り加工全般がすごく楽になります。
手動系では丸鉋やのこやすりがあるといいです。フレットソー、クラウンファイルなども必要。

Parazio:木工工具一通り要るわけですね。
工具なんか揃えだしたらそっちにも凝りそう。
他にもノミや小型カンナなんかもあると良さそうですね!
それと、ずっと考えていたんですが、寸法計測が一番難儀しそうですね。
まず寸法を把握するところから始めたいです。

ネモト:あと、計測工具はあるに越した事はないですね。
精密ノギスは必要だと思います。スケールと1メートルアルミ尺はあった方がいい。
オイルフィニッシュ以外の塗装をやるなら仕上げにバフ掛けするので、電動ドリルに付けられる簡易なやつでもいいので用意しましょう。

Parazio:やはり計測器は基本なんですね。
モノづくりの現場に計測器ありですもんね。先ずは加工台と計測器が必要ですね。

でも、こんな話ししてたらほんとオリジナル楽器って漢のロマンですね!
今作る計画が具体的になってきそうで嬉しい。
(速報:家のものから室内での機械加工だけは辞めてくれと言われました。絶望の予感です(泣))

Cheena:家の中で加工は本当に無理ですのでやめましょう。木屑も大量に出るし、粉が周辺の機器に入って死ぬので。粉塵爆発とかしたら笑えません。
生活環境でできるのはオイルフィニッシュ、それも匂いが少ないものの塗装と、配線やねじ止めやドリリングなどの最終作業だけです。

Parazio:前にブルーシート広げて工作してたら、一等地が死ぬと言われて怒られたので、今回もまたかと怒られました。
集合住宅はDIYに厳しい環境ですよね。

Cheena:ホームセンターの工作室やFAB系シェアスペースで作れればいいですが…。
塗装も異臭騒ぎとかなりそうですし、そういう環境だとスプレー系と油性ステインは諦めた方がいいかも。

Parazio:そういう方法もありますね!
街に行けばホームセンターでもDIY可能です。
塗装については水性のステインを予定してます。
やはりやるなら半製品を買い揃えるが吉のようですね。
集合住宅の方は無理は禁物、ご近所トラブルにならない程度にwww

Cheena:そうそう、当たり前ですけど加工中の温湿度には気を付けてくださいね。
ネックポケットの寸法だったり塗装の乾き速度が安定しなかったりすると大変なので。

Parazio:そこが金属加工とは大きく異なる所ですよね。
『木は生き物』と言われるだけあって、気候にかなり左右されますよね。
因みにですが、半製品を加工するのを前提にお伺いしたいのですが、仮組み→塗装→電装品等組付けの順でよろしいのですか?

Cheena:だいたい大丈夫です。木部ネジの下穴を開けるのを塗装前か塗装後かで揉めることがありますが、今回はステインなので塗装後で大丈夫でしょう。割れやすいウレタンなどの場合は先に細めのビットで開けておくといいです。

Parazio:なるほど、ウレタン系の樹脂塗料の場合は先に穴あけの必要があるわけですね。
ちなみに、今回はステイン系を使用しますが、注意点などありますか?

Cheena:先に染まり具合と塗り方を検討しておく、というのが第一です。
あとは、トップコートや導電塗料の施工も考えているならそれとの兼ね合いも考えましょう。
調色まで行うなら混合比も採っておく必要があります。

Parazio:そうですね、マスキング等は大切ですよね。
色調はちゃんと秤で計る必要がありますね。
それと、木材から離れた話になりますが、自作ピックアップって作ったことありますか?
あれって、マグネットに銅線巻いて作るんですよね?

ネモト:ポールピースは磁性があれば磁石でなくても大丈夫ですよ。
試作するならホームセンターで銅線を買ってきて、磁石を底部にネジをまっすぐ立てて、その周りに銅線をグルグル巻けばこと足ります。
ネジはこの辺から選べばいいと思います。

ピックアップ用ネジ 一覧

ホームセンターで売ってる銅線はサビ対策でエナメルコートされている場合があるので終端部はサンドペーパーで磨いたほうがいいでしょう。

Cheena:大変ですけどね…全ての工程でワイヤーが切れる可能性がある。

ネモト:大変な思いして苦労して作ってもわくわくさんクオリティ…。

Parazio:そんな大変なんや…。

Cheena:まあ、1回作ってみて中華ピックアップの安さにぶっ飛んでみるといいですよ。
巻き数確認までできるワインダー買ったらもう戻れませんけどね。

Parazio:なんと、設備がすべての製品なのですね。やっぱり部品も見た目以上に奥が深いなぁ。
実はThunderbirdのピックガードと、トラスロッドカバーを作ったことあります。
あれは楽勝でしたが、本格的に量産と言われると無理ですね。

Cheena:ピックガードの量産も大変ですね…面取りはトリマーでするのが有名だけどどうにも慣れない。
CADデータが作れるならレーザーカッター借りるのがお勧めです。含塩素系樹脂は使えないけど、その分綺麗ですし。

Parazio:因みにですが木で作りました。すべて100均で購入(塗料も)

Cheena:百均でもある程度のプラ・MDF・SPF素材が手に入ってありがたい限りです。Parazioさんのいう百均で手に入る周りから怒られない塗料というと水性アクリル塗料かミルクペイントあたりですか?

Parazio:水性アクリルです。あまりの塗料の軟さに疑問もあるので、次回は水性ステインに変えます。
私の好み的にはつや消しが好きなのでステインは理想です。

Cheena:念の為ですが、ステインはその名の通り木材を染めているだけなので塗膜にはなりませんよ。塗膜が軟いのはなんだろう……

Parazio:最後は水性ウレタンニスを塗って完成ですかね?
というか、できたら全て水性でいきたいです。
今車だって全て水性塗料使ってるくらいなので、そこそこ水性塗料もよなってきているのかな?と思ってます。
そこいらはまたこれから調べないといけないところですが…

Cheena:多分大丈夫です。というのも、塗装の取り合わせというか重ね塗りは運に依るところが多いし調色はそれぞれの好み、まあ傷が入らない程度にしっかりした塗膜ができあがれば楽器としては問題ないですからね。
Wishbassのオイルフィニッシュ?よくわかりません。

Parazio:こうやって話ししていると、楽器って安く売られているなぁと正直思います。
作っている人たちの事を思うと今持っている楽器も粗末にできませんね。
しかし、作るとなると場所から工具、また消耗品も揃えたらものすごい金額になってきますね。
10万で売られている楽器も安く思えてきます。

ネモト:手作りだとかなり利鞘を取られるんですが、それを理解してない人はまあまあいますね。
月産100本と月産10本じゃ利鞘に差が出るのは当たり前やんけ…。

Cheena:1万円のPlaytech、3000円のジャンクにも感謝して魔改造しましょう。。。

Parazio:ですよね。手作りってどんだけいい設備があったとしても、最後は人の手ですからかなりコストが掛かってるものです。(自分の給料考えたらわかると思いますが)
1万円のPlaytechだってすごい企業努力だと思います。
どんだけ売れてんねんと言いたいくらい売れなきゃあの値段では作れませんよ。
Playtechって、そういえばCheenaさんがピエゾ仕込んでたのを記事で見ました。
エレキベースでもピエゾで音拾えばアコースティックな感じになりますか?

Cheena:あれですか。

Playtechで遊ぼう ~ワンコインでピエゾピックアップの設置~

Playtechで遊ぼう ~ワンコインでピエゾピックアップの設置~

今更ながら雑な加工と写真でなんだか申し訳ない。この場合だとブリッジプレートが金属製に絶縁テープを貼り、塗膜は多少削って圧電素子を挟んでいる状態で、アコースティック系とは言い難い音がしました。
敢えて言うなら弦が鳴る音がアンプから聞こえているというか、生っぽい振動がそのまま取りだされている感じです。案外ハイも出る。
少なくとも低い重心のアコースティックベース感/ウッドベース感のある音ではない、ただサスティン感は結構近いものがあるので多少調整の上でハイカット回路を挟んで使っていました。

Parazio:これです!
そうなんですか、すごくいいアイデアだなと思ってました。
なかなか自作とまでは行かなくても、改造なら私のような集合住宅の人間でも楽しめそうです。
また、↑でも最初の方言ってましたが、組み立てキット何かがベターなのかもしれませんね。
それにオーダーする際にも作った経験があれば細かい要求もできそうw
今回もCheenaさん、ネモトさんありがとうございました。


コラム「sound&person」は、皆様からの投稿によって成り立っています。
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Rāmsar Bass Designs

Cheena、ネモト、える、Parazioによる定期的に語り合うコラボ企画です。浅い内容から、濃い内容まで様々です。
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