ここから本文です

時が染みるラジカセ / Time rings from radio cassette

2020-12-11

Theme:sound&person

少し趣味方面へ振った、あまり役には立たないけれど、少し面白い小話をしようかなと思います。
その主役はラジカセです。

もはやとっくに音楽再生の主役を明け渡し、かろうじて家電量販店の隅で生き残っているラジカセ。僕は、Nationalの多分80年代中期頃のものと思われるラジカセを一台所有しています。たしか、ヤフオクで3000円強で落札しました。なぜラジカセなんて買おうかと思ったのかというと、普段座っているソファーの横に、小さいギターアンプと英語の教材CDを聞く小さいスピーカーが欲しいなと思ったのがきっかけです。CDプレイヤーは御誂え向きのものがあったので、そのアウトをLine Inに差し込める小型スピーカーがベストと思いました。しかし、ちょうど良いのが見つからず、ふと昔倉庫を片付けている時に出てきたラジカセが思いの外いい音がしたなぁ、と思い出しました。たしか、ラジカセにはLine Inの端子があったはず。それでヤフオクで価格を調べると、そこそこの値段でとりあえず動きそうなものが安く買えそうなので買ってみました。届いて梱包を開けてみると、昔は無骨でもっさりしてるなぁ、と思っていたルックスも、今では一周回って少しオシャレ感が漂います。

当初に比べると、格段に大きなスピーカーになってしまったけれど、アンプの上で収まりもよく、狙い通りにちょうどいい感じでCDも再生出来たので満足です。その時、自前で聞けるカセットテープを持っていなかったので、せっかくだからヤフオクで適当なカセットテープ音源を買ってみました。たしか、Tom petty and Heart BreakersのDamn the Torpedoesでした。ちょうど聴いた事もなかったので気軽に聴いてみました。
聴いてみると、スタジオのシビアなサウンドとは別物ですが、やはりアナログらしい耳触りのよい音がします。ラジカセの音ならではの特徴ですが、スピーカーの口径が小さいので低音はあまり出ません。90年代以降の機種では、物足りないベースをブーストしてるいかついシリーズもありますが、リッチなベースが必要ならカセットデッキを買って普通にスピーカーから出した方がいいかな、とは思います。いかついラジカセからドスドスHiphopを響かせるというのはそれはそれで面白そうですね。逆に、高音の方はどうかというと、デジタルのようなクリアな高音はないものの、意外としっかりあります。Tone調整のスライダーがついていて、高音を削る事も出来ます。これは主に、テープのヒスノイズはきつい際に調整するものです。

久しぶりにラジカセの音を聴いているとノスタルジーも合間って、とても染み入るものを感じます。小学校の高学年になると音楽に興味をもっていたので、父に安いコンポを買ってもらいました。それまではラジカセだったので、なんだか懐かしい気もします。デジタルはたしかにクリアで便利なのですが、こういった安らぎはありません。試しにスマホからアマゾンミュージックの音源をラジカセを通して再生してみましたが、いつも聴いている音と大きな違いは感じられませんでした。CDの音楽も聴きましたが、やはりカセットテープとはすこし違います。中域の解像度と高域の減衰の滑らかさは、アナログレコードや、Tube Techのマイクプリを使った時の傾向によく似ています。
音楽のリスニングにおいて、なんでもかんでもリッチな設備が向いているというわけではありません。気楽にリスナーとして聞きたいのなら、ラージスピーカーは向いていませんし、例えば喫茶店などの接客をともなう環境でのBGMも、良すぎるスタジオモニターは向いていません。微に入り細に入り音楽を聞くシチュエーションは限られています。実際は何となくかかっていたり、聴ければ嬉しいという用途が多いです。それには適度にこもっていたり、余計な帯域が出ないような、少しチープなものが向いていたりします。

音楽のソースも、今ではipodやサブスクリプションの配信などを繋いで、そのまま垂れ流すのが主流かと思いますが、実はmp3、配信は中域がなく、2kあたりからの音域がきつくなります。そのため、音楽を聴き取るにはプアーな環境でもちょうどいいのですが、やたらと耳につき、安らぎのある音という需要を満たすのは難しいです。それは大きな音にするほど粗が目立つようになり、EQで中域を膨らましたり、サチュレーションをかましてなんとかなるという類ではないようです。基本的に存在しない音域のものを無理やりEQしてもいい結果は得られにくいです。だから、レコーディングでは必要十分でリッチな音域を収録するように心がけています。個人的に、なんとなく音楽を聴きたいユースには、ラジカセとカセットテープはとても向いています。車のカーステレオがわりにも使っても風情があっていいのではないかと思います。
カセットも捨てたものではない、とは見直したのですが、時の摩耗に負けて廃れていった理由もわかります。カセットの再生デッキを含めて、構造上複雑なものが多すぎるのが一番の欠点かと思います。A面、B面があり、二つのハブが回転し一方の方へ巻き取って行く。磁気テープをヘッドがこすって読み取って、と動力部分や細かい部品が多く、そのため故障にも弱い。レコードが今でも音楽再生デバイスの端っこで地位を築いているのはその構造が単純で故障に強いというのも一因なのではないでしょうか。レコードの針は交換できても、カセットデッキのヘッドを交換するのは素人では無理そうです。
そのため、万人にはおすすめしませんが、ラジカセは意外にいいもんです。ながら作業のBGMにはうってつけです。 最後に、ラジカセで聴くとしみるカセット音源ベスト3を、3位から発表して締めたいと思います。

3位 America の America

A Horse With No Nameのヒット曲で知られるバンドです。特にアコースティックギターのサウンドとコーラスが美しく、日本ではそこまで知名度はありませんが、いい曲も多いですし、ぜひおすすめしたいバンドの一つです。シンプルなアコースティックギターのサウンドを追求するなら、確実に勉強すべきバンドだと思います。クロスビーなどの変則チューニングではない、美しいバッキングギターの最高峰といえます。個人的には2枚目のアルバムに収録されているVentura Highwayも好きなのですが、ぜひレコードか、せめてCDで聴いてみてください。昔のカーステレオから流れている音楽を聴きながら、ドライブしている気持ちにもなれます。

2位 荒井由実 ベスト

言わずと知れた松任谷由美のことですね。松任谷由実ではなく荒井由実と言っているところがポイントですね。たまたま買ったのがベストというだけではあるのですが、「ルージュの伝言」や「ひこうき雲」などの名曲がラジカセからノスタルジックに流れてくると胸がぐっときます。僕は荒井由実から松任谷由実まで好きな曲をあげると全て荒井由実に収まっちゃいます。なぜか昔から、松任谷由実時代の音楽はささらないんですよね。なぜかはわかりませんけど。昭和の名曲はラジカセにとても合います。アルバムは何でもいいのですが、特に「ルージュの伝言」あたりは、ドラムなどリズムセクションとラジカセの相性もよいので、ぜひラジカセで聴いてみて欲しい一曲です。 

1位 中島みゆき ベスト

普段あまり邦楽を聴かない僕にはあり得ない、日本人アーティストの1,2フィニッシュです。中島みゆきは、今でもアーティストとして新しい世代の人にも垣根なく聴かれ支持されています。それは、実に素晴らしい事なのですが、ぜひ若い世代にも中島みゆきをラジカセで聴いてもらいたいです。テープが伸びて少しピッチが悪くなっててもなんか味として聞けてしまう、ラジカセから時代が聞こえるようなアーティストが中島みゆきです。特に、夜飲めないお酒でも片手に「時代」なんかをかけた日にはなんか泣けてきます。CDやテレビ、MP3の音源でも聴いた事はありますが、ベストはラジカセですね。せまい不器用なレンジのスピーカーが、時の儚さを歌っているように鳴ってくれます。音楽はスペックや理屈の講釈じゃないんだなぁ、と改めて思わせてくれる貴重な体験を提供してくれました。感謝です。

あまり手元に使用できるラジカセを持っている人は少ないと思いますが、実は新品でも購入可能です。父が、昔のカセットが出てきたから聴きたいという事で、家電量販店に買いに行ったのですが、結構お手頃価格で購入できます。音は、やはり昔のラジカセの方が風情ありますね。今では修理してくれるところもネットで見つかるみたいなんで、手元に動かないラジカセがあれば修理してもいいかもしれませんね。買った方が安くなると思いますがw
ぜひ、その時はLEDライトの照明を消して白熱電球の灯にしてラジカセの音に浸ってみてください。きっとデジタルに浸りきった感性にカタルシスを感じる事ができると思います。

読んでくれてありがとう。
僕はこう思う。


コラム「sound&person」は、皆様からの投稿によって成り立っています。
投稿についての詳細はこちら

Taiyo Haze

ギタリスト、サウンドエンジニア(ミキサー、MA、PA)、コンポーザー、WEBデザイン(エンジニア)、詩人、ヘルシー志向、珈琲、喫茶店、読書家、野球好き。 人生のあらゆる時点で自分の興味と好奇心、その時環境が要求する知識、スキルに真摯に取り組んできました。 そして、何より幸運だったのがどの学びの時も、その分野の生き字引のようなメンターの元で経験と研鑽を積めたことです。 特に20代の頃は狂気のように深遠な体験と専心から何物にも揺るがぬ感性を身につける事が出来ました。 何にでも興味は持つけれど、同時に飽きっぽくもあります。3年以上続いてるのは、音楽、野球(今はプレーしてないです)、読書(特にSF)、WEBくらいでしょうか? だいたい3年超えると一生やり続ける気がします。
website https://kaosway.com/
twitter https://twitter.com/kaosway
instagram https://www.instagram.com/kaosway/

 
 
 

Categories

Calendar

2021/4

  • S
  • M
  • T
  • W
  • T
  • F
  • S
  • 1
  • 2
  • 3
  • 4
  • 5
  • 6
  • 7
  • 8
  • 9
  • 10
  • 11
  • 12
  • 13
  • 14
  • 15
  • 16
  • 17
  • 18
  • 19
  • 20
  • 21
  • 22
  • 23
  • 24
  • 25
  • 26
  • 27
  • 28
  • 29
  • 30
CLASSIC PRO / Alkaline Battery
ブランドから探す
FACEBOOKLINEYouTubeTwitterInstagram
SOUND HOUSE Official LINE

Page Top