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シンセサイザー鍵盤狂漂流記~音楽を彩った電気鍵盤たちとシンセ名盤の数々~その41

2021-07-02

テーマ:sound&person

トッド・ラングレン&ユートピアとキーボーディスト、ロジャー・パウエル

今回の鍵盤狂漂流記は指向を変えてロックフィールドに飛びます。ミュージシャンはトッド・ラングレン&ユートピアです。トッド・ラングレンは1967年に4人組のバンド、ナッズでデビュー。多作で才能豊かなミュージシャンです。ナッズ解散後、1972年に2枚組の名盤、「サムシング/エニシング?」をリリース。楽曲の多くを自分で演奏し、「ハロー・イッツ・ミー」がビルボードチャート5位の大ヒットとなりました。

サムシング/エニシング?(1972年)

トッド・ラングレンはプロデューサーとしても名を馳せ、ホール&オーツやグランド・ファンク・レイルロード、チューブス、日本人では高野寛もプロデュースしています。独自のポップ感覚でアルバムをヒットさせるなど、プロデュース能力の高さでも評価されています。

トッド・ラングレンの電子楽器シンクタンク?ロジャー・パウエル

マルチプレイヤーであるトッド・ラングレンは鍵盤楽器も弾きますが、当時のトッドにはプログレ志向もあり、シンセサイザー等の電子楽器は専門家に任せていました。その人がロジャー・パウエル。トッド・ラングレン率いるバンド、ユートピアのキーボーディストです。

ロジャーは大学卒業後、シンセサイザーメーカーであるアープ社に入社し、74年にトッド・ラングレンのバンドに参加します。プレグレ志向があったトッドにとってシンセサイザーに精通したロジャーの加入は音的な幅を広げる意味でも大きな要素であったと想像されます。

推薦アルバム:『トッド・ラングレンズ・ユートピア』(1974年)

プログレ志向を持ったトッド・ラングレンのブリティッシュ・プログレシブロックへの回答とも云えるアルバム。長尺の曲が多く、トッドの当時の音楽的志向を知ることができる。しかも、ライブアルバムということでバンドメンバーの演奏力も高かったと云える。プログレ的要素の強い曲はスタジオでは構築できるが、ライブでは音の厚みなど、アンサンブルとして難しい部分も多い。特に74年当時はシンセサイザーで和音を出すことが技術的に不可能だったため、バンドとして音の厚みを確保するために3人のキーボーディストが参加している。3人の奏者の内、1人はヤマハのオルガンYC-45 を、2人目はフェンダーローズエレクトリックピアノを中心に演奏。3人目がロジャー・パウエルでシンセサイザーとシーケンスパートを担っている。

推薦曲:『ユートピア テーマ』

テーマがあり、その間をシンセサイザーやオルガン、ギターソロ(アドリブ)が飛び交う。ライブレコーディングなので最初のキメフレーズをロジャー(多分!)が間違えているのが修正無しに記録されています(聴けばすぐに分かります)。この辺りはご愛敬。その後、当時は珍しかったシーケンサー(自動演奏装置)によるシンセサイザーのシーケンスフレーズが入り、近未来的イメージを演出する。この辺りはシンセエキスパート、ロジャーの真骨頂です。そこにポップなボーカルが被れば、まさにトッド・ラングレンワールド!ロジャーは単音しか出せないシンセサイザーで、カットオフやポルタメントを上手く使う印象的なバッキングをしています。 学生時代、私の入っていたツインキーボードバンドでもこの曲をコピーしました。当時シーケンサーが無い為、先輩のキーボーディストがシーケンスフレーズを手弾きしていたのを記憶しています。ちなみにロジャーが間違ったと思われる箇所で私もよく間違えていました。

■ 推薦アルバム:ユートピア『太陽神』(1977年)

トッド・ラングレンズ・ユートピアの3rdアルバム。この作品から4人編成となった。楽曲のクオリティも高い。ユートピアは楽器演奏技術も高く、それにもましてコーラスワークが素晴らしいバンドでした。私は1979年に中野サンプラザでユートピアのライブを観ました。驚いたのは彼らのコーラスワークでした。スタジオと変わらないコーラスは4人のバンドとは思えないほど厚みがあり、コーラスワークがユートピアの核になっている印象を受けました。トッド・ラングレンのプログレ的志向はこのアルバムで最後になり、その後は曲も短くなりポップ志向の強いバンドになります。このアルバムもオモチャ箱をひっくり返したようなバラエティ感の強いアルバムでユートピアの最高傑作と云われています。

推薦曲:『ヒロシマ』

トッド・ラングレンの曲では珍しい広島と長崎に落とされた原爆がテーマになったシリアスな曲。終盤、ロジャーによるアナウンス後の印象的なシンセサイザーソロは聴きもの。

■ 推薦アルバム:トッド・ラングレン『バック・トゥ・ザ・バーズ』(1978年)

ユートピア名義がなくなり、トッド・ラングレン名義でリリースされた2枚組のライブアルバム。ヒプノシスのアートワークが秀逸。プログレ的要素は影を潜め、仲の良いミュージシャンをゲストに迎え、リラックスしたムードのライブ盤になっている。演奏はユートピアでコーラスの素晴らしさは相変わらず。ロジャー・パウエルはプローブというショルダーキーボードを演奏していました。

推薦曲:『ラブ・イン・アクション』『アイム・ソー・プラウド / ウー・ベイビー・ベイビー / ラ・ラは愛の言葉 / 瞳の中の愛』

「ラブ・イン・アクション」は私のバンドでもコピーしました。中間部のロジャー・パウエルによるギターライクなシンセソロが印象的です。インプレッションズの「アイム・ソー・プラウド」〜スモーキー ロビンソン&ザ ミラクルズの「ウー・ベイビー・ベイビー」〜ザ・デルフォニックスの「ラ・ラは愛の言葉」~トッドの名曲 「瞳の中の愛」までの名曲メドレーは最高です。ユートピアのコーラスワークが冴えています。

今回取り上げたミュージシャン、アルバム、推薦曲、使用鍵盤

  • アーティスト:トッド・ラングレン、ロジャー・パウエル
  • アルバム:「サムシング/エニシング?」「トッド・ラングレンズ・ユートピア」 「太陽神」「バック・トゥ・ザ・バーズ」
  • 曲名:「ハロー・イッツ・ミー」「ユートピア テーマ」「ヒロシマ」 「ラブ・イン・アクション」
  • 使用機材:アープ・シンセサイザー、フェンダー・ローズエレクトリックピ アノ、ヤマハYC-45 等

コラム「sound&person」は、皆様からの投稿によって成り立っています。
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音楽ライター / シンセ鍵盤卿

高校時代よりプログレシブロックの虜になり、大学入学と同時に軽音楽部に入部。キーボードを担当し、イエス、キャメル、四人囃子等のコピーバンドに参加。静岡の放送局に入社し、バンド活動を続ける。シンセサイザーの番組やニュース番組の音楽物、楽器リポート等を制作、また番組の音楽、選曲、SE ,ジングル制作等も担当。静岡県内のローランド、ヤマハ、鈴木楽器、河合楽器など楽器メーカーも取材多数。
富田勲、佐藤博、深町純、井上鑑、渡辺貞夫、マル・ウォルドロン、ゲイリー・バートン、小曽根真、本田俊之、渡辺香津美、村田陽一、上原ひろみ、デビッド・リンドレー、中村善郎、オルケスタ・デ・ラ・ルスなど(敬称略)、多くのミュージシャンを取材。
<好きな音楽>ジャズ、ボサノバ、フュージョン、プログレシブロック、Jポップ
<好きなミュージシャン>マイルス・デイビス、ビル・エバンス、ウェザーリポート、トム・ジョビン、ELP、ピンク・フロイド、イエス、キング・クリムゾン、佐藤博、村田陽一、中村善郎、松下誠、南佳孝等

 
 
 

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