サウンドハウスのページを開いているということは、少なからず音楽に興味をお持ちのことかと思います。でも、その興味は楽器演奏でしょうか。それとも、DAC(簡単に言えばいい音で音楽を聴くための機材)等を使った音楽鑑賞でしょうか。
最近では様々なものの敷居が低くなっていることもあり、今回はみなさんに「DTMを始めてみませんか?」というお話をしていきたいと思います。
DTM(Desktop Music)と聞くと「作曲」が思い浮かんで、「なんか難しそう…」と感じるかもしれませんが、DTMとは作曲だけではありません。極端な話、曲のコピーや演奏、録音などもDTMに含まれます。そこで今回は、DTMとは何なのか?というところから、最低限必要なもの、一体何ができるのかを紹介できればと思います。最後には節約方法も紹介しているので、沼にはまる前にぜひ読んでみてください。
DTMって何?作曲しないといけないの?
多くの人はDTMと聞くと、いいパソコンにいい機材、難しい理論を学んだ上で行う作曲を思い浮かべるかもしれません。これも間違ってはいないのですが、個人的にはもっとカジュアルに考えていいと思っています。もちろん、防音室も必須ではないですし、誰でも始めることができます。
たとえば、何かしらの楽器で曲をコピーしたいとき。みなさんは物理的なアンプやレコーダーを使っていますか?ここで、アンプやレコーダーをソフトウェアに置き換えてしまえば、これもひとつのDTMと言えます。安価に様々なアンプを試すことができたり、録音が簡単になったり、一度MIDI(電子楽器の規格の一つ)に起こすことでコピーが早くなったりと、メリットはたくさんあります。他にも、プラグインを使えばボーカロイドでのカバー(リミックス)や、練習する際の音作りの幅が大きく広がるなど、可能性は無限大です。
もちろん、作曲にトライするのもよいと思います。難しく考えなくても、最新のソフトウェアには、作曲を助けてくれるアシスタント機能が付いているので、楽しみながらストレスフリーに挑戦することができます。仮にエレキギターしか持っていない、エレキベースしか弾けないといった場合でも、外部プラグイン(音源ソフト)を使えば、一人でバンド演奏も可能になるわけです。当然、何も楽器を持っていない、何も弾けないという場合でも大丈夫です。
それでは、初めて触れる場合には何から揃えればよいのでしょうか。
DTMに必要なもの
DTMにかかる費用は、正直ピンキリです。有名な作曲家やボカロPであれば数百万円かけることも珍しくないでしょう。反対に、数万円で人気曲が生まれてしまう可能性もあります。ですが、まずは取っ掛かりが大切だと思います。そこで、一通り必要なものを取り上げながら、紹介していきたいと思います。
パソコン
まずは、パソコンが必要です。ノートパソコンでもデスクトップパソコンでも大丈夫。最近ではタブレットでDTMを行う方もいるようですが、使い勝手を考えるとパソコンがおすすめです。
性能は最新モデルやゲーミングPCでなくても、普段使いできるものであれば十分です。具体的には、CPUがCore i5の第10世代以上、メモリ16GB、ストレージ容量512GBあれば、不自由なく使えると思います。もちろん、性能がいいことに越したことはないですけれどね。
ちなみに自分は、省電力版のプロセッサーが搭載されたメモリ16GB、ストレージ512GBのものを使っています。普段、ギターの練習をしたり、軽くリミックスする程度であれば困ることはないです。ご自宅にパソコンがある方は、相当古いものでない限りここは読み飛ばして大丈夫です。
DAW(Desktop Audio Workstation)
DAWは簡単に言えば、DTMのために作られたソフトウェアです。様々なメーカーから発売されていますが、個人的には「好きなアーティストと揃えたい」「使っている人が多い」「体験版がよかった」など、直感で決めてしまっていいと思います。自分も好きなアーティストが使っていたという理由で同じものを買いました。最近では、昔ほどの機能的な差はありません。ただ、Logic ProなどMac OSでしか使えないDAWもあるので、Windowsユーザーは要注意です。
以下は、おすすめ・定番のDAWです。
STEINBERG ( スタインバーグ ) / Cubase Artist 14 通常版 DAWソフトウェア ダウンロード納品
国内ユーザーが多いので、困ったらこれでいいと思います。何かあってもたいてい解決策が載っています。
ABLETON ( エイブルトン ) / Live 12 Standard 電子メール納品
海外ではかなり有名ですが、国内ではまだマイナーかも。
IMAGE-LINE ( イメージライン ) / FL STUDIO 21 Signature DAWソフトウェア
珍しい買い切り型。バージョンアップが永久無料です。
オーディオインターフェイス
オーディオインターフェイスとは、パソコンとマイクや楽器を繋ぐための中間機器です。マイクや楽器などの音をパソコンに入力するほか、スピーカーやヘッドホンに出力する際にも役立ちます。また、これをパソコンに接続することで、パソコンへの処理の負荷が軽減され、動作が軽くなります。サウンドハウスでは 選び方ガイド もあるので、困ったら参考にしてみてください。
以下は、おすすめ・定番のオーディオインターフェイス(3万円以下)です。
UNIVERSAL AUDIO ( ユニバーサルオーディオ ) / VOLT 2 USB Recording Studio オーディオインターフェイス
付属プラグインたくさん。アナログライクになるので好みは分かれるかも。
MOTU ( モツ ) / M2 オーディオインターフェイス
入出力ともに、3.5万円で手に入るとは思えないものです。余裕があれば上位機種のM4もあり。
SSL (Solid State Logic) ( ソリッドステートロジック ) / SSL2MKII USBオーディオインターフェイス
4Kボタンを押すことで、録音時に独特の味付けができます。音作りが楽になりますね。
SSL (Solid State Logic) ( ソリッドステートロジック ) / SSL2+MKII USBオーディオインターフェイス
長期的に見たら、MIDI端子が付いている「プラス」の方がお買い得です
リスニング機材
大まかにくくりましたが、許してください。ここでは、スピーカーやヘッドホン、イヤホンを指します。
本当は「モニター」と付く、原音に忠実なものがいいとされています。基本的に音はメーカーごとの色付けが施されているので、加工されていないそのままの音を聴くためには専用の機器が必要になります。
ただ、初めから高価なものを買う必要はないですし、まずは気に入ったものを使えばいいと思います。本当はモニタースピーカーがベストですが、住宅環境の問題で大きな音が出せなければ、ヘッドホンやイヤホンで十分です。自分はヘッドホンが苦手なので、イヤホンを使い続けています。
以下は、おすすめ・定番の機材です。スピーカーは、ご自宅での使用を想定し、比較的小型のモデルを挙げています。
YAMAHA ( ヤマハ ) / HS3 パワードモニタースピーカー
上位モデルの5インチだと、音量的に厳しいかと思います。
CLASSIC PRO ( クラシックプロ ) / CPH7000 密閉型モニターヘッドホン
AKG ( アーカーゲー ) / K240 Studio セミオープン型ヘッドホン 3年保証モデル K240 ST
audio technica ( オーディオテクニカ ) / ATH-M50x ブラック 密閉型モニターヘッドホン
SHURE ( シュア ) / SE215-CL-A クリア
自分はこれを10年ほど使っています。
CLASSIC PRO ( クラシックプロ ) / CPE4000 高音質カナル型イヤホン
最近発売されたコスパ最高のイヤホンです。
プラグイン
ギターしか持っていないけれど、ベースの音が欲しい。ギターのアンプを色々試してみたい。そんなときに役立つのがプラグイン(拡張ソフトウェア)です。
(厳密には違いますが)プラグインを導入することで、ギターやベース、ドラムなどの音がシミュレートできるようになります。要は、実機が無くてもパソコン上でリアルな音が出せるわけです。また、アンプシミュレーターなどを購入すれば、超高級アンプを手軽に使うこともできます。最近では、AI技術を使ったものや、買い切りでたくさんの機能が使えるものも多いです。
AHS ( エーエイチエス ) / Synthesizer V Studio 2 Pro スターターパック
歌声合成ソフトウェアです。
XLN AUDIO ( エックスエルエヌオーディオ ) / Addictive Keys: Trio Bundle 簡易パッケージ版
ピアノ音源の定番。
IK MULTIMEDIA ( アイケーマルチメディア ) / MODO BASS 2 ダウンロード納品
ベース音源の定番。
XLN AUDIO ( エックスエルエヌオーディオ ) / Addictive Drums 2: Custom Collection ダウンロード納品
ドラム音源の定番その1。
IK MULTIMEDIA ( アイケーマルチメディア ) / MODO DRUM 1.5 ダウンロード納品
ドラム音源の定番その2。
IK MULTIMEDIA ( アイケーマルチメディア ) / AmpliTube 5 MAX v2 ダウンロード納品
アンプシミュレーターの定番。これ1つで400種類以上の機材が使えます。
IK MULTIMEDIA ( アイケーマルチメディア ) / TONEX Max ダウンロード納品
最近話題のAIアンプシミュレーター。
その他
他にも実機のマイクやMIDIを打ち込むためのキーボードなど様々なアイテムがありますが、これらは必要になってから、あるいは必要なものだけを購入すればいいと思います。自分は楽器(ギター・ベース)がメインなので、マイクは持っていません。打ち込み用のMIDIキーボードは、もともと持っていた電子キーボードを転用しています。
「ゴッパー」とも呼ばれる超定番マイク。ボーカル録音の定番ですが、正直何にでも使えると思います。
SM58の楽器版と考えてもらえばいいと思います。
こちらもボーカルマイクの定番。少し高価ですが、国内外問わず評価はかなり高いです。
CLASSIC PRO ( クラシックプロ ) / CM5S ダイナミックマイク
サウンドハウスのオリジナルブランド「Classic Pro」から出ているマイクです。価格の3~5倍の価値はあると思います。
KORG ( コルグ ) / microKEY2-37 MIDIキーボード USB 37鍵
↑基本はそこまで鍵盤数はいらないと思いますが、用途に応じて選んでみてください。
CASIO ( カシオ ) / Casiotone CT-S200 ブラック 61鍵キーボード
↑自分が実際に使っているキーボードです。

節約方法
ここまで見てきたように、こだわろうとすればすぐに10万円は超えてしまいます。では、できる限り費用を抑えながら楽しむにはどうすればいいのでしょうか。ここでは「節約」重視で紹介するため、多少の無理はあるかもしれません。また、プロユースには適しているとは言い難いです。それでも、プロも使っている方法や、今有名な作曲家がはじめはこうしていた、というものもあるので、ぜひ見ていってください。
DAWやプラグイン付属のオーディオインターフェイスを買う
オーディオインターフェイスの中には、購入時にDAWの簡易版やプラグインが付属しているものがあります。見た目や性能も重要ですが、コスパを考えるならば「付属品」にも注目してみるといいかもしれません。自分が買ったオーディオインターフェイスには「Cubase LE」と複数のプラグイン音源が付属してきました。なので、本格的なDAWを買うまでは、簡易版のDAWを使い続けていました。
DAW付属のプラグインを最大限に活用する
製品版のDAW(特に中級グレード以上のもの)には、標準で優秀なプラグインがついています。もちろん追加でプラグインが必要なら買った方がいいです。気分的にも費用対効果が見込めるなら、なおさらです。しかし、始めたての頃はDAW付属の「純正プラグイン」を使いこなすことから始めると、費用をかなり抑えられます。純正と言えども、侮ることなかれ。
YouTubeなどにチュートリアルがあがっているので、まずは使いこなせるようになってみましょう。それでもほしい場合にはぜひ外部プラグインを検討してください。(今回は省略しますが、無料のプラグインでも優秀なものはたくさんあります。)
DAWは学割で買えるときに買っておこう
これは、専門学生・大学生・大学院生までの特権です。最大半額で買うことができるので、学生であれば認証は必要ですが、アカデミック版を購入しましょう。
まとめ
いかがでしたでしょうか。一見、敷居の高いDTMが、より身近なものに感じられたのではないでしょうか。
個人的な意見にはなりますが、プロとして仕事にするにもアマチュアとして趣味でやるにも、「楽しさ」が一番だと思っています。自分も趣味の範疇内ではありますが、楽しむことだけを考えてDTMに触れています。
この記事が、みなさんがDTMを始めるきっかけになれば幸いです。興味が湧いた方はぜひDTMerへの第一歩を踏み出してみてください。
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