WARM AUDIOとDirty Boy Pedalsによるコラボレーションモデル「Dirty Boy Jr. Overdrive」。
オーバードライブ、プリアンプ、そしてアナログのアンプ・シミュレーターという3つの機能を1台に凝縮した、非常にユニークなエフェクターです。
Gain、Tone、Volumeに加えて、真空管アンプの電圧を下げた際の挙動を再現するVariacコントロールを搭載。
さらに通常のPreamp Outとは別に、独自のT.A.E.(Tube Amp Emulation)によるスピーカー・エミュレート出力を備えています。
機能だけ見ても面白い製品ですが、実際に弾いてみると、何より歪みそのものに強い個性を感じました。
試奏環境
- ギター:Fender ストラトキャスター(センターPU)
- アンプ:Marshall JVM210H(CLEAN ch)/ 1960A
- マイク:SHURE SM57
- オーディオインターフェース:RME Babyface Pro FS
- DAW:Logic Pro





今回は2系統の出力を同時に収録しています。
1つはPreamp OutからMarshall JVM210Hへ接続し、1960AキャビネットをSHURE SM57で収録したアンプサウンド。
もう1つはT.A.E.によるEmulated Outから、RME Babyface Pro FSへ直接入力したラインサウンドです。
試奏内容
今回はGainとVariacの組み合わせによる音色変化を録音しました。
GainをLow / Mid / Highの3段階に設定し、それぞれに対してVariacもLow / Mid / Highの3段階に設定。
合計9種類の組み合わせを演奏しています。
- Gain Low / Variac Low
- Gain Low / Variac Mid
- Gain Low / Variac High
- Gain Mid / Variac Low
- Gain Mid / Variac Mid
- Gain Mid / Variac High
- Gain High / Variac Low
- Gain High / Variac Mid
- Gain High / Variac High
それぞれコード、アルペジオ、単音フレーズ、ギター本体のボリュームを絞ったフレーズを収録しました。
アンプを通したサウンドと、Emulated Outによるラインサウンドの両方を録音しています。
アンプを通したサウンド
Emulated Outによるラインサウンド
サウンドの印象
歪みペダルは数多くありますが、このDirty Boy Jr. Overdriveの歪みは、かなり個性的だと感じました。
一般的にヴィンテージアンプのオーバードライブというと、Marshall PlexiやFender Blackfaceなどをイメージすることも多いと思います。
しかし、このペダルの歪みはそのどちらとも少し違う印象です。
どちらかというとSuproのようなレトロなヴィンテージアンプ、あるいはFender Tweed系の歪みに近い感覚を受けました。
バリッとした硬質な質感があり、歪みの輪郭には少し荒々しさを感じます。
荒いだけではなく、音に奥行きがありどこか品や安心感を感じます。
現代的なオーバードライブとは違う、ヴィンテージアンプならではの不均一さや、独特の空気感を持った歪みだと感じました。
そして、このペダルで圧巻だったのがVariacコントロールです。
Variacとは本来、真空管アンプに供給する電圧を可変させるための機器。
電圧を下げることで、アンプのコンプレッションやレスポンス、歪み方が変化していきます。
ヴァンヘイレンの機材でも有名な話ですね。
本機ではその挙動をシミュレートしています。
VariacをLowに設定すると、ブチブチと音が途切れるような、極端に電圧が不足したアンプを思わせる独特なサウンドが現れます。
正直に言えば、通常の演奏で常用するには扱いづらい音です。
しかし、曲中のアクセントやレコーディングでの色付けとして考えると、攻撃力の高い音色です。
普通のオーバードライブではなかなか得られない、壊れかけたアンプのような表現ができます。
一方、VariacをMid、Highへと設定していくと、前述した芳醇なヴィンテージアンプらしい歪みが得られます。
GainとVariacをともに上げていけば、豊かな粘りと伸びのあるサステインも容易に得られます。
基本的には少しファジーな方向性の歪みですが、設定次第で非常に滑らかで気持ちの良いリードサウンドまでカバーできます。
弾いていて楽しいペダルです。
T.A.E.によるEmulated Out
そして今回、もうひとつの機能がT.A.E.によるEmulated Outです。
本機には通常のPreamp Outに加えて、キャビネットの音響特性をアナログ回路で再現した出力が搭載されています。
今回はこの出力からオーディオインターフェースへ直接接続し、ライン録音も行いました。
まず印象として、音色のエミュレーションは非常によくできています。
アンプに接続した際の基本的な歪みのキャラクターを損なっておらず、Dirty Boy Jr. Overdriveらしい独特の質感がしっかり残っています。
ただし、ここは認識しておきたいポイントですが、近年のIRを使用したキャビネット・シミュレーターのような空間的な再現とは少し方向性が異なります。
感覚としては、往年のSansAmpなどに近い印象です。
空間的な鳴りを細かく再現するというよりも、アナログ回路によってアンプサウンドのキャラクターを作り、そのままライン出力できるというものです。
これは音色としての完成度は高く、僕が聴いた限りではエミュレーションそのものに不満は感じませんでした。
そして、この機能が特に活躍するのはライブでの使用でしょう。
たとえば、ステージ上でギターアンプを鳴らしながら、Emulated OutからPAへも信号を送る。
いわばベーシストがアンプとDIを併用するような発想です。
アンプのマイク収録による音色に加えて、ライン信号による芯や明瞭さをPA側で補うという使用方法です。
PAエンジニアの選択肢が増えることには大きな利点があります。
ステージ上のギタリストにとっても、PAエンジニアにとっても、そして客席で音を聴くオーディエンスにとっても、有益な機能になるのではないかと思います。
総評
「オーバードライブ、プリアンプ、アンプ・シミュレーターをすべて1台に凝縮」
メーカーが掲げるこの言葉には、実際に使ってみて納得できました。
非常に個性的な歪みを持ちながら、GainとVariacによって幅広いサウンドを作ることができ、さらにアンプを使用しないライン録音やライブでのPA出力にも対応する。
個性が強いのに万能。
なかなか珍しいエフェクターだと思います。
ギタリストなら誰もが一度は「歪みペダルはもう十分だ」と思ったことがあるのではないでしょうか。
僕自身も、手持ちの歪みペダルで自分の音は完成したと思っています。
だから、もう新しい歪みは必要ない。
そう思っていました。
でも、これは欲しいです。
今持っているものとは明らかにキャラクターが違う。
その違いだけで、新しいフレーズや曲が生まれそうな気がします。
そんな気持ちにさせてくれるオーバードライブでした。









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