ほとんどのギタリストが持っていると思われる歪み系 エフェクター。エレキギターを演奏するには必需品で、いち早く歪み系を買う人が大多数では?エレキギター初心者には今一つピンと来ないかもしれないので、簡単に言うと、アンプ自体を歪ませないセッティングで音を出すと『ペラペラで迫力がない音』になる。またアンプを通さない生音での練習はピッキングの強弱などに誤った弾き方を助長する可能性があるので極力アンプに通して弾こう。
どうしても自宅などで音を出せない環境なら【VOXの単4電池2本で稼働するへッドフォンアンプ】を使用するのをお勧めする。安くて音が良い(写真参照)。またオーディオに接続すればCD音源等と連動して楽しめる。とても使いやすい。

自宅でアンプの音を出せない人のために安くて使いやすく音も良い、単4電池2本使用の電池駆動アンプ。4000円ほど。私もマーシャルタイプを使用中。別途ヘッドフォン。CDとセッションしたければオーディオケーブルが必要。
話が前後した。歪みについて述べる。
一言で『歪み』と言っても市場には大量生産の廉価版は勿論、職人の作るハンドメイド少量生産の歪みブランドを挙げると『全世界で歪みだけでも1000種類以上』あるかも知れない。以下歪み物を4種類に分けて説明したので参考にして 欲しい。
■ オーバードライブ
これはよく真空管アンプをドライブした歪みをナチュラルに再現するといわれるタイプだ。過激な歪みではなく、曲の味付けという事を念頭に設計されている。ほとんどのメーカーで作り出すオーバードライブの 歪みはマイルドで音が甘く自然だ。激しい音ではない。 別の使い方で、主にギターソロで、音量をかせぐブースターとして使われる事がある。(ブースターは以下説明あり)
■ ディストーション
これは音量を上げると音がザラッとする。耳に痛くないサウンドを得たい場合、価格が高くなる程、当たりハズレの本気度が分かるだろう。歪ませ過ぎると音が加工された感じになる。最近の激しい演奏を身上とするバンドはもとより、ピッキングハーモニクスやロングサスティーンまたフロイドローズ等ロック式トレモロユニットのアーミングなどにも相性が良い。
■ ファズ
ガリガリッとした歪みでコードワークにはあまり適さないが、各々の歪みからは想像出来ない音色が特長。独断と偏見だが『ファズファクトリー』というエフェクターは名機だ。ローリング・ストーンズの『サティスファクション』のリフが、使用サウンドの代表例。ジミ・ヘンドリックスのサウンドはファズ音源の宝庫。ジージーいうシンプルなサウンドから、ものによっては真空管アンプとトレモロアームとのマッチングで生き物みたいに『ギターが叫ぶ音』が得られる。弾く人のセンスが問われる歪みだ。状態の良いヴィンテージ物なら法外な値段がする物が多く、運良く購入出来て、「さあ電池を入れよう」と蓋をあけたら、なんと「パーツが10個位しかない!」かも知れない。価格が高くて、何故シンプルな部品の基板が数万円以上するのか?失望するかも知れないが、ファズの名機は現代において『貴重なヴィンテージパーツがふんだんに使われている事が多い』。そのパーツのお陰で独特な音の波形が得られる事もあり軽視できないのだ。しかし昔のガレージメーカーにありがちな、いい加減な品質管理をしていたメーカーの中には部品調達に万全を期していたとは言い難く、有名な名機だからといって、どれもが当たりとはいえない。耐久性に劣る物も、もちろんある。30年以上経た物で、コントロールやジャックがきちんと作動するとは言いがたい物があっても不思議ではないはずだ。
■ ブースター
例えば歌物のバッキングをつとめ、ギターソロでここぞとばかりに目立つ時に使う事が多いエフェクター。多くの名機といわれるオーバードライブのブースター使用方法もだいたいこのような感じだ。ブースターを使うとストレスが減り『音が太くなるケースが多く』、確実にギターソロを歌わせる。ツマミがブースト1個しかない機種も多く、トラブルも少ないと思われる。現在人気がある物が、価格が急高騰しているケンタウルスやアイバニーズのTS808チューブスクリーマーなどが代表例。上記はかけっぱなしで使い、ギターのボリュームで歪みを調整する事もある。昔、楽器店で私がアイバニーズTS9を試奏して「歪まないなあ~BOSSのメタルゾーンの方が俺好みだな」と思った自分が情けない。
Ibanez ( アイバニーズ ) / TS808 ギターエフェクター チューブスクリーマー
Ibanez ( アイバニーズ ) / TS9 Tubescreamer チューブスクリーマ
1980年代初頭、歪みエフェクターは 日本ではまだボス 、マクソン、パール、ヤマハ、輸入品ならMXR、DOD位しか手に入るエフェクターがなかった。従って、音を変える歪みエフェクターは高校生なら選択の余地がなく、定番のBOSSなどしかなかった。没個性である。しかしBOSSのSD-1やDS-1は今でも定番品で、多くの国内ギタリスト、さらには海外のギタリストも愛用者が多い。BOSSの歪みは米国のKeeleyがモディファイしている。値段はオリジナルの3倍ほどだ。
そのような時代を経て1990年代から機材のアップデート、エフェクターのモディファイなど、音をより緻密に、より高品質な機材やエフェクターを製作することが流行る様になる。一気にハンドメイドエフェクターというものが多品種少量販売されるようになった。ブティック・エフェクターと言う言葉が出始めたのは、『音の魔術師エリック・ジョンソン』が有名になった時とシンクロしているのではないであろうか?
エリック・ジョンソンは、エフェクターの9ボルト電池にも拘り、『エフェクターに入っている電池 のメーカーを当てたと言う伝説』がある位凄い。彼の出現で楽器、特にストラトのカスタマイズが流行り始め、90年代以降に主流になっていくと言って良い。ヴィンテージパーツなど、1980年代にはほとんどのヘヴィーメタル ギタリストは関心がなかった。メタルにはハムバッカーとトレモロユニットがあれば良かった時代だ。
私の使用した最初の歪み系ハンドメイド・エフェクターは極初期の93年製『ホットケーキ・スタンダード』だった。基盤を真似されたくなかったのか?接着剤みたいなものでスイッチ以外完全にに覆われていた。ちなみにケンタウルスも中身が黒いボンドみたいなもので完全に中身がわからないようにしている。アンプの音とうまく歪ませたエフェクター音として1990年代から2021年現在にかけて多品種少量生産のハンドメイドエフェクターが作られた。全てをチェックしたり出来ないのでインターネットで音を聴くのが精一杯。実際、体感することは少なく、今日に至っている。
また、2008年に面白いムック本がリットーミュージックから発売されていた。その名も『ギターマガジン 歪み エフェクターブック 全90機種の歪みのサウンドをリアル体験』現在廃刊でネットで見つけるしかないが、この中には90機種の エフェクターの紹介がありサンプル CD 音源も入っている。 これは前半が短く、プレイスタイルが1個毎に違うので比較しにくいが「この機種はこういう使い方ができますよ。」という事を念頭にSyu氏が弾いている。 人気のある30機種を弾きまくっている。ちょっと失望するコメントが多い。後半は末原康志氏による、より緻密な歪み60機種。これは参考になる。 ネットで見つけたら躊躇わず購入を勧める。YouTube等ではこれ程多くの歪みエフェクターを短時間で試せない。本はもとより、CDの状態の良い物でないと意味がないが。たしかに現代はパソコン、スマホでわかるが、一度にざっと比較できるCD付き書籍は貴重だ。他にもiTunesでの連動書籍もあるので調べて見ると良い。

この『歪み本』の使い方は、まず説明文や写真を見ずに一旦、本を閉じて CD を聴いてみるとよい。『定番30機種』は比較が無理だが、『注目60機種』をベッドフォンで聴いてみて、即座に紙に感想を書いてみる。『例えば倍音の美しさ、歪み具合最適、食い付き度、中域に特長、高域のキレ、中域の甘さ、透き通った高域、綺麗なサスティーン・・・などとメモを即座に書いてみる。』全部聴いたら、『答え合わせ』をするのだ。初心者はコメント出来ないかも知れないので、点数を付けてみたら良いと思う。そのようにすると先入観ではなく音だけを比較することができるので 、時間がかかるが我慢して写真を見ずに CD を聴いてコメントを書いたり、点数をつけたりしよう。これをすると自分がどのような機材を好むかわかりやすい。記事を見てから聴いてしまうとせっかく買った書籍が勿体ない。書籍にプレミアなどついていないので。先ほどネットで調べたら200円と言うのもあった。有名な古本屋チェーン店では980円で販売されていた。
私はギター歴が長いので歪みエフェクターをトータル30~40機種、購入したり手放したりしてきた。勿論最初はコストパフォーマンスに優れた薄黄色いBOSSのSD-1とオレンジ色のDS-1から始めた。高校生の頃は、前述の時代背景からBOSSを信頼しなければならなかった。しかしながらBOSSは今でも完成された外観、電池交換のしやすさ。耐久性も良い。故障した記憶がない。ツマミのガリ位だ。今でもキング・オブ・エフェクターとして第一線に君臨しているわけがここにある。BOSSは品質も安定しており、価格も懐にやさしい。
しかし腕が上がると、もう少し細かいセッティングやオリジナリティー、がある歪みにシフトする。価格は3万円辺りが多い。ハンドメイドエフェクターもこの辺りの価格からある。
そしてギターを複数持ち、機材にもこだわる様になったら10万円程のエフェクターの雄、ランドグラフ等が……。ケンタウルスはもしかして『ギターより高価な価格かも?』と需要は例外だが。万が一ツマミはもとより故障寸前のケンタウルスを購入したら私なら一年程ショックで立ち直れないと思う。~5万円位のケンタウルスクローンで満足しよう。
ギターを始めた頃はBOSSさえ手に入ればやってゆけると思っていたが、使っている内に『ここはもう少し歪まないか?』とか『トーンの効きがイマイチ』、『音がシャープではない』と耳が肥えてしまうのだ。
私は9年前、ランドグラフ ダイナミック オーバードライブを入手した。その楽器店は防音室があったのでランドグラフ本物と国産コピーモデルをフルテンで試せた。コピーモデルは3万円前後と記憶するが、『米軍グラマン 戦闘機』 VS『零式艦上戦闘機』位の違いがあった。コピーモデルはスカスカの貧弱の音だった。ランドグラフは音圧と色気がある。
ライブではランドグラフに不慮の事態で破損したり、盗難等ストレスがあるのでオーバードライブは山野楽器オリジナル3モード系オーバードライブを使っている。これは『スピーカーがへたったアンプの音をシュミレートするスイッチ』がありオンにすると音の高域が変わる発想がユニーク。裏ぶたをあけたらその効果には4、5個の安価な部品を足しただけであった。シャープさは欠けるがハンドメイドでパーツも厳選しており、2万円位でネットに出ていたので即座に購入。それとブースターとしてTBCFXのマイクロ・エコー・プレックス・プリアンプ『2』を使用してライブ活動をしている。エフェクターが多いとセッティグに時間がかかるので最大3個まで。特に『歪みエフェクターのレベルが0で音が出ない!!』など不測の事態を何度か経験しているので。ギタリストが良く愛用しているワウペダルは最近の使い方に私は個性が出ないので普段使用していない。

山野楽器オリジナル ・プレミアム・デュアル・オーバードライブと TBCFXマイクロ・エコープレックス・プリアンプ『2』をライブで使用。

三台のメインで使用している歪み。左から山野楽器オリジナル・オーバー・ドライブ、ランドグラフ・ダイナミック・オーバードライブ800番台、ランドグラフMODディストーション400番台。他にRAT、BOSSターボ・オーバードライブ等を所有している。
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