人前で弾くと驚きのあまりお客さんにガン見される、それでも大切に持っていたい機材があります。
それは YAMAHAのショルダーキーボード、KX5です。

KX5の発売は1984年、今から40年以上前です。
1984年は、初代ファミコンや伝説のFMシンセDX7が発売されてからまだ一年。
インターネットすら普及しておらず、ショルダーフォンの登場やビックリマンチョコのヒットすらまだ一年後のこと。
こう考えると40年前とはいえ物凄い昔だな..と感じてしまいます。
当時の音楽業界はデジタル化の波が来ており、ギターもペダルボードから巨大なデジタルラックシステムへ、ツマミだらけのアナログシンセも液晶が載ったデジタルシンセへ、といった具合に目まぐるしく変化していた時期でもあります。
そんな時代に登場したKX5は、新しいもの好きのアーティストの方がこぞって使用していました。国内で見ると、
- 坂本龍一さん
- 小室哲哉さん
- 浅倉大介さん
- 向谷実さん
などなど。
主にシンセサイザーに精通している方々が使用されている印象です。
今回はそんなKX5の機能や使い方を徹底的に解説していきたいと思います。
用途
まず前提としてKX5はMIDIキーボードですので、ハードやソフト音源を鳴らすことに使用します。KX5自体から音を出すことは不可能で、DTMに使用するMIDIキーボードと根本的な機能は全く変わりません。

写真のような使い方もイケます。
重量は3.7kg。重い重いと言われていますが、普段からギターを弾いてる方にはそこまで重くないと思います。それよりもバックパネルが骨盤に当たるのが痛いです(笑)。
鍵盤
長さ約9cm、幅約2cmのミニ鍵盤です。
多少違和感はありますがそこまで演奏のしづらさはありません。
板バネが使用されていて、重すぎず軽すぎない押し心地になっています。
最近のシンセの打鍵感と比べると、少しカタカタした感触です。

このミニ鍵盤が折れやすいということはKX5界隈ではよく言われています。
特に黒鍵の付け根あたりをあまりに強く弾いてしまうと、パキッと黒鍵パーツの根元が折れてしまい、こうなると板バネの張力が効かずに常に鍵盤が下がって弾けなくなります。
僕も数年前に一度やらかして修理する羽目になりました(分解して割れた破片を元の部分に瞬間接着剤でくっ付けただけ)ので、最近は音源側であえてベロシティを強めに設定した上で、鍵盤は軽く弾くように対策しています。

機能
まずは左手で掴むグリップ部分。
機能は先端から…
SUSTAINボタン
ピアノの足元にあるサステインペダルと同じ働きをします。Logic Proでは、ボタンを押している間、サステインのオートメーションが書き込まれます。

リボンコントローラー
(黄ばんでいたため上から黒のマスキングテープを貼っています)
こちらはピッチベンドを行います。ベンドの範囲は音源の設定に依存します。僅かにムニっとした感触ですが、何か押している感じは殆どなく、かといって軽いタッチで反応するわけでもなく、割としっかり上から押さえてあげないと反応しません。

リボン中央のポジションからでなくても押さえた場所に応じて強制的にピッチが変化しますので、トリル奏法も可能です。
モジュレーションホイール
モジュレーションをかけます。ぬるっとした回し心地でグイグイ変化させるのには向いていません。強さは音源の設定に依存しますので、音源でモジュレーションをオフにすればどれだけホイールを回しても変化はしません。
ボリュームホイール
ボリュームを調整します。こちらも回転には適度に抵抗があるため、グイグイ変化させるのには向いていません。もしヴァンヘイレンのようなボリューム奏法がしたければ、別でボリュームペダルを買うのがベストだと感じます。

続いて本体のメインパネルに移ります。
ここも左側から…

ポルタメントスイッチ+ツマミ
ポルタメントのオンオフを切り替えることができます。ツマミはピッチの変化時間を調整します(最初に弾いた音から次の音のピッチに移るまでの時間)。
設定できる幅は広く、わずかな時間から数秒かけるような遅いピッチ変化も可能です。
モノ、ポリ切り替えスイッチ
モノフォニックとポリフォニックを切り替えられます。
速弾きのソロを弾きたい時などに、モノにして細かいフレーズを聴きやすくする、といった使い方ができます。
トランスポーズスイッチ
音を1オクターブ分上下することが可能です。KX5の鍵盤は3オクターブ分ですので片手で弾く分には基本困りませんが、このスイッチを活用すれば61鍵のシンセと同じ5オクターブの音域を演奏可能です。
バンク、ボイス選択スイッチ
これは主にハードシンセに接続した際に使用します。

- バンク1を選んだ場合→プリセット1~8が選択可能
- バンク2を選んだ場合→プリセット9~16が選択可能
これがバンク4まで×MIDI2ch(音源2台)分ですので最大64種類の音を選ぶことが可能です。
押したバンクボタンによって選べるプリセット番号が変わります。
プリセット1を弾いていてプリセット30の音に変えたい時は、一度バンク4ボタンを押してから、プリセット30のボタンを選ぶ必要があります。
※注意点としてKX5で鳴らしたい音は、なるべく小さいプリセット番号に保存する必要があるということです。プリセット100に保存した音などは、本体の仕組み上選ぶことができません。
余談ですが、TRANSEPOSE、BANK、VOICEはそれぞれ二つ以上のボタンの同時押しができません。どれかボタンを押すとそのボタンは押し込まれた状態になり、元々押されていたボタンがカチッと戻ってきて面白いです。昔のカセットデッキを彷彿とさせるギミックです。

ボタンを全て押されていない状態にするには、戻したいセクションの押されていないボタンを半押しすれば、元々押されていたボタンが手前に戻ってきます。
MIDIチャンネルセレクター
ボタンを押すたびにMIDI ch1とch2が交互に切り替わります。ハードのMIDI THRUやDAWの受信チャンネルを設定することで、2種類の音源を使い分けることが可能です。
電源ボタン
赤く目立つボタンです。位置的にも演奏中に間違って押すことはありません。
電源を入れると、左にあるチャンネルのランプが赤く点灯します。電池残量が少ないと点滅して教えてくれるので、突然の電池切れが起きない工夫がされています。

※MIDI端子にケーブルかアダプターが挿さってなければ電源はつきません。
続いて背面。
5ピンのMIDI端子
かなりガッチリ挿さりますので、万が一ケーブルを踏んでもスッポ抜ける可能性は低いです。また市販のMIDIワイヤレス送信機も使用可能です。

私がライブで使用していた無線のMIDIです。
遅延に関しては数mであればそこまで感じませんが、15mほど離れると少しラグがある様に感じます。


KX5側には発信機だけを挿し、受信側にはOutに大きい方、Inに小さい方を取り付けます。

鍵盤右側面は
電池ボックス、電池ホルダー

これがかなりのクセものです。
まず電池蓋はプラスチック製で、スライドして付け外しをします。
経年劣化のせいかツメの付け根が白くなっているので、割れないようタミヤの工作用プラバンと接着剤で補強しました。将来的に肉抜き部分は一部パテで埋める予定です。

白い電池ホルダーもパツパツで電池が入れにくいです。またプラスチックが薄っぺらく、経年劣化も相まってバキバキに割れてしまいます。
僕は応急処置としてガムテープで割れ目を広げないようにビタッと巻いていますが、もっと良い方法がないか模索中です。

電池ホルダー内の金具(バネ?)が外れてダメになってしまい、分厚く折ったアルミホイルを突っ込んでなんとか通電させています。動作には全く問題ないですが、やはり不安です。
駆動は単三電池6本です。
KORGのショルキーRK-100S 2も同じですが、そちらには音源が入っていることを考えると、もう少しKX5は省エネだといいなぁと勝手に感じています。


鍵盤左側は
ブレスコントローラー端子
笛のように息の量で抑揚をつけることができるアイテムの端子です。あまり売れなかったのか中古でもほぼ見かけません。

裏面には小さなゴム足が4つ付いています。ライブの際はバックパネルにプチプチを貼り付けて、骨盤に当たっても痛くないようにしています。

まとめ
ここまでいかがでしたでしょうか。
ここ数年でも様々なメジャーなライブにおいて、ひっそりと活躍している機種です。昭和を感じさせない先進的なデザインや無駄のない機能性で、演奏していてとても楽しいです。
中古市場には今でも複数出回っていますので、ぜひチェックしてみてください。
KX5で弾いてみた動画も投稿していますのでご覧いただけると幸いです。
ここまでお読み頂きありがとうございました。
コラム「sound&person」は、皆様からの投稿によって成り立っています。
投稿についての詳細はこちら







MIDIキーボード 入門ガイド
シンセサイザー 入門ガイド
USB接続MIDIインターフェイス
USB接続対応のMIDIキーボード
用途で選ぶ!鍵盤楽器の種類
キーボードスタートガイド

