
QUEENを題材とした映画「ボヘミアン・ラプソディー」が公開されました。
映画が始まってすぐに感じたのが、メンバーを演じている俳優さんがみんなそっくり。
後半冷静に観てみると、俳優さん達は本人に似せるために仕草や話し方まで、ものすごく研究していることに気がつきます。よくよく表情を見ればそんなに顔自体は似てないのです。
ストーリーを追い、映画に気持ちが入っていくと顔つきなんか気にならなくなり、そっくりに見えてくるものなんですね。
圧巻なのは映画の最高潮であるライブシーンです。オンタイムでライブエイドを見ていた世代なら鳥肌もののステージ。QUEENが最後に輝いた最高のライブです。

ネタバレになるので詳細は控えますが、ライブシーンで後方に写っているのは「VOX」のロゴが鮮やかなギターアンプの壁!
同じ四角い形のアンプが山積みにされている様子はこれぞROCKという感じ。映画のシーンとしては少しの時間ですが大変印象に残ります。
当時VOXの名を世に知らしめた最大の功労者はThe Beatlesでした。デビューから解散までVOXのAMPがスタジオには用意されていて、ちょっとしたポートレートにVOXのロゴが写り込んでいます。
初期のビートルズは印象的なギターリフが多く、その多くがVOXのスピーカーを通して生まれたものでした。
その後もロックの創世記に数多くのギタリストがこぞってVOXを使用し、一躍英国製アンプの代表格として、マーシャルにその地位を明け渡すまで君臨していました。
独特の中音域の粘りと煌びやかな高音域が特徴のVOXは、今につながるロックの系譜において無くてはならない機材の一つだったに違いありません。
名ギタリスト達の名演を出音で支え、アーティスト達の背景に鎮座し、共に時代を作ってきたことでしょう。
QUEENのギタリスト、ブライアン・メイは自作のギターにVOXの「AC30」というアンプを使用していたことで有名です。AC30は黒のキャビネットにひし形の柄が入ったネット、金色のロゴのバランスが最高に格好良いギターアンプです。その姿はまさにエレガント。
1台でも存在感ある美しいのに、ブライアン・メイは自分の後方に沢山のキャビネットを積み上げて演奏していました。
現在のライブでは、Marshallのキャビネットを並べるのはよく見る光景ですが、その当時は珍しい演出だったのかもしれません。
QUEENというバンドの美意識の高さによるものではなかったかと推測できます。
VOX (ヴォックス) / AC30一覧
VOXの壁を背に立つブライアン・メイの立ち姿は最高にイカしてました。ステージで表現するパフォーマンスの背景として、VOXの壁は最高の舞台装置だったのかも。
そんなAC30はなんと1959年に発表されたモデルです。もう半世紀以上60年前のモデルなんですね。
そんなモデルが、経営者が変わったり、紆余曲折あったにせよ、今でも後継機種が製造され手に入れることが出来るのは奇跡かもしれません。
今では様々なギターアンプが低価格で手に入る時代。サンプリングした音色で真空管アンプの音が簡単に作れるデジタル時代になりました。
AC30も最新のコントロール回路を付加されて様々なバリエーションが発売されています。その外観はVOXの美学に則った、とてもクラシカルな装いをまとっています。
ギターをはじめ、楽器にはそんな哲学や美学があり、単純な機械ではないところが魅力ですよね。VOXらしさが普遍なのが素敵なところです。
QUEENの楽曲で響き渡るギターサウンドは今聴いてみても全く色褪せていません。初めてQUEENを聴いたギターキッズは、鋭利でいて包み込むようなギターサウンドに憧れを持つことでしょう。「こんな音を出してみたい!」と。
あの頃憧れた音色。ステージで光っていたVOXのロゴ。ベテランギタリスト達は当時の興奮を思い出し、涙する事でしょう。
フレディ・マーキュリーに捧げるギターソロをAC30から届けてみたい。そんな感傷に浸れる良い映画です。本当にいろんな世代に観てもらいたい。
「ボヘミアン・ラプソディー」という曲が好きとか嫌いとかでは無く、ROCKを聞く人、音楽が好きな人に幅広くお勧めできる映画でした。
若い頃バンドやってたって人は涙腺が緩みますのでハンカチの用意もお忘れなく。
映画を見終わり、帰宅した後本物のQUEENをネットで観ると立ち姿や仕草が格段に格好良く見えます。
すごいバンドでした、音楽性もカリスマ性も、そして生き様も。