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シンセサイザー鍵盤狂 漂流記 ~音楽を彩った電気鍵盤たちとシンセ名盤の数々~ その21 

2020-12-11

テーマ:sound&person

オーバーハイムシンセサイザーの変遷と名盤

オーバーハイムは「オーバーハイム8ボイス」「OB-X」などの後継機として1981年、OB-Xa(6ボイス)を発売。フィルターにカーチスチップを採用し、旧来12㏈フィックスだったフィルター機能を24dBにも切り替えを可能にした。オーバーハイムシンセサイザーの特徴である粘りと芯のある太いサウンドにバリエーションが加わる。また、61鍵盤を異なる音で2分割するスプリット機能や2つの異なる音を重ねるレイヤーモードも搭載した。国内価格は百数十万円!という高価な機種でした。その後、8ボイスになったOB- 8を経てユーザーを増やした音源モジュールのエクスパンダーを発表。エクスパンダーは鍵盤が無い音源モジュールで100万円以下(64万80000円)となり、セミプロでも手が届く金額になりました。私はシンセサイザー番組を制作中に鈴木楽器を取材。当時オーバーハイムは鈴木楽器が作っていたことから破格値でエクスパンダーを購入させてもらいました。その後、エクスパンダー(6ボイス)に鍵盤が付いたマトリックス12(12ボイス)を発売し、多くのユーザーがこのエクスパンダーやマトリックス12を音楽制作に取り入れました。

オーバーハイムXpander(エクスパンダー

オーバーハイムMATRIX-12

MIDIという画期的機能の出現!

オーバーハイムエクスパンダーという音源モジュールはMIDIという機能を有していました。MIDI(ミディ)はミュージカル・インストゥルメント・デジタル・インターフィイスの略で電子楽器の演奏データを機器間で転送・共有するための共通規格です。MIDI端子が付いている鍵盤楽器とMIDI端子付きの音源モジュールをMIDIケーブルで繋ぎ、鍵盤側で演奏データを音源モジュールに転送すれば鍵盤で弾いた音が音源モジュールから出るという規格です。鍵盤側はピアノ音で、音源側がブラスの音の場合、ピアノとブラスの音が同時に発音可能になります。音源を数台つなげば音源数台分の音が1つの鍵盤から出せます。このMIDIの登場は音楽制作にとって革命といえるものでした。このシステムにシーケンサーやドラムマシン等を組み込むことで打ち込みによるフルバンドやオーケストラのシミュレートができるようになったのです。このMIDI規格に尽力したのがローランドの当時の社長、故・梯郁太郎氏でした。梯氏は2013年、グラミー賞の技術賞を受賞しています。梯さんのお話は後の取材記で書かせてもらおうと考えています。


■ 推薦アルバム:『RIT』(1981年)/ リー・リトナー

インストロメンタルが多いリー・リトナーのアルバムの中、歌物が半分を占めるアルバム。ビルボートチャートで20位というリトナーキャリアで最高位となった。ボーカリストはエリック・タッグやビル・チャンプリンが参加。第24回グラミー賞の最優秀ポップ・インストロメンタル・パフォーマンス賞にノミネートされるなど、非常にポップ性の高いアルバムとなっている。

推薦曲:「ミスター・ブリーフケース」

ポップ性の高いアルバムを象徴する曲。イントロでオーバーハイムOB-Xaの音が聴ける。この音こそが「オーバーハイムの音」といっていいほどのオーバーハイムを象徴する音。 ウエザーリポート「バードランド」のイントロ、ラリル・メイズのあの笛の音、ヴァン・ヘイレン「ジャンプ」のイントロ音など、オーバーハイムを代表する音は数あれど、このホーン系の音もオーバーハイム、ワンアンドオンリーの音といえる。アタックタイム抑え気味の粘りのあるホーン系の音がこのイントロの全てであると言い切りたい。それほど素敵なイントロです。エリック・タッグが唄う1982年のアルバム『ドリーム・ウォーキン』の「ノー・ワン・ゼア」という曲でも「ミスター・ブリーフケース」のイントロそっくりな音色で間奏部分を弾いています。よほどこの曲がお気に入りだったのか、周囲からのリクエストによるものかは謎です。

■ 推薦アルバム:『アイソレーション 』(1984年)/ TOTO

大成功アルバム『聖なる剣』の次作となったアルバム。ソウルフルなタッチのボーカリスト、ボビー・キンボールからハード・ロックタイプのファギー・フレデリクセンに替わり、トトの持つある種の黒さが消失。普通のロックバンドになった印象が強い。また、黒っぽさの一翼を担っていたベーシスト、デビッド・ハイゲントからポーカロ兄弟のマイク・ポーカロに替わってしまう。ジョジーボージーのようなタッチの曲や隙間を生かした楽曲が姿を消した。バンドの顔であるボーカリストとリズムの要であるベーシストの変更は栄華を極めたトトに迷走するきっかけを作ってしまうことになります。

推薦曲:「ストレンジャー・イン・タウン」

演奏面では西海岸トップクラスは言うまでもなく、キーボード的にはデビッド・ペイチとスティーブ・ポーカロが健在だけに素晴らしいサウンドを作っている。この時期になるとMIDI機能(前述)を有したシンセサイザーが主流になるため、シンセ1台で音色を制作するという発想は薄れてくる。84年のスティーブ・ポーカロのインタビューによると複数のシンセサイザーをMIDIで繋げてブラスやストリングスなどの音を作っている。そのシンセサイザーのリストにはオーバーハイムのエクスパンダーも含まれていたし、トトのライブではオーバーハイムのエクスパンダー数台がキーボードスタンドに積み上げられていた。ペイチのスキャットの後に出てくるブラスサンドはまさにその典型と考えられる。オーバーハイムのエクスパンダーは私も使用していたが音色の00番にTOTO HORNというブラス音がクレジットされていた。


今回取り上げたミュージシャン、アルバム、推薦曲、使用鍵盤

  • アーティスト:リー・リトナー、TOTO
  • アルバム:「RIT」「アイソレーション」
  • 曲名:「ミスター・ブリーフケース」「ストレンジャー・イン・タウン」
  • 使用楽器:オーバーハイムOB- Xa、エクスパンダーなど
 

コラム「sound&person」は、皆様からの投稿によって成り立っています。
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音楽ライター / シンセ鍵盤卿

高校時代よりプログレシブロックの虜になり、大学入学と同時に軽音楽部に入部。キーボードを担当し、イエス、キャメル、四人囃子等のコピーバンドに参加。静岡の放送局に入社し、バンド活動を続ける。シンセサイザーの番組やニュース番組の音楽物、楽器リポート等を制作、また番組の音楽、選曲、SE ,ジングル制作等も担当。静岡県内のローランド、ヤマハ、鈴木楽器、河合楽器など楽器メーカーも取材多数。
富田勲、佐藤博、深町純、井上鑑、渡辺貞夫、マル・ウォルドロン、ゲイリー・バートン、小曽根真、本田俊之、渡辺香津美、村田陽一、上原ひろみ、デビッド・リンドレー、中村善郎、オルケスタ・デ・ラ・ルスなど(敬称略)、多くのミュージシャンを取材。
<好きな音楽>ジャズ、ボサノバ、フュージョン、プログレシブロック、Jポップ
<好きなミュージシャン>マイルス・デイビス、ビル・エバンス、ウェザーリポート、トム・ジョビン、ELP、ピンク・フロイド、イエス、キング・クリムゾン、佐藤博、村田陽一、中村善郎、松下誠、南佳孝等

 
 
 
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