突然ですが、皆さんは普段ギターのピックアップ(以下PU)の高さを意識されていますでしょうか?
自分好みのサウンドを追い求めて頻繁にPUの高さを微調整している方もいれば、購入時のまま一度も触ったことがないという方もいるでしょう。
筆者は、PUの高さによる音質変化は思っている以上に大きいと感じています。そのため、自分が所有する楽器はすべて、自分好みのサウンドになるように高さを調整しています。演奏していて「今日はいつもとなんだか音が違うな」と感じるときは、ネックの反りや弦高と同じようにPU高も必ずチェックします。
今回は、これまでPUの高さを調整したことがない方や、調整に興味はあるけれどやり方がわからない方に向けて、PU高がサウンドにどのような影響を与えるのかを詳しく解説していきます。この記事が皆さんの楽器のポテンシャルを100%引き出すきっかけになれば幸いです。
PU高の測り方
PU高の定番の測り方としてよく紹介されているのが、最終フレットを押さえた状態で、PUのポールピース(磁石部分)と弦の間の距離を測る方法です。

多くのギターでは、1弦側と6弦側(ベースなら1弦と4弦/5弦/6弦側)で数値を測るのが一般的です。
PU高を測る際に筆者が使用している道具はこちらです。

これがあればPU高も計りつつドライバーを使って高さ調整もできるので非常に便利です。
弦高調整やネックの反り調整などにも使えます。
実験環境
今回は筆者が所有するSSHレイアウトのギターを用意しました。(Ibanez AZES40)
リアPU(ハムバッカー)とフロントPU(シングルコイル)の2種類を対象にして、クリーントーンとドライブサウンドでそれぞれコード弾きと単音弾きを比較します。アンプやエフェクターの設定はすべて統一し、PU高の違いによるサウンド変化のみを検証しました。
基準となるセッティング
まずは、普段筆者が使っている「基準のセッティング」を紹介します。
- リアPU:1弦側 2.5mm / 6弦側 2.5mm
- フロントPU:1弦側 2.0mm / 6弦側 2.5mm
このセッティングは、音量感のバランスを取りつつ、音色のコントロールがしやすい範囲でなるべく高めに設定しています。PUを高めにすることで弦の信号を強く拾い、**SN比(Signal to Noise Ratio)**が良くなるのが大きなメリットです。
また、フロントとリアで音量差が大きいと個人的に扱いにくいと感じるので、可能な限り音量差を小さくすることを意識しています。
PUを低めに設定した場合
次に、リアPUとフロントPUをそれぞれなるべく低めにしてみました。
- リアPU:1弦側 5.0mm / 6弦側 5.5mm
- フロントPU:1弦側 5.5mm / 6弦側 5.5mm
この状態で弾いてみると、まず音量がかなり小さくなります。PUと弦との距離が離れることで信号が弱まり、音が全体的に落ち着いた丸い印象になりました。高域が抑えられているので、柔らかいトーンが欲しい場面では有効です。
ただし、歪ませたときにはドライブ感が薄く感じられました。アンプやエフェクター側でゲインを上げれば同程度に歪ませられますが、その分ノイズが増えてしまい、結果的にSN比は悪化します。
この特性を活かせるのがジャズやクリーントーン主体の音作りです。アタック感を抑えてふくよかなトーンを求める場合には、低めのPU高が有効です。
PUを高めに設定した場合
続いて、PUをできるだけ高めに調整してみました。
- リアPU:1弦側 0.75mm / 6弦側 0.75mm
- フロントPU:1弦側 0.5mm / 6弦側 0.5mm
弾いた瞬間に感じたのは、音量の大幅な増加です。弦振動を強力に拾うため、全体的にパンチのある元気な音になります。歪み量も格段に増え、ハードロックやメタルのように激しいサウンドを求めるジャンルには相性抜群です。
一方でデメリットもあります。ゲインが高すぎて扱いづらくなる場合があるほか、PUがボディから飛び出しすぎてピッキングの邪魔になることがあります。また、弦に磁力が強く作用するため、サステインが不自然に短くなったり、コーラスがかかったような音程がわずかに狂う現象が出ることもあります。
まとめ
いかがでしたでしょうか?
PUの高さを変えるだけで、音量・音質・歪み感・演奏感覚まで大きく変化します。しかも必要なのはドライバー一本で、特別な工具も知識も不要です。
- 低めにすると → 丸く落ち着いた音、クリーン主体のジャンルに有効
- 高めにすると → パンチのある音、歪み多めのジャンルに有効
まだ試したことがない方は、ぜひ自分の楽器で調整してみてください。ほんの数mmの違いでサウンドは大きく変わります。きっと「このギター、こんな音が出せたのか!」という新しい発見があるはずです。
あなたのギターやベースのパフォーマンスを100%引き出すために、PU高の調整をいつものメンテナンスで取り入れてみてはいかがでしょうか?
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