パワードサブウーファー、18インチ、2000W(PEAK)、40.7kg、1本
最初に音の伝達の仕方は周波数により異なります。サブウーファーは200Hzより下の周波数しか再生せず、その低音は全方向に拡散します。音は観衆に対してだけでなく、サブウーファーの後ろにある(硬い材質で、固定されている)壁に向かっても拡散します。注目すべきはこの点です。
サブウーファーが後ろの壁との間にスペースを空けて設置され、その距離がある周波数の波長の1/4に等しいとき、壁から反射される音により、前方へ向かう同じ周波数の放射エネルギーをキャンセルする働きをします。
音の伝達速度(音速)は、音速C(海面レベル、21℃、標準大気圧)は344m/sです。
C(音速)= fλ(f:周波数、λ:波長)
この式から、ある周波数に対して1/4波長を計算することができます。例えば、ギターの一番低い音(6番弦E)は約83Hzです。この場合の1/4波長は1.0mとなります。
サブウーファーを壁から1.0m離して設置したとき、前方の周波数特性は83Hzで大きく下がるのを確認することができます。この現象を「低域における、くし形フィルターキャンセル」と呼びます。EQを使用してもこの現象は修正できません。このように壁に対するサブウーファーの配置が低域全般の音質に大きな影響を与えます。
QSC KSシリーズ・サブウーファーの仕様を見ながら数値で表してみましょう。KSシリーズはコンパクトなエンクロージャーにシングル12インチウーファーを搭載。41~108Hzの幅において広い周波数特性(-6dB)を持っています。サブウーファーが再生する低域の両端である40~110Hzの範囲を考えます。
1/4波長@40Hz=2.15m
1/4波長@110Hz=0.78m
実際のサブウーファーの低域周波数特性に基づいて、この2つの計算結果をガイドラインとします。
この低域周波数のキャンセルを避けるため、壁に対してできるだけサブウーファーを近づけるといいかもしれません。ところが、壁に近づけ過ぎると低音がブーストされるという問題があります。バランスを取るため、低域周波数特性の調整が必要となります。
実際、ほとんどのケースでサブウーファーを壁から離す必要があります。
上の計算結果を利用し
・壁から0m~0.78mの距離に置く
・2.15m以上離す
が選択肢となります。0.78mと2.15mの間に置いてしまうと、明瞭さ、パンチ、タイトなダイナミクスが失われ、さらにいくつかの音が完全に失われることさえあります。また、最終的なサウンドを確認するために、低域周波数再生が全体に渡って変わらないことをチェックする必要があります。
推奨される指向性サブウーファーの設置方法
QSCのKS212Cや2台以上で構成されたKS118は指向性を持っています。搭載したDSPが複雑な処理をおこない、2台のエンクロージャーの後ろでそれぞれのウーファーを互いに作用させると、音波のキャンセルが起こり、同時にエンクロージャーの前では必要な合成が起こります。結果として、放射パターンは理想的な指向性(ハート型)になり、後ろに比べて前の音響エネルギーは15dB高くなります。
指向性サブウーファーと壁の間には最低限の距離が必要となります。KS212CとKS118(最小2台構成)を正しく運用するには、壁から0.5m以内には設置しないようにします。
サブウーファーは多くのライブ公演先やスタジオのPAに使用されています。リスニング環境とパフォーマンスを向上させるために、サブウーファーを会場のステージに置くのがとても重要なポイントになります。また、優れた低音のリスニング体験を提供するために設置する壁との距離は簡単に計算できます。必要に応じて、計算して実際に役立ててください。
多くのAVレンタルまたは固定設備音響システムでは、同じオーディオコンテンツを再生する多数のスピーカーのセットアップを必要とする場合があります。これを実現する最も簡単な方法は、多数のパワードスピーカーをデイジーチェーン接続することです。
QSCパワードスピーカーは、2種類の外部出力を備えています。QSC K.2、KW、およびKLAシリーズは、スルー(パラレル)出力を備えています。入力端子の近くにある出力端子で、矢印で示されています。これらのラインレベル出力から、それぞれ次のパワードスピーカーの入力に配線します。このとき送られる信号は入力されたものと同じ信号であるため、元のスピーカー側で設定されたゲイン調整の影響を受けません。これをプリゲインと呼びます。
注:KLAシリーズには出力が1つあり、単に「ライン出力」とラベル付けされていますが、実際にはプリゲインの「スルー」出力です。
2つ目のタイプとして「ミックス」出力(古いKおよびKWモデルでは「ライン出力/ポストゲイン」)があります。このラインレベル出力は、すべての入力チャンネル(A、B、C)のポストゲインミックスを生成します。3つのチャンネルのいずれかのゲインを調整すると、Mix Out信号は影響を受けますが、DSP処理は行われません。QSC K.2、KWおよびCPシリーズは、このミックス出力を備えています。
妥協のない音質を維持しながら、安全にデイジーチェーン接続できるパワードスピーカーの数をチェックしてみましょう。
■ スルー出力
プリゲイン「スルー」出力を使用して、大量のスピーカーをデイジーチェーン接続できます。最終的に数十ユニットを接続すると、ケーブルの長さに応じて、回線レベルの信号損失が発生します。
注:CPシリーズは「スルー」出力ではなく、「ミックス」出力のみを備えています。
■ ミックス出力
ポストゲインミックス出力では、ゲイン回路を通るために常に小さなノイズが追加され、このノイズはデイジーチェーン接続されたスピーカーを追加するたびに増大します。ミックス出力を使用する場合、デイジーチェーン接続は最大4台までにすることをお勧めします。CPシリーズにはミックス出力しかないため4台までとなります。
■ 使用例
一般的な使用方法として、チェーン内にある最初のスピーカーだけミックス出力を使用する「ミキサー」として、それ以降はスルー出力を使用して、複数スピーカーをデイジーチェーン接続します。この方法はミックス出力を1つだけしか使用していないため、一番安全であり、スルー出力を使用して数十台のユニットをデイジーチェーン接続できます。
KSシリーズ、アクティブ・サブウーファーは全機種に強力なDSPを備えており、クロスオーバー周波数(ローパス)など多くの有効なパラメーターを調整できます。KSサブウーファーを有効に働かせるためには、適切なクロスオーバー周波数を選択し、サブウーファーとフルレンジスピーカーの両方に正しい設定をする必要があります。
したがって、QSCサブウーファーとスピーカーを最大限に活用するには、クロスオーバーを適切に調整することが重要です。
大きな部屋や屋外では、聴衆全体に適切な音を提供するために、メインステージまたはイベント会場から比較的離れた場所に追加のスピーカーを設置する必要がある場合があります。サテライトスピーカー、またはディレイスピーカーとも呼ばれるこれらのスピーカーが、メインステージのスピーカーとのディレイ時間を適切に調整されると、音楽はクリアで、エコーがなく、アナウンスも明瞭になり、パフォーマンスを楽しむことができます。
いくつかの基本的なことから始めましょう。まず、ディレイスピーカーを含むすべてのスピーカーは聴衆に向けて、適切な方向にセットする必要があります。音は344 m /秒(または1128フィート/秒)で移動し、その速度は主に温度により変化し、湿度の上下でもわずかに変化します。 20度(基準温度)では速度は344 m / s、5度では334 m / s、35度では352 m / sです。メインスピーカーの音と、ディレイスピーカーの音が聴衆に到達するまでの時間に差が生じる場合、ディレイスピーカーの音をメインスピーカーの音と一致させる必要があります。
そのためには、遠くに設置したディレイスピーカーの音を遅らせる必要があります。これを達成する方法は? K.2およびKSシリーズでは、搭載されたDSPを使用して、メートル、フィート、またはミリ秒単位でディレイ時間を設定することができます。各ディレイスピーカーを設定する最も簡単な方法は、メインスピーカーとディレイスピーカーとの距離を測定し、ディレイを必要とする各スピーカーに値を入力することです。非常に低い、または高い温度(5度または35度など)で使用する場合は、音速の変化を考慮して調整してください。
By Christopher Anet (2020年12月7日)
ライブに行ったとき、サウンドエンジニアが複数のサブウーファーを近づけて設置しているのを見たことがあると思います。何か理由があるのでしょうか。
音速の定義について思い出してください。音の伝達速度(音速)はC=fλ(f:周波数、λ:波長)で表され、測定条件が海面レベル、21℃、標準大気圧のとき秒速344mとなります。波長とは、周期性のある波において、同じ位相にある波の山、谷、ゼロ間の距離になります。音源から出た振動は空気を圧縮して伝搬します。この空気の疎密波が鼓膜と共振して音として感知します。人が聞くことができる周波数(20Hz~20kHz)の波長はおよそ17メートル~17ミリメートルです。
相互連結現象というのは理論上は大きさに関係なく起こります。ここでは低域のサブウーファーで起こる相互連結現象をみていきます。相互連結現象は2つ以上のサブウーファー・ユニットが同じ信号を生成し、中心軸が近く、同じ方向を向いていて、サブウーファー・ユニットの中心軸の距離より波長が短い場合に起こります。この状態で合成された音は、複数のサブウーファーが1つの大きなサブウーファーとして働き、1つの音波として伝搬します。2つのサブウーファーの場合、中心軸が近く、1/4波長と1/2波長の間にあるとき、相互連結現象は起こります。波長が短い(周波数が高い)ほど、現象が起こる中心軸の距離は短くなります。
左図のように中心軸が1/2波長より離れている場合、相互連結現象は発生しません。右図のように、近い場合に発生します。2台のサブウーファーを1/2波長より離して設置した場合、出力差は3dBです。2台のサブウーファーを近づけて設置すると、出力差は+6dBまで増加します。
この現象を具体化するためにQSC KS118アクティブ・サブウーファーの仕様を見てみましょう。周波数特性(-6dB)は41Hzから98Hzに拡張されています。先に述べたように、まずサブウーファーが生成する最も高い周波数のときの波長(C=fλ))を計算します。
1/2波長@98Hz=1.75m
2台のKS118サブウーファーの中心軸を1.75m以下の距離に設置すると、相互連結現象により出力を+6dBに増やすことができます。
以上からお分かりのように、サブウーファーを使用した相互連結現象の利点を応用するのは比較的簡単です。サブウーファーが生成する最も高い周波数のときの1/2波長より短い距離に2台のサブウーファーを設置するだけです。サブウーファーの数を最小限にして低域における高いSPLを得られる相互連結現象は、ツアー、音楽プロダクション、DJ、音響設備会社などにとって、大きなメリットとなるでしょう。
オーストラリア発
TAGVオフィスにある壁。Keith HaringとJean-Michel Basquiatへの敬意を表した壁絵が描かれていて、人気があります。写真提供p1xels
QSC製品の代理店であるTAGは、QSCのスピーカーにペイントをほどこす「More Than A Black Box」アート・プロジェクトの詳細を発表。
この企画の構想はTAG社が2019年に新しいVictorianオフィスを開いたときに生まれました。TAGVオフィスの広い側壁はアートの展示にも最適で、以前にもオーストラリアのストリートアーティストFintan Mageeの「The Refugee」を含むストリートアートが展示されていました。TAGが入居したとき、壁はNychosによるカンガルーの解剖図が描かれていました。
ストリートアートのエクスパートであるDean Sunshineと写真家p1xels、さらに8名のストリートアーティストの協力により、ある計画が立てられました。それは、National Gallery of Victoriaで開催されたKeith HaringとJean-Michel Basquiatの展示会に合わせて、壁を刷新するというものでした。3週間に渡り行われた作業により、モンゴルのアーティストであるHeescoによる二人の肖像画、Conrad BizjackとCheheheによる背景画、さらにDvate、Sabeth、Phibs、Ling、Dukeの5人によるグラフィティが描かれました。このコラボレーションは、QSCマーケティング・マネージャーNicholas Simonsenに感銘を与え、彼はアーティストと継続して仕事をしたいと考えました。
「壁面のアート創作が開始されたとき、クリエイティブな創作中に音楽を聞けるようにQSCのペアスピーカーを設置しました。壁が素晴らしい色で蘇っていく現実離れした経験にチーム全体が感動していました。最初に思いついたのは、アートと同様に、QSC K.2スピーカーをそのサウンドのように鮮やかに彩ることです。豊富な経験を持ったアーティストがK.2スピーカーをキャンバスとして使うことにより、単なる「黒い箱」以上の存在になります。
CheheheによるQSC K.2スピーカーペインティング。写真提供p1xels
2月の終わりに郊外で行われたCan’t Do Tomorrowアート・フェスティバルにおいて初披露されたスピーカーは、TAGVオフィス壁アートプロジェクトに参加したアーティストCheheheがペイントしました。Simonsen氏「Cheheheのスタイルは理想的で、スピーカーボックスを「アート」で装飾しました。最初のコンセプトでは、スピーカーグリルだけペイントしようと考えていましたが、Chehehe氏はスピーカーキャビネット全体が素早く、鮮やかにキャンバスになることを証明してくれました。」と語っていました。
幅広い層の観衆がWinnebagoのCrossroadsに集い、若者に熱狂を与え、年配の方もクリアで心地良いサウンドを楽しんでいます。
米国イリノイ州Winnebago(2020年7月9日)
イリノイ州WinnebagoではCrossroads Community Churchが、過去数年間、様々な場所を借りて集会を行ってきましたが、自らが所有する教会を建てることになりました。新しい教会では、PAシステムを組み上げる必要があり、ボランティアが牧師と教会で演奏するバンドのために、セットアップを行いました。建物に関する詳細な分析の後、イベント運営会社のWhite Train Entertainment社は、QSCのラインアレイが新しい教会の条件に最適だと判断しました。KLA12を両サイドに4台吊り下げ、KS212C指向性サブウーファーペアをステージ下に設置、さらにK8.2をモニター用に2台、フロント用に2台設置しました。
「収容人数は200名弱、Crossroadsにとってはラインアレイに置き換えるのは大きなチャレンジでした。」White TrainのJeremy Rollefson氏がコメントしています。「システムインテグレーターとして、2010年からQSCを使用してきました。ライブサウンド分野で複数の資格を持ち、ツアーエンジニアとしての経歴もあります。現代の教会では、日曜礼拝以外にも多くのイベントが行われているため、PAシステムは、過酷に使用されています。
KLA12ラインアレイを使用するという決定に至るまで、Rollefson氏は各要素のバランスを特に考慮しました。「礼拝において、重要な要素の1つは美観。吊り下げたラインアレイはポールマウントや積み重ねたスピーカーよりすっきりと見えます。」
「次にカバレージと位相について考えました。天井が低くて反響が大きい空間においてラインアレイは全ての音域とスペース全体をカバーするのに理想的なシステムです。QSC KLA12は、この価格帯で最も正確なレスポンス特性を持っています。5つのボックスで構成されたシステムの場合、垂直方向に90度、水平方向に90度のカバレージを持ち、消費電力も低く、長期的に考えても費用対効果が高いと言えます。
低音に関して言えば、美観を考え、サブウーファーをステージ下に取り付けたかったのです。ステージの下には、高さ50cmくらいの空間があるため、KS212Cが十分収まります。3600Wアンプを搭載、周波数特性は44Hzまでカバーするデュアル12インチウーファーは18インチに匹敵する出力を誇ります。
サブウーファーを選択するとき、出力だけが重要な項目ではありません。教会のホールのような空間では、低域のタイトさと明瞭さが重要な要素となります。コントロールされた低音は耳というより体全体で体感させます。KS212Cは、通常はサブウーファー領域では持ち得ない指向性をツインドライバーによりコントロールして作り出します。音響エネルギーを集中させ、後方の出力を前方の出力と比べて最大15dBまで下げて指向性を作っています。
K8.2は小型でパワーがあり、広いカバレージを持っているので、ステージ下のサブウーファーの間にK.8.2を2台設置しました。
全てが設置され調整され、その結果に大変満足したようです。「私がサウンドエンジニアとして行った最初の礼拝では、予想以上の結果となり、多くの感謝の言葉をいただき、礼拝参加者にとって新しい教会は心温まる場所となりました。幅広い層の観衆がCrossroadsに集い、若者は興奮している様子でしたし、シニア層にも明瞭で心地良いサウンドを届けられました。
システム全体が期待以上であり、その質の高いサウンドに驚きました。教会の礼拝へ最適になるように調整されていますが、他のイベントにも柔軟に対応できます。」Crossroads Community Churchのサウンドエンジニア・リーダーのJeffrey Schleich氏がコメントしています。
「礼拝のリーダーとして、過去15年以上、様々な環境に設置されたいろいろなタイプのサウンドシステムを経験してきました。QSCのシステムは素晴らしく、礼拝のサウンド環境を大きく変えました。部屋全体を満たすサウンドは参加者全体に心地良いリスニングレベルになって届いています。」礼拝ディレクターのMelissa Bushman氏がコメントしています。まず気がついたことは、モニターに気を取られる必要がないということです。従来のシステムでは、音量を補うために大声を出していました。今はバランスが良く、快適、集中できます。最高ですね。」
「White Train Entertainmentが持つQSCとの信頼はすでに確固たるものでした。Crossroads Community Churchでの成功は、最近の一例となりました。何度もツアーを上手くこなしてきたという経験から、QSC製品の品質と耐久性には自信を持っています。」とRollefson氏。「設置されたシステムが優れた性能を発揮する。それは、QSCが守り続けてきた価値によるものです。そして、顧客が満足していれば、私も幸せです。まさにウィンウィンの関係ですね。
聴衆をパワフルで圧倒的な低音に包み込みます。
By Loren Alldrin(2020年2月19日)
スピーカーの歴史を見てみると、ウーファーサイズの主流が20インチ以上になることはなく、バランス、低域レスポンス、コストパフォーマンスにおいて18インチが適切な大きさであることが証明されています。そして、コンパクトなモバイル・サウンドシステムでも、18インチ・サブウーファーが定番となったのです。
QSCから発表されたKS118は、不要な中域、高域をカットするフィルターを使用し、ダイレクト・ラジエーション型18インチ・サブウーファーです。流線形のバスレフを使用して高域をカットするモデル(KS112やKS212C)と比較しても、性能はほぼ同様です。KS118はタイトにコントロールされた周波数レンジ(35Hz-110Hz(-10dB))全体に渡り大きな音響エネルギーを持っています。
前モデルKW118のサイズと形状を踏襲しつつ、KS118は、縦置き、横置き、どちらにも対応します。最大出力は、KW118が2000W、KS118は3600W(最大SPL:136dB)。1台でも十分に迫力のある低音が得られると思いますが、用途によっては2台以上が必要となります。500人規模の会場で行われるコンサートならば、このサブウーファー1ペアで十分でしょう。大型キャビネットに大口径ウーファーが入っていた時代と比較すると大きな進歩です。
多くのアウトボードが担っていた機能は、搭載されたプロセッサーやアンプが代わりに実行します。全ての機能は背面パネルに装備されたパネルからコントロール可能。画面メニューから、クロスオーバー、エクスカーション・プロセッシングモード(DEEP)の選択、ディレイのコントロール、指向性の設定などを行うことができます。プリセットの保存、呼び出しも可能です。メニューは直感的に操作できます。
KS118に搭載されたDEEPモードは、数dBの最大SPLと引き換えに、低域レスポンスを向上させます。最大SPL近辺でサブウーファーを鳴らす機会は少ないため、ほとんど問題にならないでしょう。ちなみに私はDEEPを常にONにしています。これにより低域のレスポンスをさらに向上し、タイトでコントロールされたサウンドを作ることができます。2台のサブウーファーを反対向きに設置して指向性を得るKS118の指向性モードも試してみたかった機能です。これをONにすると、サブウーファー・ペアの背面に放たれる低音は15dBほど減衰します。これにより、ステージの後ろ側に回ったり、室内に拡散する低音を減衰させることができます。実際にテストしてみると、屋外に設置したときは、キャビネットの後ろ側で低音がはっきりと減衰していることを確認できました。屋内では、低音が部屋に十分響いていましたが、指向性を明確に識別できるほどではありませんでした。1度会場でカーディオイドモードを試してみてください。
大型のゴム足がキャビネット2面についていて、縦置き、横置きどちらでも対応できます。背面にキャスター、コントロールパネル、入出力端子があります。
底面にはゴム足がフィットする凹みがあり、キャビネットを安全に積み重ねることが可能です。その大きさと頑丈な構造にしては、驚くほど軽く、移動も簡単。位置合わせのため、片手で持ち上げたこともあります。キャスターがついているため、一人で簡単にスムーズに移動することができます。人間工学的観点から見ると、ハンドルの位置は1人で設置する時、扱いにくいと感じました。スピーカーを倒そうとしたとき、掴みにくいことに気がつきます。ハンドルの配置は、2人で動かすことを前提に決めたのではないかと思います。
3000Wのパワーをウーファー1台に与えるのは負荷がかかりますが、過熱防止と過剰な振動防止のための保護があります。QSCは十分に耐えうると判断し、自信を持って長期保証を設けています。サブウーファーの信頼性というのは、搭載しているウーファーの耐久性にも依存しています。QSCはこの点においても妥協しません。信頼性の高いイタリア製B&Cウーファーを採用しています。
フルレンジスピーカーと比較して、サブウーファーの動作はとても分かりやすいです。音域は狭く、曲の底辺を支える1オクターブか2オクターブの範囲を扱います。この範囲でKS118は素晴らしいサウンドを出力します。小さい音量のときは、豊かで温かみのある音。大音量では、クラブやコンサート会場において、人々を熱狂させるでしょう。
そして聴衆をパワフルで圧倒的な低音に包み込みます。
By Christophe Anet(2020年2月4日)
このブログでは、サブウーファーアレイにより指向性を実現するいくつかの試みについて説明し、なぜQSC指向性サブウーファーが素晴らしい性能を発揮するのかを解き明かしていきます。まず、サブウーファーの定義から始めましょう。サブウーファーは低音(低周波数領域)専用のスピーカーです。メインスピーカーがカバーする領域より低い20Hz~120Hzを扱います。
1950年代中期、複数のスピーカーメーカーが音飛びが良い密閉型ウーファーを作り始めました。サブウーファーが一般的になったのは、1970年代、映画「大地震」に使われたSenSurroundの登場からです。1980年頃から、カセットテープ、CDの登場によりレコードの針飛びから解放され、サブウーファーは広く使用されるようになります。1990年代に入ると、ホームステレオ、カーオーディオ、PAシステムにも採用され、2000年代からは、ナイトクラブやコンサート会場で広く使われるようになりました。
一般的なサブウーファーの音響エネルギー分布は、球状になっています。一般的なサブウーファーから出力される200Hz以下の音響エネルギーは指向性がありません。低域の波長はサブウーファーの本体のサイズより長く、音響エネルギー分布は全方向に広がります。
図に一般的なサブウーファー2台を並べて、出力される音響エネルギー分布を示しています。無指向性であることが分かります。
X軸は周波数、Y軸は指向角度を表しています(0degはセンターです)。信号強度は色分けして表されています(各周波数に対して最大強度のとき0dB)。
1950年代以来、サウンドエンジニアは問題を解決するべく、最小2台構成でサブウーファーアレイを作っていました。ディレイ、位相、出力レベル、スピーカー間の距離を細かく調整し、サブウーファーにも指向性を持たせるように調整しました。
上記の方法で正しい指向性パターンを作るには、音響物理学の法則を理解し、パラメーターを調整しなければなりません。これは多くのサウンドエンジアとプロダクション会社にとって時間がかかる困難な仕事でした。
2台のサブウーファーを使って指向性パターンを実現するには、複数あるパラメーターから1つずつ着目して調整する必要があります。
下図にある、グラフから140Hz(破線)より上の高域ではサブウーファーの指向性が乱れ、機能していないことが分かります。さらに、指向性を生む背面域の減衰は、70Hzでのみ有効であることも分かります(青い領域)。
ディレイ時間を短くした場合、前方向の指向性は改善されています。しかしながら、音のキャンセル効果がコントロールされず、拡散しています。側面の低音は減衰できていますが、真後ろ方向では音が大量に拡散しています。このセットアップでは不完全です。
ディレイを長く設定すると、横方向の減衰には効果が薄く、サブウーファーの比較的高音域は、ほとんど無指向性になっていて、大量の低音が後ろ側に拡散しています。
サブウーファーアレイによる設定の難しさを解決するため、QSCは常に良好な指向性を持つサブウーファーとユーザーが設定しやすいセットアップ方法を開発しました。QSCの高機能DSPを使用して、背面方向にはウーファー2台による理想的なキャンセル効果を生むようにし、同時に、前方向では2台による完全な指向性を実現しています。結果、放射パターンは理想的な指向性を示し、前後の音レベルの差は15dBとなっています。
QSCが提供する指向性サブウーファーは2機種あります。軽量コンパクトなKS212Cは、1台で指向性を実現できるように1800WクラスDアンプと12インチ・ロングエクスカーション・ドライバー(ウーファー)を2台搭載。複数台により指向性を実現するKS118は、3600WクラスDアンプと18インチウーファーを1台搭載。DSPコントロールメニューからサウンドを調整します。
高機能DSPの効果は素晴らしく、適切な設置方法、極性、出力レベル、ディレイが設定され、効果的に指向性を実現しています。このシステムにより、ステージ上に低音を適切な場所に届けます。
実際に設置してテストした結果、サブウーファーアレイでも指向性を作ることは不可能ではないことがわかりました。しかしながら、設置スペース、ディレイ、極性、出力レベルなどのパラメーターを精密に調整できないと、満足な結果は得られません。
QSCは、複雑なセットアップを簡単にし、全てのユーザーが満足するように、いつでも良好な指向性が得られる使いやすい、多くの用途で使用できる製品を開発しました。
Costa Mesa、米国カリフォルニア州 (2019年12月5日)
QSC KS118がMusic and Sound Retailerマガジン主催の第34回ミュージック&サウンドディーラーアワード、2019年ベストスピーカーにノミネートされました。KS118は高出力のアクティブ・サブウーファーで、印象的な低音、高い耐久性を持ち、伝統のQSCアンプとあらゆるシーンで活躍するDSPを搭載、ダイナミックなサウンドと低域を要求されるクラブや演奏会場などで能力を発揮します。
これにより、KS118もK.2シリーズ、CPシリーズ、TouchMix-30 Proなど、過去にミュージック&サウンドディーラーアワードにノミネートや受賞したQSC製品の仲間入りを果たしました。
「KS118がノミネートされたことは、素晴らしいサブウーファーを市場に送り出すために努力を惜しまなかったQSC社員全員の誇りです。私たちの努力が多くのディーラーに認められたことをうれしく思います」。QSC社マーケティング・シニアディレクターであるRay van Straten氏がコメントしています。
Music & Sound Retailer誌は音楽ビジネス関連の雑誌としては最も読者が多く、音響機材業界の動向を反映する雑誌として有名です。過去34年目になるミュージック&サウンドディーラーアワードは、全米のみならず全世界から業者の投票により選ばれる業界で権威ある賞として広く知られています。今年の受賞者は2020年1月に開催されるNAMMショーで発表されます。
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