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FENDER STRATOCASTER 1954ー1982 Part1

2021-12-27

Theme:sound&person

■ FENDER STRATCASTER1955年製

ストラトの生産が54年秋から本格的に始まったが、生産ラインは整っておらず、仕様は54年製とあまり変わらない。しかしよく見ると、違う部分が見受けられる。

○ ネック

ヘッド・シェイプは面取りが少なくなり、角ばった形状。1966年のラージヘッドに移行するまで、大方この形状が基本となる。引き続き円形のストリングガイド。これはまだ手作業で1、2弦の通る溝を加工されていた(写真参照)。

円形ストリングガイド。2本の溝はハンドメイドで仕上げられている。

今年、Vintage Guitar Magazineにエリック・ジョンソンがブラウン・エッグの大きなストラトと表紙に収まったのを見た。このブラウンエッグの大きさは70年代のブレット・トラスロッド程の目立つ大きさ。そしてストラトのボディは今まで見たことがない程の細かい木目。サドルはかなり錆びているがメインテナンスは、エリックが気に入っているので万全であろう。ボリュームノブは交換した様な感じ。トーンノブは使われていない模様。特にミドルピックアップ用トーンノブは明らかに使用していないと思われる。以前、「ピックガードを変えたら気に入らない音になった」とエリックは発言している。ものすごい拘り様だ。

トラスロッドを入れて埋めた木材の通称、『ブラウンエッグ』。
54年製の中には、ひとまわり大きなブラウンエッグもある。

申し訳ない。話が脱線してしまった。

○ ボディ材質

重さの個体差はあまり変わらないがワンピースボディが多くなる。アッシュ材のため、木目がはっきりしている。

○ シンクロナイズド トレモロカバー

ここが54年製と違う外見から分かる仕様! 54年製の トレモロのバックカバーの弦を通す穴が『小さくて丸かった』が、僅か一年足らずで『楕円形』になった。(写真参照)。しかし楕円形になってもまだ物足りないプレイヤーは、トレモロカバーを一部分大胆にカットしている強者もいる。トレモロキャビティ内に製作年月を書いている事も前年から同じだ。

楕円形の穴に仕様変更。トレモロバックカバー。
私は外して演奏しているので写真のカバーはネジ止めされていない。位置はほぼ正確

○ 電装系

コントロール部はそれほど変化していないがこの年からピックアップの磁力が初年度より数値が倍になる。さらにポールピースの3弦、4弦の高さがどちらか高くなるが、54年製と55年製には、高さのばらつきがある。コンデンサーはワックスに浸した物で配線材もほぼ同じ。各ポットはスタックポール製。CTS製ポットの様な円形の溝がない底面がポイント。CTSは以後、現在に至るまで使用されるパーツなのでいずれ説明したい。

■ FENDER STRATCASTER 1956年製

極めてシンプルに変更を述べると『ボディ材がアッシュ材からアルダー材に変更になった年』だ。正確な時期までは解らないが、各パーツに記した数字を見ると組み込みは1956年初夏以降からの変更と見受けられる。

○ ネック

アルダーボディ材の1956年製からの変更でルックスで目新しい一番の違いは、ストリングガイド。丸型から代わり、金属をプレスした物に変化する。この波形のストリングガイド(写真参照)は以後長く使用されたが、若干の形状、材質、個数の変更が見られる。

1973年前後からテンションピンが二つになる。これは最期まで続いた。

また1956年製のペグには『クルーソンの一列刻印』が入る。通常なら1個につき2本のネジ。×6=12本。しかしフェンダー社は量端だけ2本つまり※4本で、普通の弦巻なら12個で固定されるところであるが、となりどなり※3個がくっついて計7本で固定されている。倹約家らしいレオの設計だ。今日に於いてクルーソン社はなくなり、代わって米個カスタム・ショップのペグはゴトーという日本の有名メーカーの作ったペグを使用している。きちんとJAPANと刻印されている。私の使用しているペグはよく見ると510と刻印があるゴトー・・・5・・・10と。

○ ボディ

アッシュからアルダーに変更する。アルダー材はアッシュ材より低コストで、加工がしやすく、軽い。音もプレイヤーからのお墨付き。と良いところだらけの感もあるが、フェンダー社サイドからはアッシュ材の方が良い音がして木目もしっかり分かる楽器向きな材と言われていた。しかしプレイヤーはアルダー材を好んだ。この辺りが今後のストラトキャスターの仕様に大きく影響する。

エリック・クラプトンに代表される『控えめかつ 押しの強い』音色を放つ ストラト サウンドの原点はアルダー材の56年製(serialNo.12073)『ブラウニー』から始まるのであろう。トレードマークのタバコの跡がネックの六弦側にしっかりある。しかし真似しないように。万が一、手放す時にかなり減額する買い取りになることが確実だ。メイプルネックの指板もほとんどのポジションで塗装が剥げている。
コンターも70年代後半の加工より50年代はかなり深くて広範囲のカットだ。

○ コントロール部

5年製とほぼ変わり無い。配線材も同じ様な材質だ。ピックアップの磁力も1955年製と、ほとんど違いがない。ポットは前年と同じくスタックポール社製。たまにボリュームポットを使い過ぎてCTSポットに交換した形跡のあるストラトも存在するが、オリジナルは丸い溝がない。CTSポットについてはまた機会をつくり紹介したい。

○ ブリッジカバー

これはクロームメッキ仕上げで、始めから付属しているが、カバーを着けた形でステージに立ったギタリストを見たことは記憶にない。ストラトのシンクロナイズド・トレモロ・ユニットのデザインはフロイト・ローズ・ユニットと比較しても、申し分ない極上のルックスだ。このようなカバーを着けたら演奏上リアピックアップ辺りで弾くのに衣服の保護になるかも知れないが、外見上、ガラリと変化がある部分だ。

次回、ストラトキャスターのメイプル指板の代表モデル1957年製仕様~ローズ指板に変更される1959年までを検証してゆこう。
なぜメイプル指板からローズ指板に変更したか?などを挙げたい。

お楽しみに♪


コラム「sound&person」は、皆様からの投稿によって成り立っています。
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Realize

リッチーブラックモアのアルバム『Diffcult to Cure』の『第9』アレンジを聴いてファンになり、『Spotlight Kid』を聴いてストラトキャスターに目覚める。以後様々なストラトを手にし、20年以上ストラトオンリーで毎月ライブ活動を行っている。
ストラトに対するこだわりは強く、『ギターマガジン』、米国誌『VINTAGE GUITAR MAGAZINE』に所有ストラトが掲載されたことがある。翻訳書として、2002年Fender Accessories Catalogue等に掲載されている『The Fender Stratocaster』第4版がある。
ストラトへの改良は外見からみたら何処を変えたかわからないのがポリシーである。

 
 
 

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