音楽を始めたいけれど「どんな楽器を選べばいいのか分からない」「ベースって気になるけど難しそう…」と迷っている方はいませんか?
このコラムでは、そんな初心者の方に向けて エレキベースの基本から練習法、機材の知識までを10回に分けて連載形式で紹介 していきます。
第1回となる今回は、「エレキベースという楽器の魅力と役割」について解説します。ベースがバンドでどんな存在なのか、なぜ音楽に欠かせないのかを知ることで、これからの練習や楽器選びがよりワクワクするはずです。
1. エレキベースという楽器の魅力と役割
エレキベースは、バンドやアンサンブルにおいて欠かすことのできない存在です。ギターやドラムほど華やかなソロを演奏する機会は少ないかもしれませんが、その音は楽曲全体を下から支え、聴く人の体を揺らす「土台」として機能します。初心者の方にとっては「地味そう」「難しそう」と思われがちなベースですが、知れば知るほど奥深く、バンドサウンドにおける重要性を強く感じられる楽器です。ここでは、そんなエレキベースの魅力と役割についてじっくり解説していきます。

2. バンドの屋台骨となる存在
エレキベースが持つ最大の役割は、バンドサウンドの土台を作ることです。具体的には、以下のような機能を担っています。
- ● リズムの支え
- ベースはドラムと連携し、楽曲のリズムを安定させます。特にバスドラム(キック)とベースの低音が合わさることで、聴いている人の体を自然と揺らすグルーヴが生まれます。
- ● 和音の基礎づくり
- バンドではギターやキーボードがコード(和音)を奏でますが、ベースが「ルート音」を鳴らすことで、どのコードが鳴っているのかをはっきりと提示できます。
※ルート音とは・・・コード(和音)の一番土台となる音でコード名で表示される一番低い音
ここで、一つサンプル音源を用意しました。
前半と後半で違った印象に聞こえたかと思います。実は前半も後半もピアノは全く同じ音を弾いていてベースだけ違う音を弾いています。ベースがあるからこそ楽曲に「調和」と「方向性」が生まれるのです。
- ● 楽曲の展開をコントロールする
- ベースはリズムを細かく刻んだり、逆に音数を減らしたりすることで、楽曲の雰囲気を一気に変えることができます。バラードでの伸びやかなベースや、ファンクでの跳ねるようなベースなど、そのニュアンスが曲全体の印象を決めることも少なくありません。
3. 低音の魅力と体感的なサウンド
ギターやピアノの高音は耳で聴いて楽しむことが多いですが、ベースの低音は身体で感じる音です。ライブ会場で大きなスピーカーから鳴るベースの音を浴びると、胸の奥まで振動が響いてきます。この「体感できるサウンド」はベースならではの魅力であり、演奏している側も観客を揺らす感覚をダイレクトに味わうことができます。
また、低音は音楽全体の厚みを作ります。もしバンドからベースが消えてしまったら、音楽はスカスカになり、迫力が大きく失われてしまうでしょう。こうした「目立たないけれど欠かせない存在感」が、ベースの独特な魅力のひとつです。
実際に筆者オリジナルの楽曲を使って聴いてみましょう。
Ex-2aはベースが入った音源、Ex-2bはベース無しの音源です。
■ Ex-2a
■ Ex-2b
どうでしょうか?こうして聴いてみるとベースの重要さが分かっていただけるかと思います。
4. 華やかさと渋さの両立
ベースは地味と思われがちですが、実は非常に自由度の高い楽器でもあります。
例えば、ポップスやロックでは堅実にバンドを支える役割が多い一方で、ジャズやフュージョンではベースがメロディを奏でたり、ソロを取る場面も多く見られます。スラップ奏法のように派手なプレイスタイルも存在し、プレイヤーの個性が強く反映される楽器だといえるでしょう。
有名なベーシストを例に挙げると、ポール・マッカートニー(The Beatles)は歌心のあるメロディックなベースラインで知られ、ジャコ・パストリアスはフレットレスベースを駆使してまるで歌うような演奏を確立しました。さらに、レッド・ホット・チリ・ペッパーズのフリーのようにアグレッシブなスラップを披露するベーシストもいます。こうした多彩なスタイルは、ベースという楽器が持つ懐の深さを物語っています。
5. 初心者にとっての魅力
初心者にとってベースの魅力はどこにあるのでしょうか?
大きく分けて、以下のポイントが挙げられます。
- ● シンプルなフレーズから始められる
- ベースは1音でも楽曲に貢献できます。まずはルート音を弾くだけでもバンドサウンドを支えられるので、演奏の達成感を早く味わいやすいのです。
- ● アンサンブルの中心になれる
- ベースが安定していれば、他のメンバーも安心して演奏できます。逆にベースが崩れるとバンド全体が不安定になるほど影響力が大きく、「縁の下の力持ち」としてのやりがいがあります。
- ● プレイヤーの個性が出やすい
- 同じ曲でも、弾く人によってベースラインのニュアンスはまったく変わります。シンプルでありながら、演奏者のフィーリングやリズム感がダイレクトに現れる楽器です。
6. ベースを学ぶことで得られる音楽的な力
ベースを始めると、単に演奏ができるようになるだけでなく、音楽的な理解も深まっていきます。例えば…
- ● リズム感の向上
- 常にドラムと合わせて演奏するため、拍(リズム)を正確に感じる力が養われます。
- ● コード進行の理解
- ルート音を弾くことで、自然とコードの流れを理解できるようになります。
- ● 耳の鍛錬
- 低音域は聴き取りにくいため、耳を鍛える練習にもつながります。
これらのスキルは、ベースだけでなく他の楽器を演奏するときにも役立ちます。音楽全体を「支える側の視点」で見ることができるようになるのは、ベーシストならではの強みです。
7. まとめ
エレキベースは、派手に目立つことは少なくても、音楽に欠かせない「屋台骨」を担う存在です。その低音は聴く人の体を揺らし、ドラムとともにリズムの基盤を作り、コードの進行を明確に示します。華やかさと渋さを併せ持ち、初心者でもシンプルなフレーズから演奏を楽しめるのも魅力です。
これからベースを始める方にとって、最初は「目立たないかも?」と思うかもしれません。しかし実際に弾き始めると、他の楽器では味わえない「支える楽しさ」「体で感じる低音の力強さ」に夢中になるでしょう。シリーズの第1回ではベースの魅力と役割を紹介しましたが、次回からは具体的にベースの種類や機材について掘り下げていきます。
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