もっと多くの人に知ってほしい名盤『NO NUKES』
永久保存盤ライブアルバム、今回のアメリカンロック編Part2は社会問題が背景にあるライブ盤です。
『NO NUKES』というライブアルバムは1979年3月、アメリカ・ペンシルベニア州スリーマイル島で起きた原発事故を受け、反原発をテーマにしたライブアルバムです。 米国内では原発への信頼が低下し、反原発への機運が高まる時代背景の中、音楽を通して「安全なエネルギー政策」への意識を高めることを目的にしたチャリティー・コンサートが行われました。 ジャクソン・ブラウン、ボニー・レイット、ブルース・スプリングスティーン、ドゥービー・ブラザース、ジョン・ホールなど、数多くのミュージシャンが参加しました。 反原発運動に端を発したチャリティー・コンサートはこの後、ライブ・エイドやUSA・フォー・アフリカなどにもつながり、大きなうneりを作り出すきっかけとなりました。
■ 推薦アルバム:ヴァリアス・アーティスト『NO NUKES』(1980年)

このアルバムは1979年9月19〜23日に反原発をテーマにしてニューヨーク、マディソン・スクエア・ガーデンで開催された大規模なチャリティ・コンサートのライブ。 会場はマディソンスクエア・ガーデンだけでなくマンハッタンの南端、バッテリーパークにも設けられ、20万人の観客が押し寄せた。 集まった当時のミュージシャン達は最も脂がのった時期にあり、ライブ・パフォーマンスにおいても質の高い演奏が記録された。ロック史に燦然と輝く歴史的名盤といえる。
推薦曲:「POWER」
オーリアンズのリーダーで腕利きギタリストであるジョン・ホールのファースト・ソロアルバムに収められた自然エネルギーへの賛歌。この反原発、ノー・ニュークス・コンサートにはピッタリはまる楽曲だ。会場はマディソンスクエア・ガーデン。 バックを務めるミュージシャンは豪華極まりない。バックバンドはドゥービー・ブラザースで、フェンダーローズはマイケル・マクドナルド、オルガンはサポートミュージシャンのコーネルアス・バンパスが弾いている。バックコーラスはニコレット・ラーソン、カーリー・サイモン、ジャクソン・ブラウン、ボニー・レイット、グラハム・ナッシュなど。 歴史的にもこれだけ豪華な面子が一堂に会したライブを私は知らない。楽曲もジョン・ホールをはじめ、マイケル・マクドナルド、ジェームス・テイラーという素晴らしいボーカリスト達が歌う。ソロパートではジョン・マクフィーのペダル・スティール・ギターが聴けるがこのソロが素晴らしい! アウトロ部分ではオルガンを担当したコーネリアス・バンパスのサックスソロも聴ける。コーネリアス・バンパスはドゥービーだけでなく、スティーリー・ダンでもホーンを吹く腕利きプレイヤーだ。 ジョン・ホールが書いた静かなエネルギーを内包した美しい楽曲が、ミュージシャン達のパワーを得て一番輝いた瞬間が記録されている。
一方、YouTubeに上がっている動画はマディソンスクエア・ガーデンではなく、20万人を集めたバッテリーパーク会場での演奏である。 違う日に「POWER」が演奏されているのは、この楽曲が反原発というテーマに直接繋がっているからだと考えられる。こちらの演奏もボーカルパートを歌うシンガーがジョン・ホール、ジャクソン・ブラウン、カーリー・サイモンという面子である。 中間部でのサックスソロはクレジットがないのでわからないが、映像から若きマイケル・ブレッカーだと推察される。まだあまり上手くないです(笑)。
推薦曲:「RUNAWAY / ボニー・レイット」
ボニー・レイットは米国のブルースをベースにしたシンガーで、フォーク、ロック等のフィールドで人気を博した。スライドギターの名手として知られている。このノー・ニュークス・コンサートでボニー・レイットはジャクソン・ブラウン、ブルース・スプリングスティーンと並び、イベントの中心人物となっている。 60年代のデル・シャノンのロックンロール曲をカバーしたもので、リズムの裏にアクセントを持つギターのカッティングが印象的。 オリジナルは途中で粋なオルガンソロが入る。このライブではオルガンソロの冒頭メロディーをツインギターでハモり、それを受けてハモンドオルガンのソロに突入する。このソロを弾いているのはウエストコーストでは腕利きのセッションマンでリトル・フィートのキーボーディスト、ビル・ペインだ。そつのないハモンドの典型的なフレーズが印象的。
推薦曲:「ステイ」
ブルース・スプリングスティーン&Eストリート・バンドとジャクソン・ブラウンという東西ロック・ミュージシャンの共演は歴史的なエポックである。 ジャクソン・ブラウンのライブ終盤で演奏される「ステイ」を、ブルース・スプリングスティーンのバンド、Eストリート・バンドが演奏するというこれまでには考えられないテイクだ。ジャクソン・ブラウン・バンドのピアニストはクレイグ・ダーギだが、Eストリート・バンドのアコピはプロフェッサー・ロイ・ビタン。ビタンの方が鍵盤のタッチが強力で、ダーギよりもスクエアなイメージがある。そんな東西のバックバンドの違いを聴き比べるのも面白い。 今は亡きクレランス・クレモンズのサックスソロ(とてもイイ!)に、ある種の違和感を覚えるのは私だけか?
推薦曲:「Teach your children」
クロスビー・スティルス・ナッシュ&ヤングの名盤『ディジャ・ヴ』からの名曲。映画「小さな恋のメロディー」のラストシーンに流れるあの完璧なハーモニーはスタジオで操作されたものではなかったというのが、このライブテイクを聴くと理解できる。3人のハーモニーはスタジオ録音盤以上に生き生きとしていて生々しい。 楽曲には反原発への想いを子供たちに伝えるというメッセージがあるのだろう。
今回取り上げたミュージシャン、アルバム、推薦曲
- アーティスト:ドゥービー・ブラザース、ジョン・ホール、ブルース・スプリングスティーン&E ストリート・バンド、ジャクソン・ブラウン、ボニー・レイット、クロスビー・ステ ィルス&ナッシュ、ジョン・マクフィー、コーネリアス・バンパス など
- アルバム:『NO NUKES』
- 推薦曲:「POWER」「Runaway」「STAY」「Teach your children」
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