この季節はこれ!クリスマスソングPart2
日本のイベントには西洋由来のものが多くあります。バレンタイン・デー、ホワイト・デー、ハロウィン…。 先日まではデパート、ショッピングセンターなどはハロウィン一色でした。国内のハロウィンイベントは昨年来の盛り上がりはなく、雨という天候も重なり、今ひとつ不調に幕を閉じました。そのハロウィンが終わったら、次に来るのは西洋由来では一番のビッグイベント、クリスマスです。
街に流れるクリスマスソングの寿命は意外と短く、12月が始まってからクリスマス当日までは24日という期間しかありません。お客さんをその気にさせる集客戦略としては、11月の中旬を過ぎればクリスマスソングが街に流れ出します。そんな季節がやってきてしまいました。
少し前まではTシャツ1枚で過ごせたのが、セーターを着て、マフラーを巻き、ダウンジャケット…と、季節感が希薄になった日本では、クリスマスソングは季節を認識するための、大切なアイテムになっている感じがします。 クリスマスソングは我々が幼少の頃から聞き続けている、いわばスタンダードソング。頭に刻み込まれたスタンダードがどう形を変えるのかをテーマに、超想定内の普遍的アレンジの名盤と「えっ!こうなるの⁈」と思う想定外アレンジのクリスマスソングを取り上げます。乞うご期待!
■ 推薦アルバム:エラ・フィッツジェラルド『Ella wishes you A Swinging Christmas Deluxe edition』(1960 年)

ヴァーヴ・レコードの中で最も成功したといわれるクリスマスアルバムの大傑作! 1960年にリリースされた名盤『Ella Wishes You A Swinging Christmas』のロングバージョン。 リリースから65年!も経過しているのにもかかわらず、輝きを失っていないことに驚愕するばかりだ。 数多のクリスマスアルバムがリリースされているが、これほどの普遍性を持ち合わせたのは、エラ・フィッツジェラルドの歌唱によるところが大きいのは言うまでもないが、クリスマスソングとジャズを融合させ、そこにエラの歌がのっかったのが大きな要因ではないか。演奏とアレンジの巧みさにも目を見張るものがある。 アレンジャーは1940〜50年代にかけてロスアンゼルスを中心に活躍したフランク・デ・ボル。フランク・デ・ボルはナット・キング・コールやペリー・コモ、エラ・フィッツジェラルドなど、多くの歌手の音楽を手掛け、スイングジャズをベースにしたアレンジを得意としていた。 このアルバムでもスイングジャズ・オーケストレーションの仕立てが奏功し、アルバムの屋台骨を支えている。特筆すべきは、そこから親しみやすいクリスマスソングのポップ性を引き出していることだ。 エラ・フィッツジェラルドの歌が中心になっているのはもちろんだが、歌唱の途中にさりげなく挟まれる各楽器のソロも洒落ている。その根底に流れているのはジャズのスピリットだ。
推薦曲:「ジングルベル」
クリスマスといえばこれでしょう!という楽曲。倍速?と勘違いするほどの高速テンポでアルバムの幕が開く。ドラムとウッドベースと高音部でのアコースティックピアノのコードバッキング。あのクリスマスベルの役割を担っているのがアコピだ。 そこにエラ・フィッツジェラルドのスイングしまくるボーカルが入ると一気にクリスマス一色の世界になる。 アンサンブルはフランク・デ・ボルと彼のオーケストラ。歌を邪魔しない最小限のアンサンブル。オケといえばトランペットなどの管楽器のバッキングが考えられるが、そこをコーラス隊が担うという洒落たアレンジ。さらにジングルベル~♪のコーラス…これぞクリスマス!後半ではメロディをフェイクし、スイングするエラの歌唱とオケが一体化するあたりがたまらない。
推薦曲:「赤い鼻のトナカイ」
とぼけた感じのオケのバッキング。そこに絡む4ビートに乗ったエラのお馴染みの歌唱。大サビ前での短いアコースティックピアノソロが洒落ている。そのソロにエラのボーカルが絡み、後半部でボーカルとアコピがユニゾンになるというアレンジの妙も聴きどころだ。
推薦曲:「フロスティ・ザ・スノウマン」
この楽曲はコーラスとベルのイントロから、という変則的アレンジ。この辺りはアレンジャー、フランク・デ・ボルの真骨頂だ。それを受けエラのボーカルがスタート。 コーラスとエラのボーカルがコール&レスポンス的に展開する。コーラス隊が管楽器のパートも担うというアレンジャー、フランク・デ・ボルの世界が展開する。
推薦曲:「フロスティ・ザ・スノウマン(別テイク)」
アルバムにはクリスマスソングの別テイクも含まれている。エラ・フィッツジェラルドのボーカルはオリジナルとは別テイク。低音部分がカットされ、子供の歌唱のように高音部が強調されている。 こういったボーナストラック的仕掛けなど、様々なことがトライされていたという制作者側の発露も感じることができる。
■ 推薦アルバム:ヴァリアス・アーティスト『A GRP CHRISTMAS COLLECTION』(1991年)

当時、ジャズ、フュージョンというカテゴリーで最も支持を得ていたGRPレーベルが満を持してリリースした1991年のヴァリアス・アーティストによるクリスマスアルバム。 集められたメンバーはデビッド・ベノア、トム・スコット、チック・コリア、ダイアン・シューア、デイブ・バレンティン、ゲイリー・バートン、スペシャルEFX、リー・リトナーといった才気溢れるミュージシャン達。 彼らからアウトプットされるクリスマスソングを聴くと、クリスマスソングは単なる素材にすぎないということがよく分かる。そういう意味では、スタンダード化していたクリスマスソングに全く別な方向から光をあて再構築したアルバムといえる。しかし、そこにクリスマスというテーマが息づいているのは、関わったプロデューサーやミュージシャン自身の矜持によるものなのだろう。
推薦曲:「Santaclaus coming to town / デイブ・バレンティン」
ビル・オコーネルのアコースティックピアノのイントロに導かれ、デイブ・バレンティンのフルートが『Santaclaus is coming to town』のおなじみのメロディを奏でる。ここまでは普通のクリスマスソングだ。 2コーラス目のサビからアコピがサルサのモントゥーノ的バッキングに変化する。気付くとアンサンブルがサルサになっている。更に3コーラス目サビの頭でブレイクしてアコピ一発のモントゥーノ。サルサ一色になる。そこでデイブ・バレンティンのアドリブに突入するという、神をも恐れぬアレンジ。 クリスマス→雪?などという先入観は見事に覆される。その潔さが素敵だ。こんなクリスマスソングがあっていい!と思わず納得してしまう。考えてみれば南半球は夏なのだから、サルサ・クリスマスというのもありなのだと思う。 バンドアンサンブルとフルートの勢いがとまらないクリスマスソング。アレンジの背景にあるのはサルサ、モントゥーノ、クラーベといった南米音楽のノウハウだ。
今回取り上げたミュージシャン、アルバム、推薦曲
- アーティスト:フランク・デ・ボル、デイブ・バレンティン、ビル・オコーネル など
- アルバム:『Ella wishes you A Swinging Christmas Deluxe edition』『A GRP CHRISTMAS COLLECTION』
- 推薦曲:「ジングルベル」「赤い鼻のトナカイ」「フロスティ・ザ・スノウマン」「フロスティ・ザ・スノウマン(別テイク)」「Santaclaus is coming to town」
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