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シンセサイザー鍵盤狂 漂流記 ~音楽を彩った電気鍵盤たちとシンセ名盤の数々~その31

2021-03-03

テーマ:sound&person

チック・コリアに捧ぐ その1

ジャズ・ピアニストで作曲家であった、チック・コリアさん(以下、敬称略)が2月9日亡くなりました。享年79。心より、ご冥福をお祈り申し上げます。

ジャズ・ピアニストは多く存在しますが、チックほどの多彩なピアニスト、キーボーディストは稀有な存在でした。私はロック畑からジャズ系への音楽的嗜好の変遷がありました。チック・コリアの音楽は間口が広く、ロックを聴いている人間にも理解しやすいものでした。

チックの音楽的変遷を記せば、膨大な量になってしまいます。このコラムでは私が聴いたチック・コリアの電気ジャズを中心に彼の素晴らしさが伝わればと考えています。

チック・コリアと電気ジャズ

チック・コリアはマイルス・デイビスバンドの出身です。マイルス・デイビス(tp)は云わずと知れたジャズの巨人で音楽表現において様々な規制を取り払った人物です。ビバップなど、ジャズの伝統に囚われることなく様々な音楽を創造しました。

現在のジャズシーンではマイルススクールの出身者がそれを作っているといっても過言ではありません。チックしかり、キース・ジャレットしかり、ハービー・ハンコックしかり、ジョー・ザビヌルしかりです。

当時、ジャズを志向する人はコンサバティブな人が多く、電気楽器をジャズに持ち込むことを忌み嫌いました。一方、マイルス・デイビスは違いました。マイルスにとっては新しい音楽を創造する事が重要でエレクトリック・ピアノなど、電気楽器を使うこと、ロックビート導入することが彼の音楽には必要だったのです。

1969年、マイルスのアルバム『イン・ア・サイレント・ウェイ』でチックはマイルスの指示でフェンダー・ローズというエレクトリック・ピアノを演奏しています。ローズピアノはその後、チックの代名詞ともいえる楽器になります。そして、マイルスから教えを受けたマイルススクールの卒業生達は積極的に電気楽器を導入。新しい音楽を創造し、時代を切り開きました。その1つの典型がリターン・トゥ・フォーエバーというバンドでした。

■ リターン・トゥ・フォーエバー『リターン・トゥ・フォーエバー』(1972年)

このアルバムはジャズファンの間で賛否両論が巻き起こりました。

アコースティックピアノや4ビートなど、ジャズの要素を排し、フェンダー・ローズ・エレクトリックピアノの導入に加え、16ビートを中心とした音楽だった為です。

しかし、このカモメのアルバムは清新で生命力に溢れ、ジャンルを超えて多くのファンを獲得しました。

■ リターン・トゥ・フォーエバー『ライト・アズ・ア・フェザー』(1972年)

リターン・トゥ・フォーエヴァーの第2作。ジャズのスタンダードとなった名曲「スペイン」の初演を含む。ドラマーのアイアート・モレイラ、ボーカリストのフローラ・プリムが参加し、ブラジル色、ラテン色が色濃く反映されている。

推薦曲:「スペイン」

名曲、スペインのイントロはホワキン・ロドリゴのアランフェス協奏曲をモチーフにしたメロディから始まる。哀愁を帯びたイントロから印象的なキメフレーズ~テーマ~アドリブ~テーマ~キメと分かりやすい構成。そしてある意味でとてもポップ。キメの難解さとチックお得意のスパニッシュメロディーが融合したこの曲を好むミュージシャンは多い。私も大好きな曲です。自分の所属するバンドでもスペインを演奏しています。ポップとはいってもアドリブ部分はジャズのメソッドをベースにしたアドリブが展開されています。この曲を聴いた時の衝撃は今も忘れることができません。フュージョン(当時はクロスオーバー)寄りのジャズで分かりやすく、ポップである一方、演奏は難しい…。なんとか挑戦したくなる、近付きたくなる…。音楽をやっている人を虜にする要素が沢山詰まっている曲です。

スペインでのアイアートが作り出すノリは素晴らしく、数多くカバーされているスペインの中でもピカ一だと思います。軽快なリズムの上をチックのローズピアノソロが縦横無尽に駆け巡ります。まさにアルバムタイトル「ライト・アズ・ア・フェザー」そのものだと思います。

■ チック・コリア『マイ・スパニッシュ・ハート』(1976年)

アルバム全てがチックのオリジナルで、スペインへの思いを表現した2枚組の大作であり、ジャズとラテンが融合した名盤。スペイン系の血をひくチックにとって、スペインというキーワードは重要な要素です。このアルバムでチックといえばスペインという印象をリスナーに植付けることになりました。

アルバムではモーグシンセサイザーが大きくフューチャーされています。チックが使っているのはミニモーグシンセサイザー。当時の映像を見るとチックはミニモーグオシレーター発信機(VCO)の矩形波を使い、少しこもり気味の音でソロをとっています。このミニモーグの音も多少の変化はありますが、チックが一貫して使い続けた音色といえます。

MiniMoog synthesizer(イメージ)

推薦曲:「アーマンドのルンバ」

スペイン2号とも云える名曲。チック得意の哀愁漂うスパニッシュメロディーが印象的。ハンドクラップとアコースティックピアノのクラーベの上をヴァイオリンが美しいメロディで歌っています。


今回取り上げたミュージシャン、アルバム、 推薦曲、使用鍵盤

  • アーティスト:チック・コリア 
  • アルバム:「リターン・トゥ・フォー・エバー」 「ライト・アズ・ア・フェザー」「マイ・スパニッシュ・ハート」
  • 曲名:「スペイン」「アーマンドのルンバ」
  • 使用機材:フェンダー・ローズ・エレクトリックピアノ、ミニモーグ、アコースティックピアノ等

コラム「sound&person」は、皆様からの投稿によって成り立っています。
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音楽ライター / シンセ鍵盤卿

高校時代よりプログレシブロックの虜になり、大学入学と同時に軽音楽部に入部。キーボードを担当し、イエス、キャメル、四人囃子等のコピーバンドに参加。静岡の放送局に入社し、バンド活動を続ける。シンセサイザーの番組やニュース番組の音楽物、楽器リポート等を制作、また番組の音楽、選曲、SE ,ジングル制作等も担当。静岡県内のローランド、ヤマハ、鈴木楽器、河合楽器など楽器メーカーも取材多数。
富田勲、佐藤博、深町純、井上鑑、渡辺貞夫、マル・ウォルドロン、ゲイリー・バートン、小曽根真、本田俊之、渡辺香津美、村田陽一、上原ひろみ、デビッド・リンドレー、中村善郎、オルケスタ・デ・ラ・ルスなど(敬称略)、多くのミュージシャンを取材。
<好きな音楽>ジャズ、ボサノバ、フュージョン、プログレシブロック、Jポップ
<好きなミュージシャン>マイルス・デイビス、ビル・エバンス、ウェザーリポート、トム・ジョビン、ELP、ピンク・フロイド、イエス、キング・クリムゾン、佐藤博、村田陽一、中村善郎、松下誠、南佳孝等

 
 
 
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