YAMAHAのURシリーズが、大きく変わろうとしている。
オーディオインターフェイスの定番機として、長年DTMユーザーに支持されてきたSTEINBERGの「UR22mkII」、そして後継機「UR22C」。特にUR22Cは、“初めてのオーディオインターフェイス”として圧倒的な知名度を持ち、DTM界隈におけるエントリーモデルの代名詞的存在となっていました。そんな中、2025年10月、STEINBERG/ヤマハは、従来のURシリーズを大きく再編。ソフトウェアブランドとしてのSTEINBERG、そしてハードウェアブランドとしてのYAMAHA。その整理の一環として、UR22Cは「URX22C」へと名称変更。さらに今回、新たに
という上位シリーズが発表されました。
しかし、このURXシリーズ。単なる“上位版UR”ではありません。実際に触ってみると、その思想は従来のURシリーズとはかなり異なります。
一言で言えば、
「音楽制作」「配信」「ライブ」「映像制作」までを1台で完結させる、“リアルタイム制作時代”のオーディオインターフェイス」
といった製品です。中でも特徴として
- 本体のみでDSPミキサー操作
- タッチLCD搭載
- PCレスに近いワークフロー
- 配信特化機能
- Scene Recall
- Stream Deck連携
など、従来の“DTM用オーディオIF”の枠を大きく超えた設計がされています。
今回は、そんなURX22について詳しく見ていきましょう。
目次
1. YAMAHA URXシリーズ比較表
URX22 / URX44 / URX44V 比較
| 項目 | URX22 | URX44 | URX44V |
|---|---|---|---|
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|
| ターゲット | 配信/DTM | 本格制作 | 映像/配信 |
| ポジション | 次世代 2ch | 次世代 4ch | フラッグシップ |
| 入力数 | 2 + AUX | 4 + AUX | 4 + AUX |
| 出力数 | 2 | 4 | 4 |
| USB | USB-C ×2 | USB-C ×2 | USB-C ×2 |
| DSP ミキサー | 本体操作 | 本体操作 | 本体操作 |
| タッチ LCD | ○ | ○ | ○ |
| Scene Recall | ○ | ○ | ○ |
| Stream Deck 連携 | ○ | ○ | ○ |
| Auto Gain | ○ | ○ | ○ |
| Clip Safe | ○ | ○ | ○ |
| Ducker | ○ | ○ | ○ |
| 内部 DSP Mixer | 12ch | 14ch | 14ch |
| 最大サンプルレート | 192kHz | 192kHz | 192kHz |
| マイクプリ | 新 URX PRE | 新 URX PRE | 新 URX PRE |
| 入力 DR | 115dB | 115dB | 115dB |
| 出力 DR | 125dB | 125dB | 125dB |
| microSD 録音 | × | ○ | ○ |
| HDMI 入力 | × | × | ○ |
| PC レス運用 | ○ | ○ | ○ |
| 想定競合 | MOTU M2 | Audient | RME/UAD |
各モデルの位置づけ
- UR22mkII: 長年DTM入門機として定番だった旧世代モデル。
- URX22C: 従来URシリーズを継承した現代的エントリーモデル。
- URX22: 配信・DSP・リアルタイム制作に特化した次世代2chモデル。
- URX44: 本格制作やライブ用途に対応する拡張型モデル。
- URX44V: 映像制作やハイブリッドライブに対応するフラッグシップモデル。
2. 実機紹介
外装及び付属品
- スタートガイド
- セーフティガイド
- STEINBERG ソフトウェアライセンスカード
(Cubase AI、WaveLab Cast、Basic FX Suite、STEINBERG Plus) - USB-C – USB-C ケーブル(USB 2.0、1.5 m)

サイズ感
寸法(幅245㎜ 高さ 78㎜ 奥行き182㎜)
URX22Cと比較するとこんな感じ。

正直、手に持った瞬間からしっかりとした作りを感じていましたが、こうやって並べてみるとより重厚感が増します…!個人的には、機材はコンパクトよりもしっかりと存在感を感じるダイナミックな方が好きなので、見た目からして好みです(笑)
3. URシリーズの立ち位置が変わった!?
従来のURシリーズは、
- PC中心
- DAW中心
- DTM用途中心
という設計でした。
一方、新しいURXシリーズは、
- 本体中心
- DSP中心
- 配信/ライブ/映像対応
へと大きく方向性を変えています。
つまり、URX22は単なる“UR22Cの上位版”ではなく、
「制作環境そのものを変えるための製品」
として登場したわけです。
4. 機能紹介
最大の進化は「本体だけで完結するDSPミキサー」
URX22最大の特徴はここです。
例えば、従来のオーディオインターフェイスでマイク録音を行う場合、基本的な流れは以下のようになります。
マイク→オーディオインターフェイス→PC→DAW→ソフト上で操作
そのため、入力ゲイン調整やエフェクト設定、モニタリングなど、多くの操作はPC側で行う必要がありました。しかしURX22は違います。
マイク→URX22本体→DSP処理→録音 / 配信 / モニタリング
- 本体前面の4.3インチのタッチLCD
- 4つのSCREENノブ
- TOUCH AND TURNノブ

これらを組み合わせることで、PCを開かずに本体のみでDSPミキサーやエフェクト操作が完結します。この「TOUCH AND TURN」ノブが非常に優秀で、画面上のパラメーターをタッチした後にノブを回すことで、直感的かつ精密な操作が可能。単なるタッチUIではなく、“物理操作感”をしっかり残している点も好印象です。
実は“2in2out”ではない
URX22を単なる「2in/2outのIF」と考えると、この製品の本質を見誤ります。物理的な入出力だけを見ると、
- 2 Mic/Line入力
- AUX入力
- 2系統ヘッドホン出力


という比較的シンプルな構成。しかし内部では、URX22は12チャンネルのDSPミキサーとして動作しています。簡単に流れを書くと
Mic 1
Mic 2
AUX
PC Audio
FX Return
↓
内部DSP Mixer(12ch)
↓
MAIN / STREAM / PHONES

つまり、
- DAW音声
- マイク
- 配信音声
- リファレンス音源
- AUX入力
などを、本体内部で柔軟にミキシング可能。例えば、

- DAWで制作しながら
- 別PCからリファレンス再生
- Discord通話
- マイクトーク
- 配信
を同時進行するような複雑な環境にも対応できます。
これは従来の「DTM用IF」というより、
“小型デジタルミキサー兼オーディオハブ”
に近い思想です。
Standard Mode / Simple Modeの切り替え機能が便利
また、URX22には用途に応じて切り替えられる「Standard Mode」と「Simple Mode」が搭載されているのも便利でした。 Standard Modeでは細かな音声設定やルーティングが可能で、本格的なDTMや配信環境にも対応できます。一方でSimple Modeは、初心者でも直感的に扱えるシンプルな設計になっており、接続してすぐに録音や配信を始められる手軽さがあります。 用途やスキルに合わせて使い分けられる点が、長く使いやすいポイントだと感じました。
■ URXシリーズ チュートリアルビデオ #1 Standard Mode
■ URXシリーズ チュートリアルビデオ #2 Simple Mode
配信・VTuber・ライブ用途との相性が非常に強い
URX22は、DTM用途だけでなく、リアルタイム性を求める用途との相性が非常に良いです。
- ■ Auto Gain
- マイク入力のゲインを自動最適化。
- ■ Clip Safe
- 突発的な大音量による音割れを防止。
特に配信やポッドキャストではかなり便利です。 - ■ Ducker機能

配信者向けとして特に面白いのがDucker機能。例えば、マイクで話した瞬間にBGMを自動で下げるといった処理が可能。ライブ配信やゲーム実況との相性はかなり良いでしょう。- ■ Scene Recall

URX22では、DSP設定をシーンとして保存可能。
つまり、
- 配信用
- DTM用
- ライブ用
- ボーカル録音用
などを瞬時に切り替えられます。外出先でも、本体だけですぐにセッティングを呼び出せるのは非常に便利です。
マイクプリ性能は完全に別次元
URX22では、マイクプリ性能も大きく進化しています。
< 主なスペック >
- ゲイン幅: 78dB
- EIN(マイクプリアンプから出るノイズ): -128dBu
- 入力ダイナミックレンジ: 115dB
- メイン出力ダイナミックレンジ: 125dB
特に125dBという出力ダイナミックレンジはかなり優秀。従来URシリーズとは、明確にグレードが違います。
ダイナミックレンジ比較
| 入力 | 出力 | |
|---|---|---|
| URX | 115dB | 125dB |
| URX-C | 102dB | 106dB |
| UR-MK3 | 106dB | 107dB |
実際に聴いてみても、高域の伸びや空間表現、微細なニュアンスはかなり向上しています。
32-bit/192kHz対応AD/DA
URXシリーズは全モデル32-bit/192kHzに対応。もちろん通常制作なら48kHzや96kHzで十分ですが、
- ハイレゾ制作
- フィールド録音
- 映像制作
までを視野に入れると、この余裕はありがたいです。
DSPエフェクトもかなり本格的
内蔵DSPでは、
- EQ(4バンドパラメトリック)

- コンプレッサー

- ゲート

- リバーブ・ディレイ

- アンプシミュレーター・ピッチ補正

などを搭載。しかも、すべてDSP処理。つまりPC負荷ゼロです。低レイテンシー環境で配信や録音を行える点はかなり強力。
5. あえて“PC用ミキサーソフトがない”
面白いのがここ。従来URシリーズには「dspMixFx」が存在しました。しかしURXシリーズには、現時点でPC用ミキサーソフトが存在しません。これは不便にも見えます。ただ実際には、
「PC画面を開かず、手元で即座に音を調整する」
という思想を徹底した結果なのでしょう。ここは好みが分かれるポイントかもしれません。
6. Stream Deck連携にも対応
URXシリーズは、Device Center経由でElgato Stream Deck連携にも対応。

つまり、
- シーン切り替え
- ミュート
- DSP操作
などをStream Deckから呼び出せます。配信環境との親和性はかなり高いです。
7. 性能測定(おまけ)
実際にRMAA(RightMark Audio Analyzer)を使用してオーディオ性能を測定しました。
なお、測定結果はPC環境・接続状況・ドライバ設定などによって多少変動する場合があります。
※RMAAはノイズ・歪み・周波数特性などを数値化して評価する音質測定ソフトです。

ノイズレベル(機材そのものが出す「サー」といった音の少なさを表す数値)
数値が低い(マイナスが大きい)ほど静かで高性能です。
メリット
- マイク録音時のホワイトノイズが少ない
- 配信で声がクリアに聞こえる
- 小声やアコギの繊細な音も綺麗に録りやすい

今回の測定では -135.2dB と非常に優秀な結果でした。実際に使用していてもノイズ感はかなり少なく、ゲインを高めに設定した状態でもクリーンな印象です。特にコンデンサーマイク使用時や、ナレーション・弾き語りのような静かな音を扱う場面では、この静けさがかなり活きてきます。 また、録音後にEQやコンプレッサーで音を加工した際も、余計なノイズが目立ちにくく、後処理がしやすいのも好印象でした。配信・DTM・ポッドキャストなど、長時間マイクを使う用途とも相性が良さそうです。
ダイナミックレンジ(小さい音から大きい音まで、どれだけ余裕を持って扱えるかを示す数値)
メリット
- 小さい音のニュアンスが潰れにくい
- 音割れしにくい
- 演奏の強弱を自然に表現できる

今回の測定では 131.1dB と非常に広い結果でした。実際に聴いてみても、音の余裕感や空間表現の豊かさを感じやすく、特にアコギやピアノなどの生音系では細かなニュアンスまでしっかり再現される印象です。 例えば、弱いピッキングから強いストロークまでの変化や、ボーカルの息遣い・抑揚なども自然に表現しやすく、音が窮屈になりにくい感覚があります。映像制作やBGM用途など、細かな空気感を重視したい場面にも向いていそうです。
THD(全高調波歪率)(音がどれだけ歪まずに出力されているかを表す数値)
低いほど原音に忠実でクリアになります。
メリット
- 音の濁りが少ない
- ボーカルがクリアに聞こえる
- 長時間聴いても疲れにくい

測定結果は 0.00051% と非常に低歪み。数字だけ見ると少し分かりにくいですが、簡単に言えば「余計なクセ感が少なく、自然に聴こえやすい」という方向性です。 実際に試してみても、特にボーカルやピアノ、高域系の音で透明感があり、細かな残響や空間の広がりも綺麗に感じられました。長時間の編集作業やミックスでも耳が疲れにくく、モニタリング用途との相性も良い印象です。
IMD(相互変調歪み)(複数の音が同時に鳴った時の濁りやすさを表す数値)
低いほど音の分離感が良くなります。
メリット
- 楽器数が多くてもごちゃつきにくい
- ボーカルが埋もれにくい
- ミックス時に各楽器の位置が分かりやすい

今回の測定では 0.00185% とかなり優秀な結果でした。実際に音数の多い楽曲を再生してみても、各パートの分離感が良く、定位や奥行きを把握しやすい印象です。 特に最近のポップスや劇伴系のようなトラック数の多い楽曲では、ギター・シンセ・ボーカルなどが重なっても比較的見通しが良く、ミックス確認用としても扱いやすく感じました。配信でBGMとマイク音声を同時に扱う場面でも、この分離感の良さは快適さにつながりそうです。
実際に使用していても、「配信向け機能が豊富なだけの機材」ではなく、純粋なオーディオインターフェイスとしてもかなり丁寧に作り込まれている印象を受けました。配信・DTM・ボーカル録音・ライブ用途など、幅広いシーンで扱いやすい性能に感じます。
8. 競合製品と比べるとどうなのか?
URX22の面白いところは、単なるエントリーURシリーズの延長ではなく、RMEやUniversal Audio、MOTU、Audientなどのハイエンド機器の領域へ踏み込もうとしている点です。ただし方向性はかなり違います。これは賛否両論あるかもしれませんが、個人的には下記のようなイメージです。
- 初心者向け:UR22C
- 中級者向け:MOTU Mシリーズ/Audient
- 上級者向け:RME/UAD
- 配信/DSP/ライブ特化:URX
RMEのような超低レイテンシー特化とも違う。UADのようなプラグイン特化とも違う。
URXは、
「リアルタイム制作ワークフローそのもの」
にフォーカスしている印象があります。
総評
URX22は、従来のURシリーズの延長線上にある製品ではありません。むしろ、
- DSPミキサー
- 配信機材
- 小型デジタルミキサー
- オーディオインターフェイス
これらを融合した、新しい制作機材と言った方が近いでしょう。特に、
- 配信
- VTuber
- ポッドキャスト
- ハイブリッドライブ
- 映像制作
- DTM
を横断するようなユーザーにはかなり刺さる製品です。
「PC中心の音楽制作」から、「リアルタイム中心の制作環境」へ。
URX22は、その変化を象徴する1台なのかもしれません。









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