まず、はじめに音の3要素とは?
音には、音色・音程・音量の3つがあります。
では我々が演奏しているとき、音楽を聴いているときに「音質」という言葉をよく口にするのは。。。
音質とは何なのか?
古典的にはデジタル機器などが無かった時代から音楽はありました。音楽機材がアナログからデジタル化するにつれて、別の音を評価するための言葉として「音質」という言葉が生まれました。音質とは、デジタル的に簡単に言えば「サンプリングレート」と「ビットレート」の数値が判断基準になるでしょう。しかし、ことギターのマルチエフェクターなどに関しては音質が良いか悪いかを判断することがより複雑化しています。
マルチエフェクターには様々なサンプリング、またはシミュレーションされたサウンドがつまっています。ここの部分を音質という言葉の中の「音色」(3要素の1つ)と言えるでしょう。音色は表面的な音の感じ方に影響します。音の雰囲気ともいえます。どんな音も歪んでいればそれはディストーションをイメージさせるといった具合です。イコライザーなどでいじれる部分も音質の中の要素の1つです。時に音色を変えるほどに(音の印象を変えるほどに)影響を与えます。
音について人が感じる表面的な部分は説明したとおりですが、より機械的にデジタルにおける音が良い・悪いの判断基準として各エフェクターの消費電力や消費電流を見ることが1つの指針となります。
多くの人は「良い音」「悪い音」を何となくでとらえているかと思います。しかし、数値で表される部分は、よりはっきりと性能差を教えてくれます。(メーカーの表記が必ずしも正しいとは限らないので自分で計ってみることもおすすめします)
具体的には、似たような価格帯のマルチエフェクターAとマルチエフェクターBがある場合、まずはお店で鳴らしてみてどっちの方が好きな音が入っているか(自分の好みに合う「音色」はどちらか)を判断されると思います。今回はそれに加えて、以下の条件の場合デジタル的にはどちらの方が性能が上か判断すると
例)
マルチエフェクターA:ACアダプター 9V 600mAh
マルチエフェクターB:ACアダプター 9V 2000mAh
上記の場合は、例えAの方が好みの「音色」(表面的な音・音の雰囲気)を含んでいたとしても、デジタル的にはBのマルチエフェクターの方がサウンドとしては良いと判断できます。
CPUの性能差も考慮しますが、必要な電力(W)が多い方がそれだけ電気を食う分パフォーマンスが高いと考えられるからです。(本当はCPUのスコア比較も調べられると良い)
※電力は電圧(V)×電流(A)=電力(W)
ちなみに、100V/0.5Aの電源だと電力は最大50Wとなります。
大雑把に色々なマルチエフェクターを比較すると…POD xtなどは消費電力が18W、Kemperは50W、Fractalは20W…といったように消費電力からそれぞれの機器の性能をある程度比較することが可能です。(POD xtは販売当時デジタルエフェクターの中ではハイエンド商品に近いにも関わらず破格の値段で販売されていた製品であった)
もし同じ消費電力同士のマルチエフェクターAとBを比較する場合は、CPUのスコアやビットレートで比較することになります。(もちろん自分の好みのサウンドの方でも構いません)
長々と話しましたが、実はマルチエフェクターの音を比べる際に必要なことはもう一つあります。それは、「出力した時の音量」です。
この音量のメーターは、スタジオ内にあるPA卓や自宅にお持ちのオーディオインターフェースに接続した際に確認することが出来ます。しかし、どのぐらいの音量が適正なのかは多くの方が悩むところです。
ギターのシミュレータープラグインソフトに「Guitar Rig」というソフトがあります。このソフトの標準設定の音量は、インターフェースを通してミキサーで確認するとほぼMAXの音量になります。(大きすぎるのでピークを避けるために5dbほど下げてならすことになります。)
※入力、出力レベルともに+4db(業務用)の場合で比較
では市販のギター用マルチエフェクターを接続してチャンネルVolとマスターVolをMAXにして音量を確認してみましょう。(音量がでかいのでミキサー側のマスターVolを少しさげてならしてみてください)実はGuitar Rigと比べるとさほど大きい音量にはなりません。
そして多くのエフェクターはチャンネル、マスターVolともにMAXにすると音がつぶれて割れてしまいます。これはCPUの処理能力(スペック)や消費電力の不足が主な原因です。
なので、デジタルマルチエフェクターの正しい使い方は基本的には音がつぶれるギリギリまでVolをMAXに近づけてプリセットを組むことです。(ソロの時は別途ブースターをマルチエフェクターの後に接続するなどの工夫が必要)
いわばマルチエフェクターのVol競争と言える戦いを制覇するには、やはりマルチエフェクターのマシンスペックを比較するしかありません。そしてお気づきの方もいらっしゃるでしょう…音量は音の3要素の1つです。
では、音程はというと…演奏者の技術ということになるのでしょうか…はたまたギターのチューニング状態など…
それならGuitar Rigを使えばいいじゃないか?
実はどんなに高性能なオーディオインターフェースも消費電力は22Wほどです。数年前までは、パソコンのCPUの方がマルチエフェクターのCPUよりも優れている場合が多かったのですが、ここ数年CPUはさらに進化をとげ、より安価なものとなりました。
そして高価なオーディオインターフェースを使用して96khz/32bitでJC-120などのReturnに接続し音を出力したとしてもJC-120の周波数特性の場合、その良さを生かすのは難しい所があります。
ここ数年、KemperやFractal AxeⅢなどの新商品はCPUの性能もさることながら、必要な電力の量も増えその分音色以外の音の良さが向上しました。
なので今の時代だからこそ、Kemperなどを買って他のマルチエフェクターと比べてみてください。
ついに市販のライブ向けデジタルエフェクター(シミュレーター)がアナログに近づいた時代ともいえます。
たくさんの要素をつめこみすぎましたが、利用者がより詳しく、また販売される製品もより良い物になればと思います。