メロディック・メタラーなら一度は通るであろうバンドのひとつに、Rhapsody Of Fireが挙げられます。
オーケストレーションを導入したバンドサウンド、今日日ゲームでも使われないようなコテコテのファンタジーな世界観、そして「クサい」と形容される大仰なメロディ(すべて褒めてます)でメタラーの心を掴み、イタリアンメタル、シンフォニック・パワーメタルの代表格になりました。そして、メンバーの脱退・加入・再集結で世界中のファンを長年振り回す、お騒がせバンドの代表でもあります!
発端は2011年。結成メンバーでありメインコンポーザーだったギタリスト ルカ・トゥルッリがバンドから脱退。同年Luca Trulli’s Rhapsodyを始動させます(バンドのアナウンスでは友好的に袂を分かったとのこと)。
その後、2013年に本家Rhapsody(とします)の看板ボーカリスト ファビオ・リオーネがブラジルを代表するメロディック・メタルバンドAngraへ加入。2016年には脱退してしまいます。
そして同年、本家Rhapsodyに新ボーカリスト ジャコモ・ボリが加入。2017年には新体制での再録ベストアルバムをリリース……した矢先に名盤2nd『Symphony of Enchanted Lands』リリース20周年を記念し、ルカ、ファビオを含む編成でフェアウェル・ツアーを行うとアナウンス。いやいや、新体制になるならそっちに集中させてよとヤキモキさせられました。
時は過ぎ2019年。本家Rhapsodyが新体制初のアルバム『The Eighth Mountain』をリリース。リード曲「Rain Of Fury」のミュージックビデオもアップされました。
■Rhapsody Of Fire / Rain Of Fury
Rhapsodyに求めるシンフォニック、クサメロといった要素を損なうことなく、新たなボーカルの声質や声域にマッチした楽曲に、多くのファンが胸を撫で下ろしたことでしょう。
その4か月後、あるリリックビデオがアップされます。
■Turilli / Lione Rhapsody / Phoenix Rising
本家Rhapsodyから脱退したルカ・トゥルッリ、ファビオ・リオーネが合流。新たにRhapsodyの屋号を冠し活動をスタートしました。もうこうなってくるとどちらを本家と呼ぶべきなのか……。
分裂劇はなにもRhapsodyだけではなく。
■Queensryche / Queen Of The Reich
メタルバンドの分裂として最も有名なのは米国産プログレッシブ・メタルバンドQueensrycheではないでしょうか。
1988年、代表作にしてプログレメタルの金字塔である『Operation : Mindcrime』をリリース後、ボーカルのジェフ・テイトが燃え尽き症候群になったことから、バンド内のバランスが崩れ始めます。ジェフはメンバーへの暴言や暴力のほか、マネージャーを解雇し自身の妻を新たなマネージャーへ選出するなど問題行動を連発。その後、裁判にまでもつれ込む泥沼の相を呈し、最終的にはバンド側がQueensrycheを名乗ることが認められました。
Queensrycheは、Crimson Gloryで活動していたトッド・ラ・トゥーレをボーカルに迎え、2017年に13th、2019年に14thアルバムをリリース。いずれも初期Queensrycheを彷彿とさせる作風で好評をもって受け入れられました。
■Queensryche / Blood Of The Levant
そして分裂劇は日本でも。
■Versailles / DESTINY -THE LOVERS-
ヴィジュアル系ヘヴィメタルバンドVersailles(ベルサイユ)。シンフォニックなサウンドと18世紀頃のフランスをテーマとした衣装が特徴で、日本はもちろんヨーロッパや南米でもライブを行い、ワールドワイドに人気を獲得しているバンドです。
2007年に結成、2009年にワーナーよりメジャーデビューと順調に活動を続けていましたが、2012年に年内をもって活動休止すると発表。2013年に入るとボーカルKAMIJOがソロ活動の開始を宣言します。
ここまでなら他のヴィジュアル系バンドでもよく見る光景。同年4月、Versaillesの楽器隊4人がボーカルを加えて新バンドJupiterの始動を宣言。
■Jupiter / Blessing of the Future
当時、活動休止の理由について多くは語られていませんでしたが、ここまで露骨だとさすがに不仲を察するというもの。しかしながらVersaillesよりもさらにメタル要素を強めたJupiterは新たなファン層も獲得。
ヨーロッパツアーの開催やDragonforceのオープニングアクトへの抜擢などの活躍を見せます。
このまま分裂状態が続くのかと危惧されたVersaillesですが、2015年12月活動再開を宣言。2016年にはリテイク・ベストアルバムをリリースします。
活動再開後に語られた内容によれば、ボーカルKAMIJOとドラムYUKIの不仲が休止の原因のひとつだったとのこと。現在はKAMIJOソロのサポートドラムをYUKIが務めるほど仲は回復しているようです。Versaillesを軸としつつ、KAMIJOソロ、Jupiterも並行して活動するスタイルを取っています。
そんなわけで提唱してきました「メタルバンド分裂しがち問題」。
単純にメタルバンドばっかり聴いているから、メタルバンドは分裂しがちと感じるのか、はたまたやはりジャンルの特性なのか。他ジャンルに比べると自己主張の強いプレイヤーが多そうなので、ジャンルの特性と言われても納得です。
ちなみに海外の浮気相手検索サイトによると、登録している人のうち、最も割合が少ない音楽ジャンルのファンはヘヴィメタルファンだそう。豆知識です。