

幼い頃に習っていたバレエが、今ボーカルの先生をする時にとても役に立っていると感じているSugarです。

やめてから随分経ちますが、ずっと印象に残っている教えがあります。
バレエで美しいとされているポーズは、関節を挟んで隣合う部位が別の方向にねじり合うことで生まれているということです。

例えば、腕の形について言うと、胸から肩にかけては開くように前から後ろへのねじりが働きます。
次に肩から肘までは、腕を内側へ内側へとねじるようにします。
肘から先の部分はそれと反対で、外へ外へとねじるようにするのです。
このように逆方向へねじり合う2つの力の均衡がとれるところでポーズを安定させると、激しくジャンプをしたりしても形が崩れることがないのです。

全身のねじりとしては、胸から肩にかけては前から後ろへ開いたので、胸から腰までは背中から腹筋の方へ内側へ内側へと引き締めていきます。
そして、腰から足にかけてはその反対で、外へ外へ開くようにしてポーズを決めます。
こうしたねじりの動きをどんな時にもしっかり守ろうとすると、とてもエネルギーを使う運動になるので、バレリーナはしなやかで細い体型になっていくのだと思います。この基礎を日常生活の中でも正しく意識できれば、きっと姿勢が良くなり、ダイエットになりますね。
さて、この”別の方向へと強く引き合う2つの力”が均等な力で安定している時にエネルギーが高いという現象は、すべてのことに応用できると思うのです。
歌において、例えば高音を出す時には声の振動はだんだん頭の方へと上がっていきますが、そうするほどに力を込める筋肉は下半身へと下がっていきます。
空へ向かって伸び上がることと、地に足をつけることのバランスがとても重要です。
その2つを結んでいるのが、ちょうど”丹田”と呼ばれる場所なのではないかと思います。
さらに、心も同じだと思います。
歌詞の意味や言葉の抑揚、リズムなど“理性”で音楽を楽しむことと、純粋に「声を出すって気持ちがいい!」と感じる“本能”の部分とが、それぞれ最大限発揮されている必要があると思います。
先日、元々歌うのがとても上手な大学生の生徒さんが、深刻な顔をしてレッスンにやってきたのです。
バンド練習になると高音部分がうまく出せなくなってしまったというのです。
実際に歌ってもらうと、苦手になってしまったサビに差し掛かると、眉間にしわが寄ってきて、上半身には強く力がこもっていました。
リラックスしてもらうために、何か実際に体験したことのある「めっちゃ気持ち良い!」という瞬間を尋ねました。
「友達と温泉に浸かった時」と教えてくれたので、その時の心と体の状態を再現することに集中しながら、高音部分を歌ってもらいました。
すると、楽々と苦手箇所を歌い切ることができたのです。
どうしたらうまく歌えるんだろう...と悩めば悩むほど、歌うこと自体を気持ち良く楽しむことができなくなってしまうという、パラドクスにはまってしまっていたのです。
歌うということは、自分の体がそのまま楽器となるので、サビついたギターの弦を張り替えるように、悩んでしまった心の手入れをしっかりして、理性と本能のバランスをとることが大事だなとこの時気付かされました。
東洋の陰陽思想を表した太極図がちょうど丸い形をしているように、“2つで1つ”というのがこの世界のエネルギーのあり方であり、やはり真理なのかもしれないですね。
