イングヴェイ・マルムスティーン。ニコロ・パガニーニのバイオリン技巧から影響を受けたとされるクラシカルな旋律と、レガートやスウィープピッキングを駆使した速弾きによって「ネオクラシカル・メタル」というジャンルを確立したギタリスト。
1984年『Rising Force』でのデビュー以来、インストゥルメンタル作品も含めれば21枚のオリジナルアルバムをリリースしている彼ですが、アルバムやツアーごとにバンドメンバーが大きく変わることでも有名。そのせいで、同じイングヴェイ好きでも、どのアルバムの、どのメンバーが好きという話は意外と合わないことも……。
そんなわけで(?)今回は、筆者が好きなイングヴェイバンドのボーカリストを楽曲と共に紹介していこうと思います!
■ Mark Boals / Wield My Sword
初期3部作の最後を飾る名盤『Trilogy』でボーカルを務め、その後も『Inspiration』や『Alchemy』などでたびたび登板しているのがマーク・ボールズ。イングヴェイの他にもウリ・ジョン・ロートの作品に参加したり、トニー・マカパインらとバンドRing of Fireを結成したりとネオクラ = 彼の声と言っても過言ではない人物です。
その圧倒的な音域と、ときにオペラチックとも評される倍音豊かなハイトーンはイングヴェイと組んだ他のボーカリストはもちろん、メタルというジャンル全体で見ても類稀なボーカリストと言えると思います。
■ Mike Vescera / Crash And Burn
90年代の作品『The Seventh Sign』、『Magnum Opus』に参加したボーカリスト。イングヴェイと組む以前はLOUDNESSに加入していたことでも知られます。近年は古巣であるObsessionや自身の名を冠したバンドVesceraのほか、Soldier Of Fortune名義で、第2期LOUDNESSの復活公演を行うなど精力的に活動しています。
ざらっとした歪みがかったハイトーンが特徴的で、日本では「歌うマーシャルアンプ」と称されることも。私がイングヴェイに触れたのは『The Seventh Sign』が最初だったので、個人的に思い入れの深いボーカリストでもあります。
■ Mats Leven / Like An Angel
1997年作『Facing the Animal』に参加したボーカリスト。コージー・パウエルがドラムに参加していることが取り沙汰されがちなアルバムですが、マッツの歌唱も冴える作品だと個人的には思います。やや歪みがかった声質はマイク・ヴェセーラにも通じますが、少し哀愁を漂わせる歌いまわしに北欧出身のボーカリストらしさを感じます。ライブアルバム『Live!!』(2000年のリイシュー版だと『Double Live!!』)でボーカルを執っているのもマッツなので、声質が気に入った方にはそちらもおすすめ。
近年はCandlemassやGus Gと共演するほか、2019年にはSkyblood名義でソロアルバムのリリースを行うなどしています。
■ 番外編 Graham Bonnet / Starcarr Lane
最後に、イングヴェイのソロないしRising Force名義に参加したボーカリストではありませんが、イングヴェイを語る上で欠かすことのできない人物を紹介。当時20歳そこそこだったイングヴェイがヘヴィメタルシーンで名をあげる契機となったのが、グラハム・ボネット率いるAlcatrazzへの加入でした。
グラハムはAlcatrazz以前にもRainbow、Michael Schenker Groupといった名だたるギタリストが率いるバンドへ在籍してきたボーカリスト。地声を強引に張り上げるような、パワフルというより力ずくという表現が似合う唯一無二のスタイルが魅力です。2020年には、ギタリストにジョー・スタンプを迎え、Alcatrazzとして34年ぶりとなるアルバムをリリースするなど、衰えを感じさせない活動をしています。
というわけで、筆者が個人的に好きなイングヴェイバンドのボーカルを紹介しました!
イングヴェイは、ここで取り上げた以外にも多くの実力派ボーカリストと共演をしているのですが、すべてを紹介しているとキリがなくなってしまうので今回はここまでということで。
また、今回楽曲を選定するにあたって、なるべく違った曲調の楽曲が並ぶように選んでみました。イングヴェイというと速弾きやテクニックばかりがフォーカスされがちですが、ソングライティング能力も非常に高いギタリストだということが伝わればいいなと思います!