
金属製の音板をマレットという棒で叩いて音を鳴らす鉄琴の一種である打楽器、ヴィブラフォン。そのメタリックなルックスとは裏腹に、温かみのあるクリスタルな響きが魅力的な楽器です。鉄琴といいますと、吹奏楽やオーケストラで使用されているイメージですが、実はソウル・ミュージックやレゲエなどの人気曲でも大活躍している楽器でもあります。
このブログでは、そんなヴィブラフォンの登場するソウル・ミュージック、名付けて「鉄琴ソウル」を紹介しながら、素晴らしい音色に思いを馳せていきたいと思います。

今回は記念すべき第1回目として、イギリスにおけるノーザン・ソウル・シーンで人気を博した名曲。マレットを用いてヴィブラフォン同様の感覚で演奏ができるMIDIコントローラー、PEARL / EM-1 malletSTATIONを合わせて紹介します。

さてノーザン・ソウルという音楽ですが、このブログでは、1960年代後半頃イギリス北部で始まったユース・カルチャーにおけるクラブ・シーンのダンス・ナンバーを指します。1960年代のソウル・ミュージックの中から、キャッチーでスイートなメロディーを激しいドラムビートにのせて歌うクールな曲を選んで盛り上げるDJたち。それも白人シンガーの曲も含んだニッチでアンダーグラウンドな選曲。そして甘いメロディーとは対象的に、激しい動きで踊り狂う若者たち。最近日本でも公開された映画「ノーザン・ソウル」でその文化の一面に触れることができます。
それではヴィブラフォンの音色が心躍る、ノーザン・ソウル・シーンが愛する珠玉の名曲たちを筆者の独断と、その時の気分によるセレクションで紹介します。用意のある曲については、すぐに聴けるよう動画を貼りましたので、皆様がノーザン・ソウルを演奏したり、踊ったりするきっかけとなれば幸いです。
■The Olympics / Baby Do the Philly Dog

まずヴィブラフォンという楽器が、メロディーを奏でる打楽器であるということが伝わる曲と言えば、西海岸R&Bコーラス・グループが後期にリリースしたこのシングル。
イントロのヴィブラフォンによるリズミカルなメロディーに引き込まれるようにブラスセクションとボーカルがシャウトする、ド迫力のキラーナンバー。後にアメリカのロックバンドNRBQにもカバーされている程、幅広い層に人気の定番ナンバーです。
■Mary Love / Lay This Burden Down

様々なノーザン・ソウル・コンピレーションに収録された最強のガールズ・ソウル。4つ打ちビートのドラムに血が騒ぐモータウン・スタイルながら、クールな歌い出しをヴィブラフォンで彩り、サビでの華やかなブラスセクションに良いアクセントを添えています。ノーザン云々だけでなくもっと注目されてほしい名曲です。
■Harvey Averne Dozen / Think It Over

こちらはソウル界ではなく、ラテン界のプロデューサー/アレンジャーとして活躍することになる、ハーヴェイ・アヴァーンのデビュー・アルバム「Viva Soul」(1967年)からのシングル曲。イントロでスネアとともに弾けるアクロバティックなヴィブラフォンの音色は、そのままAメロ~サビに至るまで、甘い歌声を一層磨き上げていきます。ほんのりトロピカルなブラスも加わっていく、都会のオアシスといった趣の60'sアーバン・ソウルの名曲です。吹奏楽の演奏会でもプレイしていただきたいです。
■Paul Anka / I can't Help Loving You

ロック、ポップス・ファンの間では、オールディーズ・スターとしておなじみのエンターテイナー、ポール・アンカ。しかし1966年にリリースされたこのニッチなナンバーは、ノーザン・ソウル界隈ではメガ・キラーなダンスチューンとして、DJ垂涎の激レアシングルとなった1曲です。最強のメロディーと甘い歌声、跳ねるようなブラスとドラミングを、さらに豊かに彩るようなヴィブラフォン・グルーヴ。
EM-1 malletSTATIONのクールなルックスとのリンクナンバーと言ってもいいでしょう。叩いていて実に楽しい極上のフロアキラーナンバー。超オススメです!今回オフィシャル動画を見つけることはできませんでしたが、動画サイトではたくさんアップされていますし、「Essential Rca Recordings」(写真)などのCDで聴くことができます。ノーザン・ソウルファンのみならずプレイしてみたい曲です。
■Frankie Valli / You're Ready Now

1960年代前半には、フォー・シーズンズのボーカリストとして多くのヒット曲を放ち、ソロになってからもホワイト・ソウルフルなスイートなダンス・ナンバー「君の瞳に恋してる」の大ヒット曲を持つフランキー・ヴァリ。
この曲「You're Ready Now」は、66年録音ながら、イギリスでは1970年になってノーザン・ソウルの必殺ナンバーとしてヒットしたナンバー。女性コーラスを追いかけるように、甘く響くヴィブラフォンのイントロが印象的です。激しくノーザン・ダンサーを躍らせる曲としてはこちらの曲に軍配があがると思います。
PEARL(パール) / EM-1 malletSTATION
演奏したい曲はたくさんあるけど、ヴィブラフォンを購入するのはハードルが高い・・・。そんな方には、マレットを用いて演奏ができるMIDIコントローラー、PEARLのmalletSTATIONがおすすめです。
演奏情報(MIDIデータ)をMac、PC、iOS、Androidデバイスなどにインストールされた外部音源と送受信することにより、演奏することができます。つまり、本体に音源は内蔵されておらず、接続先のデバイスに内蔵されている音源を鳴らす仕組みです。そのため、あらかじめ鳴らしたい音源を用意しておくことによって、ヴィブラフォンのみならず、その他の鍵盤打楽器やドラム、シンセサウンドなども自由に演奏できます。
お好みの推奨ソフトウェアをダウンロードした、パソコンやiPhoneに接続すれば、屋内、屋外を問わず、マリンバやヴィブラフォンと同じ感覚で演奏が可能。またMIDI を受信できるアプリなら、どれでも malletSTATION と一緒に使えます。 持ち運んで演奏ができるので、ヴィブラフォンが置けないようなコンパクトなステージでのライブ演奏でも大活躍します。

PEARLのmalletSTATIONを使用することによって、様々な場所で気軽に楽しくヴィブラフォン・サウンドを堪能することができます。
第一回目としてイギリスのノーザン・ソウルをご紹介しました、この「鉄琴ソウル」のブログ。もっと弾きたい方のために、次回はヴィブラフォンがまったりと響き渡るレゲエのシングル曲をいくつかご紹介いたします。
それではまた、ブログにてお会いしましょう。
Special Thanks to frathop records.
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