はじめまして、ワンコフ博士です。 今日はひとつ、音楽留学時代の思い出話をしようと思います。とりとめのない話になりますが、少しだけお付き合いいただければ幸いです。
私は日本の某大学の旧教育学部の音楽科(当時はすでに改組され、教育学部ではなくなっていましたが)から、アメリカの某州立大学の音楽学部に編入する形で、その後18年に及ぶ海外生活をスタートさせました。これは、その1年目のことです。
音楽科からの編入とはいえ、藝大などから来る他の留学生と比べて演奏に自信があるわけではありません。留学に必要な英語の試験はクリアして出発したものの、英会話の経験もほぼゼロ。「カタコトで時々とんでもないことを言う爆弾留学生」としてパーティーなどには誘ってもらえたので、友人は早々にできましたが、様々な不安で心に余裕がない時期でした。
音楽学部の練習棟から道を一本隔てたところに、あるバーがありました(残念ながら2022年に閉店してしまったそうです)。毎週木曜日だったか、そこでジャズのライブが開催されていました。
5ドルほどのミュージックチャージを払ってバックルームに入ると、そこには狭いステージが。新進気鋭の学生ミュージシャンたちが最新のジャズを演ったり、地元で長く活動してきたベテランや音楽学部の教授、さらには引退した元教授たちが正統派のビバップを奏でたりと、毎週バラエティにとんだ演奏が繰り広げられていました。
その日は、5〜6人編成のベテランコンボだったと思います。 スタンダード中心のセットが展開される中、途中でステージに近い席にいた一人の老人が紹介されました。
「そういえば、誰も触っていないテナーサックスがステージに置いてあるな」
そう思っていると、そのご老人はステージに上がるよう促され、車いすでゆっくりとステージに近づいていきました。周りの人の助けを借りて、テナーサックスの後ろに置いてあった椅子のふちに腰掛ける。その間、軽く5分はあったかと思います。
それでも、演奏者たちもお客さんも、みんなニコニコして待っているのです。私はひとり、「えー、大丈夫なのあのおじいちゃん……」とハラハラしていました。
ところが、演奏が始まった瞬間、空気が一変したのです。
彼のテナーサックスは、まさしく自由自在に音を紡ぎ出しました。 高く、低く、吠えるように、ささやくように、甘く、熱く。
その時、客席の誰もが、彼が車いすに乗った老人だということを忘れていたに違いありません。彼は、音楽の中ならば、まさしく「どこへでも自由に行けた」のですから。
その人の名はアル・コバイン。 長年地元に根ざしながら、ヘンリー・マンシーニやジョニー・マティス、エルヴィス・プレスリーといった大スターたちのために編曲を手がけ、時には自身のビッグバンドで彼らをサポートしたレジェンドでした。
ステージの終わりに、バンドのリーダーがアルにマイクを渡しました。それまで、ヴォーカル曲はすべてこのリーダーが器用な物まねを交えながら自分で歌っていましたが、最後の1曲を彼はこう言ってアルに託しました。
「今日ここでこの曲を歌うべきなのは、この人以外にいません」
そうして始まった曲は、ルイ・アームストロングの歌で知られる名曲「What a Wonderful World(この素晴らしき世界)」でした。
帰り道、上気した顔を冷やすために、少しゆっくり歩いて帰りました。 その時、ふと夜空を見上げてみると、それまで見た中でも最高クラスの、満天の星空が広がっていました。
その街では、晴れていれば毎日そんな星空が見られたはずです。それまでの私は、右も左もわからず、空を見上げる余裕すらなかったのだな、とその時初めて気づかされました。
今でも、きれいな星空を見るたびに、あの晩の演奏を思い出します。 アルは今頃、星たちの間を自由に飛び回りながら、同窓の先輩ホーギー・カーマイケルの「スターダスト」でも演奏しているんじゃないかな、と思いながら。
【動画】アル・コバインの名を冠したビッグバンドが、「あの部屋」で演奏する様子はこちら。
音楽を一生の友にするために:おすすめのチェロ
さて、ここからは少し宣伝も兼ねて。 当時ジャズ関連でお世話になったもう一人のレジェンド、デイヴィッド・ベイカー教授という方がいらっしゃいました。
元々はトロンボーン奏者としてジョージ・ラッセル・セクステットなどで活躍されていましたが、事故に遭いトロンボーンを断念。その後、母校に戻って数々の後進を育てながら、同僚のチェロ奏者ヤーノシュ・シュタルケル教授に師事し、チェロ奏者として先述のバーなどで演奏を続けておられました。
どんな困難があっても、形を変えて音楽を愛し、奏で続ける姿には深く感銘を受けたものです。
この超高齢化時代、「一生無理なく付き合える相棒」という意味では、弦楽器は素晴らしい選択肢になります。そこで今回は、私のおすすめのチェロを2モデルご紹介します。
1. 単板ボディの豊かな鳴りを身近な価格で
本格的なアコースティックの響きを楽しみたい方に。コストパフォーマンスに優れた一本です。
2. 夜間の練習も気兼ねなく
PLAYTECH / PEC100BR(エレクトリックチェロ)
ご自宅での練習環境が気になる方や、エフェクターを繋げて新しいサウンドに挑戦したい方におすすめです。
今回ご紹介したPlaytechの弦楽器・管楽器は、今年オープンしたばかりの「サウンドハウス管弦楽器ショールーム(成田市)」にて、実際にお手に取ってご覧いただけます。
ぜひ、あなたにとっての「一生の友」となる楽器を探しに来てください。








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