DTMerのみなさまこんにちは。先日WAVESのプロダクトマネージャーMichael Pearson-Adams氏が来日されたので、サウンドハウスDTMチームがインタビューしてきました!

■ Michael Pearson-Adams氏略歴
WAVES勤務歴17年
役職:開発ディレクター/プロダクトマネージャー/コンテンツ制作マネージャー
プロダクトマネージャーだけでなくアーティストリレーションも兼任。主に新製品開発での主任という立場で、コンテンツ作成時にアーティストへの依頼も行っている。
ミックスエンジニアとしてのキャリアもあり、著名アーティストのプロダクトに関わっていた。
プリセット共有コミュニティ「Studio Verse」をはじめ、WAVESの未来について興味深い話が沢山聞けたので、皆さんに共有します。
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WAVES製品開発において、大切にしている哲学やポリシーについて教えてください
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何よりも大切にしていることは音楽を作る人が喜ぶものを作ること。使い続けることで役に立っていくような製品開発をしたいね。
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これまでに開発で最も苦労したプラグインは何でしょうか?
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「SSLシリーズ」だね。開発には4年もの歳月がかかった。開発当時は、コンソールをモデリングするという前例がなかったから、本当に苦労した思い出があるよ。
WAVES / SSL 4000 Collection
WAVES / SSL G-Equalizer
WAVES / SSL G-Master Buss Compressor
WAVES / SSL EV2 Channel
WAVES / SSL E-Channel
WAVES / SSL G-Channel -
もし一つしかWAVESのプラグインが使えないとしたら、どのプラグインを選びますか?
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「MV2」だね。このプラグインはどのチャンネルにインサートしてもいい仕事をするんだ。通常のマイクチャンネルからドラムヘッドマイクのチャンネルまで、あらゆる要素をカバーできる万能なプラグインだよ。
WAVES / MV2 -
プラグインといえばPC向けというイメージが強いかと思いますが、スマートフォンをはじめ、PC以外のデバイスで動くプラグインを考えていますか?
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確定的なことは言えないのだけれど常に検討しているよ。CPU処理は大丈夫だろうか、小さなRAMではリアルタイム処理は難しいのではないか、など技術的な課題がまだあるんだけどね。
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新しいユーザー層(宅録や動画制作者など)に対して、WAVESはどんなアプローチを意識していますか?
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「Studio Verse」をはじめとするWAVESユーザーコミュニティを通して、新規ユーザーを教育していくことを意識しているよ。録音方法、マイキング等、初心者はわからないことだらけだと思うんだ。彼らのためになるような情報発信を心がけているね。
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「Clarity Vx」「Curvesシリーズ」など、昨今クリエイターに「サウンドを提案」することに力を入れているように思います。今後も提案型のプラグインを開発していくのでしょうか?
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「Clarity Vx」「Curvesシリーズ」はWAVESのAIプラグイン開発の最初の一歩なんだ。ベッドルームでのMIXからプロのスタジオMIXまで、幅広いシーンをマネジメントできるようなプラグインを開発していく予定だ。
WAVES / Clarity Vx
WAVES / Curves AQ
WAVES / Curves Equator -
「Clarity Vx」「Curvesシリーズ」などワンボタン、ワンノブ系のユーザーインターフェイスの商品が増えていっているように思います。こちらは新規ユーザーを意識した開発なのでしょうか。従来のモデリングプロセッサーのような、沢山のツマミを操作してサウンドメイクするユーザーインターフェイスの商品は減っていくのでしょうか?
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まさに最近はシンプルな操作の製品をリリースしているけど、すべてがその方向(ワンボタン、ワンノブ)に向かうとは考えていない。WAVESは35周年を迎えようとしていて、3~4世代のユーザーに届く商品を考えていかなくちゃいけないんだ。時間をかけて音作りをしたいユーザー、すぐに結果を求めるユーザー、分布は様々だと思うけどすべてカバーしていきたいと考えているよ。
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「Studio Verse」について質問させてください。プリセットが共有されることによって、新しいアイデアや新しいサウンドの流行は生まれると思いますか?
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10年前から「Studio Rack」というプラグインでユーザーへプラグインチェインのプリセット配布は行ってきた。個人間のような小さなコミュニティからプロのエンジニアの公開コミュニティまでカバーして、詳細なレシピまで共有できる「Studio Verse」は新しいサウンドを見つけるきっかけになると思っているね。
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「Studio Verse」を運用するにあたって世界中のユーザーからフィードバックがあると思います。フィードバックが開発に活用された例や、今後の進展についてお聞かせいただけますでしょうか?
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フィードバックの中で直接開発につながったのはVST3のサポートについてだった。WAVES製品を買わなくとも「Studio Verse」であらゆるブランドのVST3プラグインを起動可能になるようアップデートしたのはユーザーのフィードバックがあったからだね。「Studio Verse」はユーザーからの意見を参考にしながら、AIによるプラグインチェインの提案機能などを追加していき、これからも進化し続けていく予定だ。
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「Studio Verse」によってプリセットが共有されることによって、アナログハードウェアのモデリングプラグインの価値は高まると思いますか?
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そうだね。若い世代はSSLコンソールなどを実際に見て、触れて、聴いてといった体験する機会がないと思うんだ。「Studio Verse」を通してWAVESに協力してくれているエンジニア(Chris Lord-Alge、Jack Joseph Puig、Eddie Kramer)たちのプリセットチェインが共有されることで、「実機が好きだから」という動機ではなく「実際試してみて、その音が好きだったから」という理由でモデリングプラグインが選ばれているように思う。若いEDMアーティストたちがモデリングプラグインをプリセットチェインに入れていることからも、「Studio Verse」が古い機材の良さを伝える橋渡しとして役立っていることは間違いないね。
⇒ WAVES Signatureシリーズ 一覧 -
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WAVESの考える「最高のサウンド」とは、WAVESの未来はどのようなものになるのか、答えられる範囲でいいので教えてください。
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「最高のサウンド」か…まだ辿り着けていないね…。日々どうすればよくなるのかを常に考えているよ。WAVESのこれからの開発は、ポッドキャストや電話(オンライン通話)をはじめ、ユーザーのフィードバックとAIを活用してメリットのある製品を提供していきたいと考えているよ。
今後もWAVESの進化に目が離せませんね!!