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シンセサイザー鍵盤狂 漂流記~音楽を彩った電気鍵盤たちとシンセ名盤の数々~その32

2021-04-16

テーマ:sound&person

追悼 チック・コリア その2

先日、お亡くなりになったチック・コリアさん(以下敬称略)の追悼シリーズその2です。私はチックの大のファンで新作が出るたびにCDを購入していました。特にシンセサイザーをフィーチャーした電気ジャズが性に合っていたので、機材の変遷も含めて興味がありました。

チックは新しいシンセサイザーなどの楽器を導入し、それを自身の音楽に反映させる能力に長けたミュージシャンだったと思います。そういう意味では師匠のマイルス・デイビスの教えに沿ったメンタリティーを持ち続けた人ではないかと思います。

ものを作る行為は過去から学んだ事を積み上げ、スタイルを変えずに取り組む人と新しい楽器や機材が出るとそれを自分の作品に反映させる人がいます。チックは後者であると言えます。アルバム「リターン・トゥ・フォーエバー」でのフェンダー・ローズ電気ピアノやシンセサイザーの導入などはその分かりやすい例です。

しかし、楽器を変えただけで音楽が変わる訳ではありません。新しい楽器からインスパイアーされるものがなければ、それを表現に変換する事はできないからです。チックはシンセサイザーがデジタル時代に入り、そのデジタル技術を上手く活用したミュージシャンでした。

チック・コリアの広大な抽斗(ひきだし)

チック・コリアの音楽性の広さはリリースさたアルバムを聴けば、言うまでもありません。ソロピアノあり、デュオあり、トリオあり、カルテットあり、電気バンドあり、ホーンセクションの導入などなど…その音楽性は広く、音楽自体も異なっています。一体どこからその発想やエネルギーが出てくるのか…チックの脳みその中を覗いてみたかった気がします。

声を掛けるミュージシャンも其々の音楽の達人で、ファーストコールミュージシャンばかり。そして、チックに関わったミュージシャンはその後、名声を得ている人が多いです。チックはマイルス同様、若手発掘、育成にも長けた人でした。チックは彼らのエキスを吸い取り、自身の音楽に反映させていたのだと思います。

■ 推薦アルバム:『ザ・チック・コリア・エレクトリックバンド』(1986年)

チック・コリアの音楽遍歴の中で1つのエポックが、1986年にリリースした「ザ・チック・コリア・エレクトリックバンド」です。シンセサイザーをメインにした新しい電気ジャズのアルバムです。メンバーはチックの他にドラムのデイブ・ウェックル、ベースのジョン・パテトゥッチ、ギターがスコット・ヘンダーソンという強力な布陣です。

一聴するとロックっぽくて、ポップ!これがジャズかと思う方がいるかもしれません。しかし、この辺りがチック・コリアの真骨頂なのです。ジャズを背骨にした超絶テクニカル・エレクトリック・ポップともいえる音楽はチックにしかできません。簡単そうに聴こえますが、かなりの技術力と機材の知識がなければエレクトリックバンドの音楽を再現することは不可能です。

もう1つ、新しいのが「音」。キラキラしたヤマハシンセサイザーDX系の音は当時、時代を席巻したFM音源によるものです(この他にシンクラビア等も使用)。このデジタルシンセサイザーはアナログシンセサイザーとは全く異なる仕組みで、出音も全く違っていました。このFM音源などから次々と新しい音楽が生み出された時代でした。エレクトリックバンドもその1つです。しかし、音だけを変えてジャズを演奏しても新しい音楽にはなりません。チック・コリアの素晴らしいところはこのFM音源を新しいジャズに反映させたところでした。

ヤマハDX7:1984年にシンセサイザーの世界を塗り替えたのがヤハマのデジタルシンセサイザー、DX7。デジタルシンセサイザー、FM音源の技術あってこそのエレクトリックバンドでした。
DX7の詳細は次の機会に…。

TX816:エレクトリックバンドのライブではDX7、8台分の音源ユニットを1つにしたラックマウントタイプの音源、TX816が使用されている。

推薦曲:『ランブル』『サイド・ウォーク』

この2曲が最もエレクトリックバンドを象徴する楽曲。両曲ともテーマがキャッチーで覚えやすく、とてもキュートです。

推薦曲:『キング・コックローチ』

「王様ゴキブリ」というタイトルらしく、ゴキブリの動きを想起させるフレーズで構成されています。このフレーズをコピーしようと思いましたが耳の悪い私には難しく諦めました。ドラムとベースによるリズムのコンビネーションが抜群で、その上をチックのシンセとスコット・ヘンダーソンの変態ギターが泳ぐようにフレーズを綴っていきます。こういったフレーズを考え出すのもチックの才能だと思います。


今回取り上げたミュージシャン、アルバム、推薦曲、使用鍵盤

  • アーティスト:チック・コリア 
  • アルバム:「ザ・チック・コリア・エレクトリックバンド」
  • 曲名:「ランブル」「サイド・ウォーク」「キング・コックローチ」
  • 使用機材:ヤマハ・デジタルシンセサイザーTX816、KX5(ショルダー・キーボード)など

コラム「sound&person」は、皆様からの投稿によって成り立っています。
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音楽ライター / シンセ鍵盤卿

高校時代よりプログレシブロックの虜になり、大学入学と同時に軽音楽部に入部。キーボードを担当し、イエス、キャメル、四人囃子等のコピーバンドに参加。静岡の放送局に入社し、バンド活動を続ける。シンセサイザーの番組やニュース番組の音楽物、楽器リポート等を制作、また番組の音楽、選曲、SE ,ジングル制作等も担当。静岡県内のローランド、ヤマハ、鈴木楽器、河合楽器など楽器メーカーも取材多数。
富田勲、佐藤博、深町純、井上鑑、渡辺貞夫、マル・ウォルドロン、ゲイリー・バートン、小曽根真、本田俊之、渡辺香津美、村田陽一、上原ひろみ、デビッド・リンドレー、中村善郎、オルケスタ・デ・ラ・ルスなど(敬称略)、多くのミュージシャンを取材。
<好きな音楽>ジャズ、ボサノバ、フュージョン、プログレシブロック、Jポップ
<好きなミュージシャン>マイルス・デイビス、ビル・エバンス、ウェザーリポート、トム・ジョビン、ELP、ピンク・フロイド、イエス、キング・クリムゾン、佐藤博、村田陽一、中村善郎、松下誠、南佳孝等

 
 
 
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