こんにちは。こちらに投稿させていただいておりますYoshitakaです。
アコギ沼に入って、数年間に渡って放浪しました。ただマーチン、ギブソン、テイラー等のUSAメジャーに手を出す財力はなく、また高級楽器買った後のメンテナンスや傷付くことを恐れて、結果的に弾かなくなるのも悲しいので、現在カーボンアコギがメインになっています。
日本では人気が今一つと言われるカーボンアコギですが、代表格である Rain Song と Composite Acousticsこの2ブランドの楽器弾き比べ記事を書いてみます。カーボンアコギではUSA製のこの二つが有名なのですが、弾き比べた記事がほとんどなく、そもそも両ブランドともハンドメイド系ゆえにあまり国内流通しておりません。そんな中二つのメーカーを買う人もほとんどいないという点でひょっとしたら貴重なレビューかもしれません。マイナー楽器ゆえ興味持って読まれる方も少ないかもしれまんが、1カーボンギター愛好家としての主観レビューお付き合いいただけたらありがたいです。
1、カーボンアコースティックギター概要
木材以外の素材でアコースティックギターを作り始めたのはおそらくですが、Ovation だと思います。
ポールサイモン等にも愛されたOvation Adamas はトップ板にグラスファイバーと木材の複合素材を使っていたようです。その後グラファイト、カーボンファイバーといった新素材が登場する中、Rain Song そしてComposite Acoustics が誕生しました。これらのギターに共通する点は以下のような点かと思います。
- 頑丈/メンテナンスフリー
ネック反り、トップ落ち・膨らみ、ブリッジ浮きなどの木材で起こりうるトラブルからの開放。
その結果メンテナンスはフレット交換とピックアップ/プリアンプを中心とした電気系程度。 - 高精度/安定したサウンド
強靭な材料に裏打ちされたデッドスポットも無いほどの高い精度。
高温多湿下でも低温乾燥下でも安定した変わりないサウンド。
2、Rain Song H-WS1000N2 レビュー
Rain Song は継続的に素材開発に取り組んでいるブランドです。現在はトップ板がスプルースとカーボンの合成素材となるシリーズを展開し、さらにアコースティック感を高めているようですが、私が使っているものはカーボンとグラファイトの混合材であるハイブリットシリーズといわれているシリーズです(2021.10現在生産完了)。ボディはネック側がマーチンでいうOM系、ブリッジ側がD系に近いサイズでクビレが深いいわゆるセミジャンボ的なサイズです。ピックアップは後述のComposite Acoustics GX と同じ ピエゾのFishman Prefix+T を搭載しています。
アコギスト界隈では、よく「頑丈なギターほど鳴りにくい」という話を聞きますが、このギターは フィンガーピッキングでも良く鳴ると感じます(ただハイエンドアコギを知らない人間の感想なのでもっとよく鳴るギターはもちろんあると思います。)。生音ではカーボン特有の倍音豊かな響きがして心地よく、 胴厚の効果もあってか、深みのある音色を奏でてくれます。ラインアウトのサウンドはピエゾそのもので、 カーボンの響きも加わって、広がりのあるエレアコサウンドになります。生音っぽくはないですが、私的には好みですので、改造せず使い続けるつもりです。
ただこのピックアップのセッティングには注意が必要で、特にストロークの場合、マニュアルで記載されているようにミドルを削らないとスッキリした感じになりません。これは後述のComposite Acousticsも同様なので、ピックアップの性格によるものであろうと思います。
演奏性でいいますと、ナット幅は44.5mmと比較的幅がある反面、ネックが薄い点が特徴です。私にはとても弾きやすく、特にボサノバ演奏の際、テンションコードが押さえやすいメリットがあります。
弦高は6弦12F で2.7mm、1弦 2mmだったと購入時記憶していますが、メーカー的にベストと思うところで出荷していると思います。ネックの薄さもあって弾きやすくかつ全体重量も大きさからすると軽いです。
作りに関しても述べておきます。外見はカーボンとグラファイトのグロス仕上げ、現代的で美しいです。ただボディ内部、特にボディくびれ部分はグラファイトをつなぎ合わせて貼り付けたような手作り感満載で洗練された外見のイメージからは少し離れていて、人によっては、「えっ?」と思うかもしれません。

Rain Song H-WS1000N2 (出荷時期によってはサウンドホールリングの模様が異なるようです)
3、Composite Acoustics GX レビュー
Composite Acoustics は現在Peavey 社のブランドになっていて、近年のモデルには同じくPeavey系のTRACEELLIOTピックアップが搭載されています。私が手に入れたのは中古ですので、Fishmanピックアップでしたが、家の大掃除兼ねた断捨離で手放してしまいました。しばらく経ってかなり後悔した後、数か月後に前述のRain Song(新品同様の中古)を手に入れた次第です。
Composite Acoustics GXは近未来的なデザインのギターです。正面からはその雰囲気が感じとれませんが背面、特にネックヒール部分は、ネックとボディが完全一体成型でデザインされているため、なだらかな曲線でスルーネック的に繋がっており、ハイポジションの演奏性はすこぶる高く、Hand Craftedですが精度の高い工業生産品のような仕上がりです。
GXのサイズは上記Rain Song WSのライバルのようなセミジャンボ系ですが、若干GXがコンパクトで浅胴となっています。私の持っていたGXはさらにマイナーなナット幅43mmのナローネック仕様でしたが、ネック幅が扇型に広くなっていくため窮屈感はそれほどありませんでした。弦高は6弦12Fで2.5mm 1弦2mmで弾きやすい状態でした(ネックは反らない前提なのでトラスロッド非搭載、多分これがメーカー出荷状態であろうと思います)。
サウンド面では、フィンガーピッキングというより、どちらかというとピックでしっかり弾く方が向いていると感じます。特に生音のフィンガーピッキングでは前述のRain Songの方が鳴る印象です。ただピック弾きのソロでは粒立ちが良くコシがあるように感じました。
ラインアウトサウンドは前述のRain Song同様にカーボンかつ同じFishman Prefix+Tピックアップということもあってエレアコ的な厚みのあるものです。(最新のTRACEELLIOTピックアップはかなり優秀という話なのでさらにアコースティック感があるのかもしれません)。先程述べたようにこのサウンドは好みが分かれるかもしれませんが、以前私がグランドピアノの方とこのギターでリモートコラボした際、音色が被らないのでバランスが良かったというコメントをいただきました。アコギ生音だと私の音源制作能力ではひょっとしたらグランドピアノのダイナミックレンジに埋もれていたかもしれません。

Composite Acoustics GX Narrow Wine Red (Fishman PICKUPモデル)
4、最後に
そもそも新品でさえ、日本に入荷が少ないカーボンアコギ。ネットで見ることが少ないです。ただ、手放さなければメンテナススフリーで一生モノに近い(電気系は要チェックですが)。使う分にも気兼ねない良い機材です。新品はかなり高価な楽器ですが、(購入してみたものの、従来のアコギとの違いで馴染めない方がいるためか)、かなり程度の良い美品中古がたまに出るので、その時はひょっとしたら狙い目かもしれません。カーボンギターは中古であっても製品のバラツキが少ないので、フレット残や傷の程度、電気系統状況がわかれば判断つきやすいです。
またどんな状況下でも安定した状態を保っている機材があるというのはかなり心強いです(プロでもないのに偉そうですが)。
なお、最近ではENYA社、LAVA社などの新興メーカーが最新テクノロジー満載のカーボンアコギをリリースしています。これらは従来のデザインにとらわれないのみならず、エフェクター内蔵、比較的お求めやすい価格で市場を席巻しています。カーボンギターに興味がある方は要チェックだと思います。
こちらにカーボンミニギター LAVA ME2 FB の記事を書いています。ご参考まで。
関連記事『【アコギ】カーボンミニギターを使ってみた』
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