以前にもブログで取り上げた「ローズウッドの代替材問題」。
2017年1月よりすべてのローズウッド種がワシントン条約(CITES)による規制の対象となり、各メーカーがローズウッドに変わる木材を模索している状況はギタリスト、ベーシストであればなんとなく感じ取っていたのではないかと思います。
そんな中、去る8月スイス・ジュネーブで行われた第18回締約国会議の中で、附属書IIに掲載されるローズウッド種は、楽器等の規制対象から除外されることが決定されました。
これにより、もともと附属書Iに載っていたハカランダ(ブラジリアン・ローズウッド)を除くローズウッド種は、少なくとも楽器として輸出される場合は規制の対象とならないことになります。
とはいえ、ローズウッドが貴重な木材であり、環境保全の観点からみてもローズウッド以外の材を模索することが重要であることには変わりありません。
そこで今回は、今後ローズウッドと共に並び立つ存在になることを期待したい木材をいくつかご紹介します!
パープルハート(Purpleheart)
前回のブログの最後でも紹介した、筆者が個人的に好きな木材です。別名バイオレットウッドとも呼ばれ、その名のとおり薄い紫色をしているのが特徴。切り出してから時間が経つほど紫色が濃い褐色へと変化する特徴をもち、木材が「育つ」のも楽しむことができる材です。ローズウッドと同じマメ科の木でありとても硬質。ESPやIbanezの製品で指板材として時折使われています。
IBANEZ (アイバニーズ) / SRAS7-RSG
ローステッドメイプル(Roasted Maple)
メイプルを無酸素状態で加熱し乾燥させるプロセスを経た材を、一般的にローステッドメイプルと呼びます(メーカーによって様々な呼び方あり)。加熱プロセスによる乾燥を経たメイプルは、従来のメイプル材よりも外からの湿度や気温の影響を受けにくく、反りやねじれに強くなると言われています。全体に褐色がかり、杢がはっきりと出る見た目も魅力的。MUSIC MANやSuhr、IbanezのAZシリーズなどで用いられています。
SUHR (サー) / Mateus Asato Signature Series Classic S Black
IBANEZ (アイバニーズ) / SLM10-TRM
リッチライト(Richlite)
こちらは木材ではなく、再生紙をフェノール樹脂で固め着色した、いわば人工材です。見た目は黒々としてエボニーに近く、硬度もかなりあります。また木材に比べて乾燥に強く、オイルなどによるメンテナンスが不要なのも特徴です。前回のブログで取り上げたとおり、真っ黒なエボニーは年々採れる数が減っている状況。杢の入らない真っ黒な見た目を好むギタリストには歓迎される材なのではないでしょうか。MARTINやGodinなどのメーカーで採用されています。
GODIN GUITAR (ゴダンギター) / Multiac Nylon Duet Ambiance
MARTIN (マーチン) / DX1AE
というわけで、今後ローズウッドと並び立つ素材になってほしいという願いも込め、3種類の素材を紹介しました。
メイプルに手を加えたローステッドメイプルや、人工材リッチライトなどは人の手によって、木材の供給問題を乗り越えようとしている好例と言えるのではないでしょうか。
現在、世界中のメーカーが人工材を開発して、製品へ採用しており、見た目・触り心地ともに本物の木と遜色ないものも数多く存在します。食わず嫌いをするのではなく、これからどんな材が登場するのだろうと楽しみにしておくほうが、今後のギター人生を豊かにするのではないでしょうか。