
懐かしのレコードやカセットの音を、PCに取り込むことができるオーディオ・インターフェイス AMERICAN AUDIO / VERSAPORT。
AMERICAN AUDIO / VERSAPORT
VERSAPORTを使用して、オリジナルのCD-Rを作ろうというこのブログシリーズ。
ビョークのライブ・エアチェックテープに続く第2回目は、来日記念といたしまして、ポール・マッカートニーのレトロな8トラック・カートリッジ・テープ(通称8トラ)をCD-Rにしてみたいと思います。

8トラック・カートリッジ・テープは、日本では主に1960年代、70年代、カラオケやカーステレオ、また路線バスの社内放送用などで普及したメディアです。ステレオ2トラックが4つ、合計8トラックの信号が録音された形式です。
昭和レトロな魅力が満載の8トラック・テープ。再生デッキはさぞや高額なものと思われるかもしれません。しかし中古オークションなどを見ると、再生可能品でも数千円程度で出品されているものをよく見かけます。かく言う私も、中古オークションにて、ワンコイン500円で落札。また今回登場するテープも数百円から1000円ほどで購入。
デッキ購入の際に注意していただきたいのは、東日本と西日本で電源周波数が違うことです。お住まいの地域と違う周波数のものを購入してしまうと、回転数が合わない場合があります。オークションや通販で購入の際は、必ずお住まいの地域の電源周波数と、出品者の地域を確認してから購入しましょう。
それでは今回は私がいくつか所有しているポール・マッカートニーの8トラ・カセットを4本ほど聴いて、その中からこれぞ8トラ!というべきタイトルのテープから、1枚CD-Rを作成してみたいと思います。
■ PAUL McCARTNEY / McCARTNEY (1970)

ビートルズ解散時にリリースされた、元祖ローファイな宅録アルバム。
8トラで聴いてみますと、切ないメロディーが実に温かいです。
収録曲のクレジットを見ると、曲順は本来のものとはかなり違ったものになっています。8トラという構造上の理由でしょうか。今回ご紹介する作品はすべて当時のレコードとも、もちろん現在のCDとも曲順が違います。
今までは、レコードやCDで、作品の荒削りで素人っぽい仕上がりに、ロックっぽさを感じていたものでした。8トラで聴くと、尖ったところが丸くなっていて、どの曲から聴いても、どの曲順で聴いても、何の違和感もなく楽しめます。ロック色が後退したような音質となっている分、各楽曲に詰まっていた甘味なメロディが、丸くボンヤリとした音質によって引き出されています。
この時点で言ってしまうのもなんですが、この作品こそ8トラの魅力を表現するのにマッチした作品ではないでしょうか。
■ PAUL & LINDA McCARTNEY / RAM (1971)

続きましては獰猛な牧歌的ロックと、壮大なバラードが楽しめるソロ2作目を。2012年にはアーカイブ・コレクションとして、リマスター盤CDとLP、さらには同時に発掘されたモノラル・バージョンのリイシューもありました。そのため現在では、より一層このアルバムの楽しみ方も多様化しているように思います。熱心なファンの間では、オープン・リールテープで聴く音質も話題になっています。
早速8トラで聴いてみると、ポールのシャウターボイスが少しマイルドに響きます。同時に、コーラスで参加している愛妻リンダの声とオーケストレーションが、より大きく広がっているように聴こえてきます。
「TOO MANY PEOPLE」での、ポールの叫び声を、女性の声でコーティングしているような効果をもたらしているのでしょうか。少しやんわりとした叫びに聴こえます。Aメロのエレクトリックギターもレコードより甘く響きます。
■ WINGS / VENUS & MARS (1975)

続いては、ポールが結成したバンド「ウイングス」のバンドとして充実しはじめた頃のアルバム。
他の3作品同様、今までレコードやCDで何回も聴いてきました。今回8トラで聴いて、一番印象が変わって聴こえたのがこのアルバムです。
金星と火星をステージの照明ライトに喩えて歌われるタイトル曲を含んだ、宇宙的なイメージのアルバムとしての性質も感じるこの作品。8トラでは曲順がLPなどとは違うため、全体の印象もガラリ。ウイングスで最もロックしたアルバムとして認知されている作品です。8トラで聴くと、これぞ昭和心を擽る、素晴らしい歌謡ロックです。
ウーンやはりこれが8トラNO.1でしょうか。
■ WINGS / LONDON TOWN (1977)

ウイングスのワールドツアーによる世界的な成功の後に、リリースされた英国回帰的アルバム。美しい英国フォークなナンバーが比較的多く収録されています。
8トラで聴いてみると、演歌にも通じる力強いボーカルが炸裂しました。渾身のトラッドスピリットが、この8トラならではのサウンドで見事に昇華しています。庶民が愛する、大切な民歌(タミウタ)集といった趣。中でも「ピンチをぶっ飛ばせ」の味わい深い歌いっぷりは白眉と思います。
ニューウェーブ/モダン・ポップな「WITH A LITTLE LUCK」や「BACK WARDS TRAVELLER~CUFF LINK」のシンセが、すこしザラっとした感じでうねりまくるのも、新たな発見でした。ポールの歌心と実験精神をより一層楽しめた一本でした。
今回VERSAPORTを使って、どのアルバムの8トラをCD-Rにしようか迷います。
全部作りたいところですが、今回は、英国製昭和歌謡グルーヴを楽しめた「VENUS AND MARS」の8トラック・テープからCD-Rに録音してみます。

前回のブログでご紹介したとおり、使い方は簡単です。テープデッキのRCA からVERSAPORTへRCAで繋げられます。VERSAPORTをPCにつなげた後は、PCでお気に入りの変換ソフトを立ち上げれば、録音を開始できます。

PCに取り込みながら、改めて聴いていると、実に昭和な音質です。
PCへの取り込みが終わり、CDへ録音を開始。
同時にエクセルをつかって、ジャケット作成を。LPにはポスター2枚、ステッカー2枚、インナースリーブまでついて、ジャケットも見開き仕様と豪華だったため、パッケージ作成用の素材には困りません。

表面はそのままVENUS & MARSの8トラ・テープを。左右に余白ができてしまうため、サイド部分にLPのインナースリーブのデザインを使用。裏側はレコードに付属していたポスターの一部。ケース裏にはジャッケット内側の写真と、8トラの曲目表記部分の写真を。

スマホのカメラと、PCを使用していますが、切り貼りして作ったジャケは実にアナログな仕上がりです。
これでいよいよ完成!

通勤しながら、作成したCD-Rをカーステレオで聴きました。テープを再生している時の動作音は聴こえませんが、味わい深い独特な音はバッチリと堪能できました。
CD-Rの再生が終わり、カーステをラジオに切り替えると、偶然にも流れ出したのはポール・マッカートニーの「ロンリー・ロード」。
自分の孤独な趣味の長い道は、まだ続いていきそうです。
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