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廉価なバイオリンでよい音を出すためには [第五回] 魂柱~こんちゅう

2025-08-05

Theme:Stringed Instruments

いよいよ魂柱の話です。
いよいよと書きましたが、じつは筆者ブログでは以前にも魂柱の話を書いています。

⇒ 関連ブログ「魂柱の話」

その時は「魂柱」とは誰が名付けたのだろうか、などとまるで昔からよくある「つれづれなるままオジサンブログ」みたいな文句でちょっとごまかしてしまいました。

魂柱の語源は時代の寵児AIさんにお伺いしたところ、「イタリア語のAnimaが語源ですね~」といった具合にあっさりと答えていただきました。まあこれで「模範解答」足りえるでしょう。
どう見ても木の棒なのに、なぜ昔のイタリア人はこれをAnimaと呼んだのか?そこが知りたいのに。
AIさんにいちいち腹を立ててもキリがないのでこれはオジサンの夢想のタネとして残しておくことにしましょう。


さて、魂柱はこういう形の木の棒です。上下の端は斜めに加工されています。

これがバイオリン内部で表板と裏板の間に挟まって立っています。

魂柱は「表板の振動を裏板に伝える」のが主な役割です。
魂柱を外したバイオリンの音はモワッとして輪郭がはっきりしない音になることがほとんどです。
正しく魂柱がセットされた状態では高音がすっきりとした美しい響きになります。

魂柱のセッティングが斜めに傾いていたり、適切なポジションでなかったりした場合には音に影響が生じる、と考えられますが一様ではなく、斜めの魂柱なのに音がいい楽器も存在します。
きちんと直したら音が響かなくなった、といった例も少なくはありません。これは以前の魂柱のブログで「Kさんエピソード」として紹介していますので抜粋してみます。

『25年ほど前に実際にあったお話を例にご紹介します。

ある日、かなりご年配のバイオリン好きのおじいさんがお客様でいらっしゃいました。Kさん、としましょう。Kさんはご自分の楽器の魂柱を換えてみたいとのご要望だったので魂柱交換を行いました。作業は終わり、音を出してみます。
ところが、音は変わった。けど前の方がいい??何でだ????

ほとんどの場合、きちんと作業をすれば音は改善します。しかしここでの「良い音」の基準が感覚的なものなので規定が無いと言えば無いわけです。

このKさんのケースの場合楽器はかなり古い楽器(イタリアのオールド)だったのでおそらくは表板の魂柱の当たっていた部分が変形して一筋縄ではいかない楽器だったのでしょう。記憶を頼りに元々ついていた魂柱をもとの状態で立てたら、やはり音は回復を見たのでした。

Kさんいわく「この楽器の魂柱、あっちこっちで見てもらったんだけどどうやってもダメなんだ」。方々の工房でその楽器の魂柱交換を試したらしいのですが、結局もとに戻すという経緯があったようでした。最初に言って欲しかった……』

このエピソードは脚色なしの実話です。その楽器についていた「魂柱」がそれを立てた人の技術力、もしくは偶発的な要因で結果論的にその楽器が良い響きに仕上がっていた、という事ですが、恐らくは後者がその理由だと思います。


では話をブログの流れに戻しましょう。
PLAYTECH PVN244 をあちこちいじっているこのブログ、今回はその魂柱をテーマにしております。

PVN244の魂柱も普通の魂柱と何ら変わるところはないですが、量産楽器の宿命ともいうべきコンディションであることはおおむね避けられないものではあります。
画像をご覧ください。撮影困難でしたがiPadでこれを撮影。若干画面にゆがみがありますが、超広角の収差としてご容赦下さい。

斜めになっているのがお分かりでしょうか?
この斜めになっている魂柱を、正しい位置、傾きに直します。

まず魂柱を一回外します。魂柱立て、という道具を使います。

ここからはYouTubeで説明動画をご覧ください。

動画キャプチャでも説明を行っていきます。
魂柱の下部(裏板側)をネック側からエンドピン側に向かいコンコンと叩いていくと魂柱は倒れます。

倒れた魂柱はF孔から取り出します。

魂柱の上端、下端をノミを使って削り成形して整えます。

魂柱立てを使い今度は立てる作業です。

基本的に指先の感覚が頼りの作業です。画像だけ見ると何が起きている?という感じの画ですね。

位置の微調整は反対側のF孔から行います。

正しい位置に修正が完了しました。

まっすぐ立っていますね。

と、このようにここでは「手順の説明」のために、まるで何の苦もなく行っているように見せていますが、実際の魂柱の調整は意外と大変なものではあります。

このように「正しく」セッティングすれば、音は改善することがほとんどです。しかし、前に述べたKさんの事例のようにうまくいかない、という事もまれに起きるということも想定しておく方が良いでしょう。

ちなみにこのPVN244に関しては魂柱を直したら音のバランスが改善したと思います。


さて次回は、やはり音色。そして弾き心地に大きく関わる「駒」の話をします。
駒に関するブログも以前に書きましたが、

⇒ 関連ブログ「バイオリンの駒の話」

次回は「PVN244についている駒」を実際に削って、どのように調整されるのかという点に絞ってお話します。
駒の調整が終わればセットアップし、弾いて音を出す段階になります。
回数を重ねたこのブログも次回が一応最終回です。それではまた。

このブログの主役になっている楽器はPLAYTECH PVN244です。

PLAYTECH ( プレイテック ) / PVN244 バイオリン 4/4

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良い弓がついてくる、このセット品が特におすすめです。

PLAYTECH ( プレイテック ) / PVN244 バイオリン 4/4 初心者セットⅤ

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Ueno

ヴァイオリンの出荷検品を担当しています。
Jeff Beck(全作)からDavid Oistrakhのブラームス、Dinu Lipattiのショパン Jacqueline du Préのドボコンまで、音楽が好きです。
1979年製のTokai LS-80を当時から,Guyatone FLIP600F(全段Tube)を 1986年からずっと愛用しています。

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