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シンセサイザー鍵盤狂 漂流記 パトリック・モラーツ編 ~音楽を彩った電気鍵盤とシンセ名盤の数々~ その6

2020-07-25

テーマ:sound&person

今回取り上げるのはパトリック・モラーツ(Patrick Philippe Moraz)。イエスの「リレイヤー(Relayer)」のみに参加したキーボーディストです。彼の残したアルバムやキーボードプレイの聴きどころ、名曲をご紹介します。

パトリック・モラーツ資料

スイス国籍のパトリック・モラーツは1971年、イギリスでメインホースを結成し、アルバムデビュー。1974年に脱退したリック・ウェイクマンの後任でイエスに加入。アルバム「リレイヤー」を制作。イエス脱退後、ソロアルバム「ザ・ストーリー・オブ・アイ(The Story of I)」、セカンドアルバム「アウト・イン・ザ・サン(Out in the Sun)」、「Ⅲ」をリリース。また、イエスの元ドラマーのビル・ブルーフォードと制作したアルバム「ミュージック・フォー・ピアノ・アンド・ドラムス(Music for Piano and Drums)」(1983年)もリリースするなど、1つの括りに収まらない多様性を持ったミュージシャンといえます。

パトリック・モラーツ 『The story of I』(1976年)

パトリック・モラーツ&ビル・ブルーフォード 『Music from piano and drum』(1983年)

■パトリック・モラーツの音楽性

パトリック・モラーツはブラジル音楽にルーツを持つミュージシャン。イエスのメンバーとどう折り合いをつけたのかは興味深いものがあります。

■パトリック・モラーツ / 使用機材

ミニモーグ・シンセサイザー、フェンダー・ローズ・エレクトリック・ピアノ、メロトロン、生ピアノなど。

MiniMoog synthesizer(イメージ)

MiniMoog synthesizer(イメージ)

■パトリック・モラーツのミニモーグプレイについて

パトリック・モラーツも前回のヤン・ハマー同様、ミニモーグ・シンセサイザーの鍵盤左側のホイールを操作する音程を上げたり、ビブラートをかけるベンディングプレイを得意としています。しかし、ギターライクなそれではなく、ウェイクマンよりもスマートで洗練されており、モラーツの音楽的ルーツがブラジルであることにも起因していると思われます。


■推薦アルバム:『リレイヤー (イエス)』(1974年)

推薦曲:『錯乱の扉(The Gates of Delirium)』『サウンドチェイサー(Sound Chaser)』

ジャケットはロジャー・ディーン制作。イエスの中でも評価の高いアートワークです。収録曲は3曲のみ(後のリマスター盤ではSOONという曲が追加)。
イエスの曲作りは『リレイヤー』の前作、『海洋地形学の物語(Tales from Topographic Oceans)』から綻びが出始めているという印象があります。『危機(Close to the Edge)』や『こわれもの(Fragile)』に比べると曲が今一つという感が否めません。イエスのような緻密で複雑な楽曲を持ち味とするバンドでは、楽曲中のキーボードのフレーズやリフも需要な要素になります。「燃える朝焼け(Heart of the Sunrise)」でのシンセサイザーのリフ(フレーズ)などはまさにイエスの真骨頂と云えるもので楽曲を引き立てる軸のような役割を担っていました。あのシンセサイザー・リフを聴けば、ギタリストが考えたものではなく、リック・ウェイクマンから出たというのが分かります。そういう意味で『リレイヤー』には楽曲を引き立てる印象的なリフはあまり見当たりません。しかし、演奏的に見れば素晴らしい箇所も多く散見します。

「錯乱の扉」では『危機』を思わせるイントロからポルタメントをかけた口笛調の鋸歯状波(ノコギリ波)による細めの音でソロをとっています。

「サウンドチェイサー」のイントロではこれまでイエスの鍵盤屋が使っていなかったフェンダーローズピアノ(電気ピアノ)による透明感溢れるサウンドが聴けます。また、ミニモーグによるソロでは鋸歯状波でベンドを多用しています。終盤にはスティーブ・ハウがペダル・スティールで弾いているのかと思いきやミニモーグでベンド設定を長くとった(ポルタメントか?)ボトルネックを思わせるソロを弾いています。モラーツはウエイクマンとは違う位相でイエスミュージックに新風を吹かせました。


■推薦アルバム:『アウト・イン・ザ・サン』(1977年)

推薦曲:「アウト・イン・ザ・サン(Out in the sun)」「シルバースクリーン(Silver screen)」「テンタクルス(Tentacles)」

私の大好きなアルバム。モラーツがやりたかった音楽はこれだったのか!と感じる楽曲が並びます。冒頭からイエスの音楽をやっていた人とは思えません。ブラジルの陽光溢れる優良な楽曲が並びます。海岸ドライブにドハマり。強力にこのアルバムをお薦めします。
「アウト・イン・ザ・サン」はサンバをベースにした名曲。イントロのポリシンセが鳴ったとたん、リオデジャネイロの景色が…見えてきます。

キラキラしたシンセサイザーの音が曲中に溢れ、楽曲を演出しています。矩形波によるベンディングを生かしたブラジリアンなシンセソロも素敵です。このアルバムは楽曲が素晴らしく、ボーカリストも曲にピッタリとはまっています。イエスの難解さは微塵もなく、サンバなリズムとフレーズに身を任せていると、この人は本当にイエスの音楽をやりたかったのかしら?と思ってしまいます。

「シルバースクリーン」「テンタクルス」の両曲もメロディーメイカーとしての才能を感じる美しい曲です。そこに「イエスのキーボーディスト」という影は見当たりません(^^♪


今回取り上げたミュージシャン、推薦アルバム、推薦曲名、使用シンセサイザー、キーボード

  • パトリック・モラーツ
  • アルバム /「リレイヤー」イエス、「アウト・イン・ザ・サン」パトリック・モラーツ
  • 曲名:錯乱の扉、サウンドチェイサー、アウト・イン・ザ・サン、シルバースクリーン、テンタクルス
  • 使用楽器:ミニモーグ、フェンダーローズ電気ピアノ、メロトロンなど

音楽ライター / シンセ鍵盤卿

高校時代よりプログレシブロックの虜になり、大学入学と同時に軽音楽部に入部。キーボードを担当し、イエス、キャメル、四人囃子等のコピーバンドに参加。静岡の放送局に入社し、バンド活動を続ける。シンセサイザーの番組やニュース番組の音楽物、楽器リポート等を制作、また番組の音楽、選曲、SE ,ジングル制作等も担当。静岡県内のローランド、ヤマハ、鈴木楽器、河合楽器など楽器メーカーも取材多数。
富田勲、佐藤博、深町純、井上鑑、渡辺貞夫、マル・ウォルドロン、ゲイリー・バートン、小曽根真、本田俊之、渡辺香津美、村田陽一、上原ひろみ、デビッド・リンドレー、中村善郎、オルケスタ・デ・ラ・ルスなど(敬称略)、多くのミュージシャンを取材。
<好きな音楽>ジャズ、ボサノバ、フュージョン、プログレシブロック、Jポップ
<好きなミュージシャン>マイルス・デイビス、ビル・エバンス、ウェザーリポート、トム・ジョビン、ELP、ピンク・フロイド、イエス、キング・クリムゾン、佐藤博、村田陽一、中村善郎、松下誠、南佳孝等

 
 
 
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