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シンセサイザー鍵盤狂 漂流記 ~音楽を彩った電気鍵盤たちとシンセ名盤の数々~ その53

2021-10-28

Theme:sound&person

■マイケル・フランクスの音世界を彩る複数プロデューサー リゾート編

今回の鍵盤狂漂流記はマイケル・フランクス、リゾート編をお送りします。マイケル・フランクスの特集はプロデューサーやミュージシャンを切り口としてマイケルの音楽を考察するもので、今回で4回目を迎えます。 マイケル・フランクスはこれまでに18枚もののアルバムをリリースしています。この中でリゾート性が高いのが14枚目の「ベアフット・オン・ザ・ビーチ」と15枚目「ウォッチング・ザ・スノー」、16枚目「ランデブー・イン・リオ」です。「ベアフット~」と「~リオ」は夏のイメージなので冬のイメージがある「ウォッチング・ザ・スノー」と「ベアフット・オン・ザ・ビーチ」を取上げることにします。

「ベアフット~」のプロデューサーは複数で、ギタリストのチャック・ローブやイエロージャケッツのベーシスト、ジミー・ハスリップらの名前がクレジットされています。「ウォッチング~」は「ベアフット~」の作曲者で、キーボードプレイヤーのリチャード・ブレジングがプロデュースを務めています。

■推薦アルバム:マイケル・フランクス『ベアフット・オン・ザ・ビーチ』(1999年)

マイケルには珍しくウインダム・ヒルレーベルからのリリース。夏をテーマにしているアルバム表には海辺の足跡(ベアフット)、裏ジャケットには水から上がったマイケルの筋肉隆々なバストショットが掲載されている。

推薦曲:『ベアフット・オン・ザ・ビーチ』

リゾート感満載のこの曲はプログラミングされたドラムからスタートする。曲はピアニストのチャールズ・ブレイジングが書き、作詞にマイケルの名がクレジットされている。シンセサイザーパッドによるアンビエント感漂う空間の作り方は気怠い夏の空気を想起させる。チャールズ・ブレイジングによるフェンダーローズの抑制されたピアノソロは聴きもの(スケール・アウトがお洒落です)。チャールズ・ブレイジングはマイケルのライブ映像などを見るとかなりの頻度で確認できるキーボーディスト。後半に聴けるクリス・ハンターのアルトサックスソロも素晴らしい。クリス・ハンターはギル・エバンスが主宰したマンデイ・ナイト・オーケストラのメンバー。私がマンハッタンのスイート・ベイジルで聴いた時にも素晴らしいプレイをしていました。ニューヨークのファーストコールミュージシャンとして知られています。

推薦曲:『ダブル・トーク』

面子が凄い!ボブ・ジェームス(Pf)、スティーブ・ガット(Dr)、ジョン・パテトゥチ(B)、ディブ・サミュエルズ(Vib)など、完全にジャズ!音の隙間だらけな品のいい演奏は、この面子でしかできない高度な技に裏打ちされている。シックなマイケルのボーカルにも惚れ惚れする。マイケルのアルバム参加は珍しいボブ・ジェームスのピアノソロも秀逸。楽曲最終部でピアノとデイブ・サミュエルズのビブラフェンの掛合いがあり、サミュエルズの端正なソロも聴きものです。

■推薦アルバム:マイケル・フランクス『ウォッチング・ザ・スノー』(2003年)

冬やクリスマスをテーマに制作されたアルバム。マイケル・フランクスといわば「夏」のイメージが付きまとうが、シチュエイションが「冬」であっても、やはりマイケル節は健在。ボサノバ的楽曲は品のいいブラスアンサンブルで構成され、心地良い。冬の荒涼とした風景ではなく、温かな暖炉や焚火を連想させ、マイケルらしさに溢れている。

推薦曲:『The Way We Celebrate New Year's』

ナイロン弦のアコースティック・ギターからスタートするボサノバをベースにした名曲。歌詞の中にチャーリー・パーカー(Sax)や作家、サリンジャーなどが登場する。これまでマイケルの歌詞の中にはジョン・コルトレーン(Sax)やマイルス・デイビス(Tp)など、ジャスミュージシャン達も多数登場している。マイケル印溢れる楽曲。楽曲後半のアコースティックギターソロも聴きものです。私は家族でスキーに出かけた時、車中でこの曲をよく聴いていました。

推薦曲:『クリスマス・イン・キョート』

歌詞の中に、キョート(京都)、サケ(酒)、かっぱ巻き with わさび、着物など日本語ワードが山盛りで思わず微笑んでしまいます。私は京都とは知らずに「キョート」が「キヨロ」と聞こえたため、歌詞を見た際に京都だと分かりました。3管による端正なブラスアンサンブルが素敵なマイケルらしい楽曲です。

推薦曲:『アイランド・クリスマス』

最後の美しいアコースティック・ピアノと抑えの効いたトランペットの掛合いが素晴らしい!

■今回取り上げたミュージシャン、アルバム、推薦曲、使用鍵盤

  • アーティスト:マイケル・フランクス、ボブ・ジェームス、チャールズ・ブレイジング、チャック・ローブ、ジミー・ハスリップ、ウイル・リー、ジェフ・ミロノフ等
  • アルバム:「ベアフット・オン・ザ・ビーチ」、「ウォッチング・ザ・スノー」
  • 曲名:「ベアフット・オン・ザ・ビーチ」、「ダブル・トーク」、「The Way We Celebrate New Year's」、「クリスマス・イン・キョート」、「アイランド・クリスマス」
  • 使用機材:アコースティック・ピアノ、フェンダーローズ・エレクトリックピアノ等

コラム「sound&person」は、皆様からの投稿によって成り立っています。
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shinsekenban

高校時代よりプログレシブロックの虜になり、大学入学と同時に軽音楽部に入部。キーボードを担当し、イエス、キャメル、四人囃子等のコピーバンドに参加。静岡の放送局に入社し、バンド活動を続ける。シンセサイザーの番組やニュース番組の音楽物、楽器リポート等を制作、また番組の音楽、選曲、SE ,ジングル制作等も担当。静岡県内のローランド、ヤマハ、鈴木楽器、河合楽器など楽器メーカーも取材多数。
富田勲、佐藤博、深町純、井上鑑、渡辺貞夫、マル・ウォルドロン、ゲイリー・バートン、小曽根真、本田俊之、渡辺香津美、村田陽一、上原ひろみ、デビッド・リンドレー、中村善郎、オルケスタ・デ・ラ・ルスなど(敬称略)、多くのミュージシャンを取材。
<好きな音楽>ジャズ、ボサノバ、フュージョン、プログレシブロック、Jポップ
<好きなミュージシャン>マイルス・デイビス、ビル・エバンス、ウェザーリポート、トム・ジョビン、ELP、ピンク・フロイド、イエス、キング・クリムゾン、佐藤博、村田陽一、中村善郎、松下誠、南佳孝等

 
 
 

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