
エレキギターの中でも、SSHレイアウト(シングル・シングル・ハムバッカー)は非常に人気の高いピックアップ構成です。
リアにハムバッカー、フロントとミドルにシングルコイルを搭載したこのレイアウトは、ロックからポップス、ファンク、ブルース、さらには現代的なハイゲインまで幅広いジャンルに柔軟に対応できる懐の深さが特徴です。
スタジオミュージシャンなどのプロのギタリストにも愛用者が多く、国内外を問わずさまざまなシグネチャーモデルにも採用されています。近年ではIbanez AZESシリーズやYamaha Pacificaシリーズなど、エントリークラスの価格帯にもSSHモデルが豊富にラインナップされ、初心者にとっても手に入れやすいレイアウトになりました。
Ibanez ( アイバニーズ ) / AZES40-PRB
YAMAHA ( ヤマハ ) / PAC612VIIFM TBL エレキギターPACIFICA(パシフィカ)
しかし一方で、
「どのピックアップをどんな場面で使えばいいの?」
という疑問を持つ初心者の方も少なくありません。実際、SSHの強みである“多彩な音の使い分け”は、慣れていないうちはかえって選択肢の多さが悩みになりがちです。
そこで今回は、SSHレイアウトのギターをより効果的に使いこなすために、代表的なPUセレクトの使い分けを分かりやすく解説していきます。
「まずはこの考え方で使ってみよう」というガイドラインとして、ぜひ参考にしてください。
1. リアハムバッカー ― 歪みサウンドの主役

リアポジションのハムバッカーは、SSHレイアウトの中で最も出力が高く、太いサウンドを持つピックアップです。
ハムバッカーの特徴
- シングルコイルより出力が大きい
- 中低域が強く太い音
- ノイズに強く、歪ませても暴れにくい
- 力強いリフやリードに最適
これらの特徴から、ディストーションを使ったロック系のバッキングやリードに向いています。
パワーコードで重いリズムを刻む場合は、まずリアハムを選んでおけば間違いありません。
また、モダンなハイゲインサウンドが欲しい場合でも、リアハムは安定して使えるため、
「とりあえず迷ったらリアハム」
という王道ポジションと言えるでしょう。
2. フロントシングル ― 温かいトーンでメロディを歌わせる

フロントシングルは、シングル特有の抜けの良さを持ちながら、フロント特有の柔らかく丸い音色が魅力です。
どんな時に使う?
- 曲中のギターソロ
- イントロアウトロなどのリードフレーズ
- 落ち着いた場面でのクリーンアルペジオ
フロントPUは指板寄りに位置しているため弦振動が大きく、太くウォームなトーンを自然に得られるのもポイントです。
さらに、丸い音はピッキングの粗がリアに比べて目立ちにくいので、初心者でも扱いやすいのも嬉しい点です。
ただし、シングルコイルは出力が弱いため、ソロパートでは音量が下がりがち。
リードを弾くときには
- ブースター
- オーバードライブ
- 音量アップのEQ
などと組み合わせると、より存在感のあるラインが弾けます。
深い歪みではノイズが増えることもあるので、必要に応じてノイズゲートを使用すると快適です。
3. フロント&ミドル(シングルのハーフトーン) ― カッティングの王道

ストラトキャスターの魅力のひとつであるハーフトーンは、SSHでも出すことができます。
このポジションの特徴
- カリッとした明るいトーン
- 中低域がスッキリ
- コードカッティングとの相性抜群
シングル単体よりも低音が整理されるため、バッキングに最適で、とくにファンクやポップス系のカッティングでは主役となるサウンドです。
アンサンブルの中でも埋もれにくく、キラッと明るい存在感を保ちながら、邪魔にならないちょうど良い帯域を作り出してくれます。
4. リアハムのコイルタップ ― 歯切れの良いリアシングルトーン

SSHギターの多くには、リアハムにコイルタップ機能が搭載されています。
これはハムバッカーの2つのコイルのうち、1つだけを使ってシングルのように出力を落とす仕組みです。
タップのメリット
- 歯切れの良いリアシングルの音が作れる
- ロックから邦バンド系まで幅広く対応
- 太すぎる時にサウンドを軽くできる
リアハムの音が「暑苦しい」「太すぎる」と感じる曲では、タップを使うことでバランス良くミックスに馴染むサウンドになります。
特に邦ロック系のギターサウンドは、リアシングルに近いカッティングや軽やかなリードが多いため、原曲に寄せる場合にタップは非常に便利です。
実際、カラオケ制作の仕事で邦ロックバンドのオケ制作をしている時はリアハムよりタップさせた音を使う場面の方が多い印象です。
もしギターにタップスイッチがついていなくても、4芯配線のハムバッカーであれば後付けでタップ化できるので、改造に挑戦してみるのも良いでしょう。
5. フロントシングル&リアハム(タップ) ― テレキャス風の万能ハーフトーン

SSHの新たな魅力を引き出すのが、フロント+リア(タップ)の組み合わせ。
これは多くのギターでは標準搭載されていませんが、改造してでも使う価値があるほど人気の高いサウンドです。
得られるサウンド
- テレキャスターのハーフトーンに近いシャリッとした音
- カッティングのキレが増す
- クリーンアルペジオがめちゃくちゃ映える
- ポップス・ファンク・シティポップなどと相性抜群
非常にバランスが良く、クランチからクリーンまで幅広く使える“万能ポジション”と言っても良いでしょう。
Ibanez AZシリーズは、このレイアウトを標準で搭載しており、クリーンの美しさが際立つおすすめモデルです。
Ibanez ( アイバニーズ ) / AZ22S1F-TXB
まとめ ― SSHは“使い分け”が最大の武器
SSHレイアウトのギターは、ポジションごとに明確なキャラクターを持っています。
そのため、ただなんとなく切り替えるのではなく、
曲のジャンル・アンサンブルの厚み・弾きたいプレイのニュアンス
を意識して使い分けることで、同じギターでもまったく違う表情を引き出すことができます。
今回紹介した使い方を参考に、まずは自分のギターでいろいろ試してみてください。
コラム「sound&person」は、皆様からの投稿によって成り立っています。
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