今やさまざまな作曲家、DTMerがお世話になっているであろう、iZotopeのマスタリングツール「Ozone」の最新バージョンが2025年9月にリリースされました。以前、旧バージョンの「Ozone 11」もレビューをした筆者からすると、またとんでもない新機能を引っさげてきたな!という感想です。今回も実際に少し触れながら新機能をご紹介していきます。
iZotope ( アイゾトープ ) / Ozone 12 Advanced ダウンロード納品
ざっくり説明すると、今回のOzone12は大きな新機能として、下記の5つが追加されました。
- 過度に圧縮されたオーディオのダイナミクスを復元する機能「Unlimiter」
- 低域の直感的な可視化と完璧な調整を可能にする「Bass Control」
- ボーカル、ベース、ドラムなどのパート毎に微調整が可能な「Stem EQ」
- Maximizerの新アルゴリズム「IRC 5 Mode」を追加
- より進化を遂げたAIアシスタント「Custom Assistant flow」
なんとなく新機能を文字で眺めるだけでも、スゴそう。
ということでさっそく、個別に見ていくことにしましょう。
01. ダイナミクスを復元する機能「Unlimiter」

こちら、もう少し丁寧に説明すると、過剰なリミッター処理によって損なわれてしまったダイナミクスやトランジェントを再生できる機能。いやなにをそんな魔法みたいな……と思いましたが、できてしまうんです。しかも業界初。そう、Ozone12ならね。
ちなみに使い方も非常に簡単。音源(波形)に対して、Unlimiterをインサートして、Learn Thresholdをクリックして音源を再生。音源の解析が終わったら、Thresholdをピークレベルまで下げて、Amountノブをグリグリと上げていくと、あら不思議。取り除かれていたトランジェントが復元!いやーこればかりは、実際に試してもらうしかないのですが、音源によっては結構ビビります。すごい時代になったもんだ……。使う機会としてはリマスター音源を作ろうとした時に、特に役立つ機能かもしれないですね。
02. 低域を直感的に調整できる「Bass Control」

低域の調整に特化した機能ですが、単純に低域を増減するだけではなく、パンチとのバランスを取りつつ強調したり、抑制したりすることができます。それにより、ただモワッと低域を増幅するだけじゃなく、より細やかで輪郭を失わない低域コントロールができるようになっています。こちらも使い方は難しくなく、Balanceのパラメーターで低域のレベルの増減、Punchのパラメーターでは低域のトランジェントのゲインを増減できちゃう仕組み。あとはSustain PowerでThresholdを下回る部分を持ち上げたり、Peak Controlでは低域のピークをリミッターで抑えたりできます。少し触った感じでは、特にベースミュージックで欠かせない存在になりそう……!
03. パート毎に微調整が可能な「Stem EQ」

Stem EQはミックス済みの音源でもボーカル、ベース、ドラムに対して個別にEQ処理ができる機能。こちらも操作は簡単で、EQ調整したい楽器をクリックして、各パラメーターを弄るだけ。これ、ぜひ色んな楽曲で使用してみて欲しいのですが、各パートの抜き出し方の精度がとても良いので、実際に制作している時に活用すると、ミックス作業がとても楽になると思います。ボーカル曲を作成する方は、ぜひお試しあれ。
04. Maximizerの新アルゴリズム「IRC 5 Mode」

Maximizerの機能にあるIRC(Intelligent Release Control)にIRC5 Modeが追加されました。これによって、よりMaximizerを強く掛けても、音の歪みやポンピングが生じにくくなってます。こちらも実際に使ってみないと分からないかもしれないですが、かなり精度が違うのでぜひ使ってもらいたい新機能の1つです。すこし内部の難しい話をすると、いままでOzoneはシングルバンド設計のみだったものが、IRC5によりマルチバンド設計が導入されたことにより、4つの周波数帯を動作できるようになり、シングルバンド設計では不可能だったアタック/リリースタイムが設定できるようになったことで、よりクリアでキャラクター豊かなMaximizerとなった訳です。なんのことやらサッパリの方は、とにかくMaximizerの品質がめちゃくちゃ良くなった!と思ってもらっても良いかと。
05. 進化したAI処理「Custom Assistant Flow」

Ozoneと言えば楽曲を読み込んで自動的にいい感じにしてくれる、AIアシスタント機能が有名ですが、そのAIアシスタント機能がOzone12で大幅に進化しました。具体的には、さまざまなジャンルやターゲットを追加したことにより、より音源に沿ったクオリティの高いマスタリングが可能に。使い方は真ん中上部にあるアシスタントボタンをクリック後、Customを選ぶとターゲットを選択する画面がでるので、あとは音源にあったターゲットを選んでスタートするだけ。ちなみに、真ん中にあるProcessingでは処理に使わないモジュール、使うモジュールの選択も可能です。さらにその右にあるパラメーターはIntensityで各モジュールの掛かり具合の調整、Loudnessではマスタリング後のラウドネスのおおよその値を指定できたり、Analysis TimeではOzoneが楽曲を解析するためにどの程度の長さ聴くかという設定もできたりします。ここは長く設定することで、より楽曲のキャラクターやタイプを学習させることが可能に。
いかがでしょうか。以上の5つがOzone12の大きな新機能となりますが、その他にも今までのモジュールの精度や機能改善によって、より品質の高いオーディオ処理が可能になっています。しかし、AIによる昨今の技術の進歩が音楽業界でも凄まじくて…いったいどこまで便利になってしまうのか。今後のOzoneの進化にも、目が離せません!