

この夏も、美しくライトアップされた東本願寺・御影堂門でライブしてきました、Sugarです*

神奈川からこちらに引っ越してきた頃、まだ新幹線で行ったり来たり頻繁にするということもあり、京都駅から地下鉄で一駅の五条という駅の近くに住んでいました。その2つの駅を地上で結ぶ烏丸通の西側に東本願寺が位置しているのですが、その塀には大きく「今、いのちがあなたを生きている」という標語が掲げられています。

今回のライブが終わってから知ったのですが、どうやら標語は数年に一度変わり、この言葉は2011年から来年までの標語だったらしいのです。私が京都に来てから今までの間、ずっとこの言葉が見守ってくれていたことになります。 当時からよくこの言葉の語順の妙について哲学をしてきました。命が私を生きるとは一体どういう境地なのか、烏丸通を通る度に少しずつ思考を進めてきたような気がします。

(リハーサル風景)
去年初めて、御影堂門のライトアップに合わせて音楽を、ということで演奏させてもらい、それが多くの人に喜んでいただけたということで、今年はイベント自体がかなりブラッシュアップされて開催することが決まり、私は企画の段階から関わらせてもらうことになりました。(去年のライブに関してはコラム第15回『モノクロームの魔法のように』)
最初の会議で、何かイベントの核となるテーマを探していた時、この標語を思いだしました。8年が経った今、私が理解し得るこの標語の意味は、命が私の中で生きているなら、心が喜ぶことをもっと自分の為にしてあげよう、という思いに成長していました。
会いたい人に会いに行く、素敵なものを見に行く...どんなにせわしない日々の中でも、そういう時間を自分の為に作ってあげなくちゃと思ったのです。
(その気付きに関しては曲も書きました。“Ice cream”)
日々の中で心が喜ぶ瞬間を探してみると、乾杯をしている時にはいつも喜びがそばにあるなと感じました。どんな乾杯にも、祝ったり、分かち合ったり、労わりあったりする愛がこもっていることに気付いたのです。
幸運にも、飲食の出店を充実させることが決まっていて、その数は日が経つにつれだんだんと増え、イベント自体が大きな規模へと変化していきました。美味しいお酒、美味しい食事が揃うことになり、気持ちの良い乾杯をする準備は整っていったのです。

イベントに名前もつきました。"カラスマナイトフェス"、文字どおり、烏丸通に面している夜のライブフェスが開催されることになりました。 こうして、「がんばる大人たちの心が幸せになるための素敵な乾杯を!」というコンセプトのもと、準備が進んでいきました。
イベント当日は大雨でした。
しかし、御影堂門の懐は深く、楽器を奥に寄せることで、お客さんにも屋根の下に入ってもらいながらライブを楽しんでいただける新しい楽しみ方が見つかりました。
雨が強まるほど、屋根の瓦を伝い落ちてくる雨がまるで滝のようになり、門の木のぬくもりの中でマイナスイオンに包まれているような、神秘的な感じがそこにいる人たちを包み込みました。
(8枚の写真で当日を振り返るInstagram。写真をめくってもらうと3枚目にはその日の豪雨の模様、4枚目からはライブの様子、滝のようになっているところも見てもらえます。)
18時を過ぎてから演奏を始め、1組目のアーティストはクラシックギターでの弾き語り、2組目は私Sugarでパーカッション・ベース・キーボード弾き語り・コーラスという編成でPOPに、3組目のアーティストはジャズのトリオで大人のかっこいい音楽を奏でてくださいました。
音楽ジャンルが変わるたびに、しなやかに表情を変える御影堂門がとても美しく、今年国の重要文化財に指定されることが決まった、この素晴らしい場所で音楽を楽しむことができる喜びに満たされました。
1時間に一度、その場にいる人たちと乾杯を分かち合う時間を設けて、ドリンクがない人も架空のグラスに幸せな気持ちを注いだような気持ちで一緒に乾杯してもらいました。
ジャズトリオの演奏が始まってからは奇跡のように一度雨が止み、イベントが終了するとまたザッと猛雨になったのでした。何か見えない慈悲深い力が私たちを支えてくれたような不思議な気持ちになりました。
こうして初めてのカラスマナイトフェスの夜は過ぎていきました。びしょ濡れで現場を駆け回ってくださったスタッフさんたちに感謝の気持ちを伝えると、素敵な笑顔で充実感について語ってくださいました。
「がんばる大人たちの心が幸せになるための素敵な乾杯を!」と掲げたこのイベントの中で最高の心地良さを感じた言い出しっぺの私自身が、「今、いのちがあなたを生きている」ということを哲学した最高の結果であったことはいうまでもありません。

